足立正生略歴
◆1939年生まれ。日本大学芸術学部映画学科在学中に自主制作した『鎖陰』で一躍脚光を浴びる。大学中退後、若松孝二の独立プロダクションに加わり、性と革命を主題にした前衛的なピンク映画の脚本を量産する。監督としても1966年に『堕胎』で商業デビュー。1971年にカンヌ映画祭の帰路、故若松孝二監督とパレスチナへ渡り、パレスチナ解放人民戦線のゲリラ隊に加わり共闘しつつ、パレスチナゲリラの日常を描いた『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』を撮影・製作。1974年重信房子率いる日本赤軍に合流、国際指名手配される。1997年にはレバノン・ルミエ刑務所にて逮捕抑留。2000年3月刑期満了、身柄を日本へ強制送還。2007年、赤軍メンバーの岡本公三をモデルに描いた『幽閉者 テロリスト』で35年ぶりにメガホンを取り、日本での創作活動を再会。そして今年、足立正生監督復帰2作目『断食芸人』が公開。第45回ロッテルダム国際映画祭のディープフォーカス部門に正式出品され、同映画祭では、足立監督の特集上映が組まれた。
上映作品
足立正生はいまだかつてないほど、軽やかに、楽しみながら『断食芸人』を撮った。今回シネ・ヌーヴォでは『断食芸人』をもっと深く楽しむための14作品をピックアップ。さあ恐れずに、『断食芸人』の世界へようこそ!
椀 ※『鎖陰』と併映
1961年/25分/16mm/スタンダード/モノクロ
製作・脚本・演出:日大芸術学部新映画研究会
出演:新津左平
♦ある寒村に住む男が土着的な因習から逃れようと反抗を繰り返すも、強固な村落共同体に阻まれ挫折していく様を実験的に描く。60年安保闘争敗北後の閉塞感を象徴する作品として寺山修司に高く評価され、全日本学生映画祭で大賞受賞。
鎖陰 ※『椀』と併映
1963年/56分/35mm/スタンダード/モノクロ
製作・脚本・演出:日大芸術学部新映画研究会、鎖陰製作委員会/音楽:一柳慧
出演:竹田ひろし、木村京子、村岡久美子
◆「夢魔のような心理状況を残酷とエロティシズムの断片的なイメージで点綴し、しかもそこに奇妙なノスタルジックな抒情性を生んでいる」と65年秋の『鎖陰』初公開時に渋澤龍彦氏がオマージュを寄せた伝説の‘60年代フィルム。
銀河系
1967年/75分/DCP/スタンダード/カラー
製作・脚本・監督:足立正生/撮影:大須賀武/美術:竹口義之/音楽:刀根康尚/助監督:沖島勲/出演:花上晃、竹邑類、真野三種、南裕輔
◆自分がもう一人の自分を繰り返し殺すという「メビウスの輪」的構成によって、自我観念の因果律を解明しようとした野心作。伝説の「蠍座」のオープニングを飾り、足立は紅テントの唐十郎と共にアングラ界の二大寵児となる。
絞死刑
1968年/119分/35mm/ビスタ/モノクロ
監督:大島渚/脚本:田村孟、佐々木守、深尾道典、大島渚/撮影:吉岡康弘/音楽:林光/美術:戸田重昌、金子国義/編集:浦岡敬一
出演:佐藤慶、石堂淑朗、小山明子、渡辺文雄、小松方正
◆ATG初の“1000万映画”。死刑執行のドタバタを通じて、死刑制度、在日韓国人問題を追求した作品。大島渚の代表作の1本。足立は保安課長役として創造社に初参加。
性遊戯
1969年/73分/16mm/シネスコ/パートカラー
監督:足立正生/製作:若松プロ/企画・制作:若松孝二/脚本:出口出(足立正生)/撮影:伊東英
出演:芦川絵理、花村亜流季、万屋真理
卒業式を粉砕するため卒業証書と学籍簿を盗み出した高校生五人組は、自衛隊の武器を奪って山に立てこもる…。闘争方針を巡る内部対立、ゲリラ戦の展開など、全共闘運動が武装闘争へと至る過程が暗示。彼らがめざすカクメイとは?
女学生ゲリラ
1963年/56分/35mm/スタンダード/モノクロ
製作・脚本・演出:日大芸術学部新映画研究会、鎖陰製作委員会/音楽:一柳慧
出演:竹田ひろし、木村京子、村岡久美子
◆「夢魔のような心理状況を残酷とエロティシズムの断片的なイメージで点綴し、しかもそこに奇妙なノスタルジックな抒情性を生んでいる」と65年秋の『鎖陰』初公開時に渋澤龍彦氏がオマージュを寄せた伝説の‘60年代フィルム。
噴出祈願/15才の売春婦
1970年/72分/35mm/シネスコ/パートカラー
監督:足立正生/企画・製作:朝倉大介/脚本:出口出(足立正生、荒井晴彦)/撮影:伊東英男
出演、佐々木天、斉藤ひろし、マキコ・キム
◆高校生4人の男女の無為な青春。死んだ若者の遺書を読み上げていくという構成の本作は、学生運動退潮期の空気と呼応するように物悲しい雰囲気に満ちている。足立がパレスチナに越境する以前に撮られた最後の劇映画。
赤軍 PFLP・世界戦争宣言
1971年/71分/16mm or デジタル/スタンダード/カラー
監督:足立正生、若松孝二/製作:若松プロ/共同編集:赤軍(共産主義者同盟赤軍派)、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)/日本語版音声:戸浦六宏、中島葵、重信房子、松田政男、足立正生
♦ベイルートへ向かった若松と足立が、PFLPと赤軍の協力のもとパレスチナゲリラの「日常」を写したドキュメンタリー。赤バス上映隊で日本各地を巡り上映。その後、自らをパレスチナ革命に投じるため足立は日本を旅立つ。
上映素材のお知らせ
16mmでの上映 3/19(土)17:30、3/21(月)16:15、3/24(木)16:15
デジタル上映 3/23(水)18:05、3/26(土)17:00
幽閉者 テロリスト
2007年/113分/DV-cam/ビスタ/カラー
監督・脚本:足立正生/プロデューサー:小野沢稔彦、越川道夫/撮影:長田勇市/音楽・演奏:大友良英
出演:田口トモロヲ、PANTA、大久保鷹
◆空港への自爆テロでMの手榴弾は不発し、一人だけ生き残る。Mはテロリストとして独房に収容されるが…。1972年、イスラエルのテルアビブ空港銃乱射事件を題材に主犯である岡崎公三をモデルに、35年ぶりに描いた問題作。
パレスチナ1948NAKBA
2008年/131分/DV-cam/スタンダード/カラー
監督•撮影•写真:広河隆一/プロデューサー・構成・編集:安岡卓治/編集:辻井潔/音楽:飯利友季子
◆40年に渡ってパレスチナを追い続けるフォトジャーナリスト、広河隆一がこれまで撮りためてきた写真・映像を用いて、 “パレスチナ難民大量発生の実像“を描いたドキュメンタリー。故郷を失い、難民として暮らさざるを得ない人々の悲しみと痛みが、入念に取材と調査によって浮かび上がる重厚な作品。
沖縄エロス外伝 モトシンカカランヌー
1971年/87分/DV-cam
製作:NDU
[最終部分及び音声の一部欠落]
◆1969年、Okinawaはいまだ日本でなく、日本から密航したNDUはコザの黒人歓楽街へと深く潜行。モトシンカカランヌー(元手のいらない商売をする者)と戯れ、ストリップからAサインバーへ、ヤクザのたまり場、時には全軍労のストライキでUSマリーンに激突する。
太平洋戦争草稿
1974年/61分/DV-cam
制作:小野沢稔彦、小柳津幸介、布川徹郎、菅孝行、斎藤晴彦、佐藤信、平岡正明
♦スペイン、ドイツ、日本の植民地からアメリカ統治に移行したマイクロネシア。朝鮮から徴用で来た人など太平洋戦争の生き残りを追い、侵略の近代史を問う。
bastard on the border 幻の混民族共和国
1976年/74分/DV-cam
監督:布川徹郎 製作:布川プロダクション
◆メキシコ国境からロサンゼルスへ入ると、そこは建国200年祭を祝うアメリカ。街頭で黒人のイスラム教徒とキリスト教徒の対立する凍てついた現場だった。薄汚れた混民族のスラム街、ベトナム復員兵の精神病棟、日系移民の強制収容所。アメリカは今も昔も叛国家の歴史をいきえていない。
どんてん生活
1999年/90分/16mm/スタンダード/カラー ※16mmプリントでの上映に変更となりました
監督・脚本・編集:山下敦弘/脚本:向井康介/撮影:近藤龍人/照明:向井康介/編集:向井康介、前田隼人、近藤龍人音楽:赤犬
出演:山本浩司、宇田鉄平、康季丹、前田博通、今枝真紀、柴田剛、神田新、加茂浩志、鳴海なお、井上淳
◆ぼんやりした日々を過ごす青年2人の情けなくも卑屈じゃない日常を描いた青春コメディー。『天然コケッコー』『味園ユニバース』の山下敦弘監督の卒業制作にして出世作。
断食芸人
2015年/104分/日本
監督・脚本:足立正生/原作:フランツ・カフカ/撮影:山崎裕/照明:山本浩資/美術:黒川通利/音楽: 大友良英
出演: 山本浩司、桜井大造、流山児祥、本多章一、伊藤弘子、愛奏、岩間天嗣、井端珠里、安部田宇観、和田周、川本三吉、吉増剛造、田口トモロヲ
◆さまざまな解釈を可能とするカフカの著作「断食芸人」を1960年代に“アングラの旗手”として知られ、後にパレスチナ革命に身を投じた伝説的映画監督・足立正生が原作から1世紀の時を経て映像化!『幽閉者 テロリスト』(07)以来の約10年ぶりの監督作品となる。
残酷で不条理な国で見世物にされる一人の男。人々は勝手に「断食芸人」を創りあげ、過熱してゆく。やがてその男の周りはグロテスクに膨張して不穏で禍々しい異様な世界へと姿を変えていく。そこは観る者の姿を映し出す小惑星。もう傍観者ではいられない!断食芸人は天使か?悪魔か?いったい何者なのか!?混沌とした異空間をエモーショナルに描き出すレジェンドのワールドが炸裂した大傑作!!
舞台挨拶、トークショー開催!!
3/19(土)14:05『断食芸人』上映後 ゲスト:足立正生監督、川本三吉さん(出演)
3/19(土)17:30『赤軍-PFLP 世界戦争宣言』上映後 ゲスト:足立正生監督、佐藤零郎監督(月夜釜合戦)
入場料金
前売券
前売1回券1,200円/前売3回券3,000円 ※『断食芸人』にはご使用いただけません。
※前売券は、劇場窓口、チケットぴあ、セブンイレブン、サークルKサンクス(以上Pコード:466-633)他にて好評発売中!
当日券
『断食芸人』一般1,700円、学生1,400円、シニア1,100円、会員1,000円
『断食芸人』以外の作品
一般1,400円/学生1,200円/シニア1,100円/会員1,000円/高校生以下800円
当日3回券3,600円/シニア3回券3,000円/会員3回券2,700円 ※『断食芸人』にはご使用いただけません。
※連日朝より当日分の整理番号つき入場券の販売を開始します。
ご入場は各回10〜15分前より整理番号順となりますので、前売券なども受付にて入場券とお引き換えください。
スケジュール
上映開始時間変更のお知らせ
『赤軍PFLP-世界戦争宣言』
3/19(土) ×19:50→○17:45
3/26(土) ×17:00→○17:20
『断食芸人』
3/22(火) ×19:50→20:05
3/24(木) ×19:30→19:45
上記の通り上映開始時間を変更させていただきます。
申し訳ございませんが予めご了承いただきますようお願い致します。