【チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ】

チェコスロヴァキアでは1950年代の政治的な抑圧が1960年代に入ってやわらぎ、自由化の大きな波が訪れます。この時代、新世代の監督が多数輩出され、彼らは相互に協力し合うことで豊かな創作環境を築きあげ、その作品は国際的に高く評価されました。この「黄金の60年代」に生まれた映画たちが、チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグです。1968年の「プラハの春」が自由を求める民主化運動の最大の盛り上がりでしたが、同年、ソ連の介入・市街地への戦車の侵攻という軍事的な圧力によって「プラハの春」は押し潰され、ヤン・ニェメツ監督はソ連侵攻の様子をカメラに収めた映像を国外に持ち出し、「チェコ事件」を世界に知らしめます。本映画祭では、政府に批判的な作品と判断されてニェメツ監督が逮捕され国内での上映が禁止された『パーティーと招待客』、日本初公開となる『愛の殉教者たち』、そして「プラハの春」の象徴ともいうべきヒティロヴァー監督の『ひなぎく』を上映。チェコスロヴァキアのヌーヴェルヴァーグが1960年代を通じて体制に対しどのように抵抗したか、また1968年を境にどのように変化したかをご紹介いたします。

パーティーと招待客

1966年/70分/モノクロ
監督:ヤン・ニェメツ/原案・脚本・美術・衣装:エステル・クルンバホヴァー/配給:チェスキー・ケー

ピクニックにやってきた7人の男女が野外パーティーに招待される。主人は養子を迎え、若いカップルの結婚式と、自分の誕生日を同時に祝う。養子となる男は理不尽な要求をし、それに逆らって暴力を受ける者、加担する者、無言で逆らう者、同化していく者など、夫婦や友人の間に亀裂が生まれ、全体主義の不条理が描かれる。

 

ひなぎく

1966年/75分/カラー
監督:ヴェラ・ヒティロヴァー/原案:パヴェル・ユラーチェク/脚本・美術・衣装:エステル・クルンバホヴァー/配給:チェスキー・ケー

マリエ1とマリエ2は、姉妹と偽り、男たちを騙しては食事をおごらせ、嘘泣きの後、笑いながら逃げ出す。「可愛さ」はあらゆる自由の免罪符になるのか? 1989年までの社会主義時代、すべての映画が国家予算で作られていたため、国会で予算の無駄遣いと批難されるが、国民からも国外からも強い支持を受けた。ヌーヴェルヴァーグの金字塔。

 

愛の殉教者たち

1966年/73分/モノクロ

 

監督:ヤン・ニェメツ/原案・脚本・作詞・美術・衣装:エステル・クルンバホヴァー/音楽:カレル・マレシュ、ヤン・クルサーク/出演:マルタ・クビショヴァー、カレル・ゴット/配給:チェスキー・ケー

デビュー作『夜のダイヤモンド』同様、台詞を極力排除し、全編音楽と効果音と移動し続ける活動的な映像で三つの愛の物語を描く。脚本のクルンバホヴァーは、音楽・俳優のクルサーク同様『パーティーと招待客』『ひなぎく』『闇のバイブル』にも参加。チェコの国民的歌手マルタ・クビショヴァーや、『ひなぎく』の二人のマリエもワンシーン出演している。


 

<鑑賞料金>
一般1500円、学生1200円、シニア1100円、会員・高以下1000円