第4回映画批評月間  ~フランス映画の現在をめぐって~

フランスの映画媒体、批評家、専門家、プログラマーと協力し、最新のフランス映画を選りすぐり、ご紹介する「映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~」。第4回目は、フランスの人気カルチャー・マガジン雑誌「レザンロキュプティーブル」の編集長ジャン=マルク・ラランヌ氏によるセレクションをお届けします。

【ジャン=マルク・ラランヌ氏が選ぶ2020年-2022年ベスト】
ジャン=マルク・ラランヌ Jean-Marc Lalanne
1967年生まれ。90年代半ばから「カイエ・デュ・シネマ」で批評活動を行い、日刊紙「リベラシオン」の文化欄チーフ務めた後、2001年にふたたび「カイエ・デュ・シネマ」に戻り、編集長を務める。2003年 から人気カルチャー雑誌「レ・ザンロキュプティーブル(通称:レザンロック)」の編集長を務めている。フランス国営ラジオ放送フランス・キュルチュールの人気映画討論番組「マスク・エ・ラ・プリューム」をはじめとしてラジオ番組に出演したり、シネマテーク・フランセーズで講演を行うなど、書く、語る、その両方でフランスの映画批評を牽引し続けている。主な著書:『コクトーと映画、無秩序』(共著、2006年)、『ガス・ヴァン・サント』(共著、2009年)など、すべてカイエ・デュ・シネマ出版社

上映作品

セヴェンヌ山脈のアントワネット

セヴェンヌ山脈のアントワネット2020年/98分/カラー/フランス
監督:キャロリーヌ・ヴィニャル/出演:ロール・カラミー、バンジャマン・ラヴェルネ

◆アントワネットは恋人のウラジミールとのロマンチックなヴァカンスを楽しみにしていたが、彼は妻子とセヴェンヌ山脈へ。アントワネットもセヴェンヌへ向かう。珍道中に同行することになるのは不機嫌なロバのパトリックだった。主演はコミカルかつ繊細な感情の機微を表現する人気女優ロール・カラミー(『女っ気なし』など)、セザール賞最優秀女優賞を受賞。「非常に成功しているコメディであり、女性によるあらたなる西部劇といえるだろう」

 

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マンディビュル 2人の男と巨大なハエ

マンディビュル 2人の男と巨大なハエ2020年/77分/カラー/フランス
監督:カンタン・デュピュー/出演:ダヴィ・マルセ、グレゴワール・ルディック、 アデル・エグザルコプロス

◆おまぬけコンビ、ジャン=ガブとマヌは、車のトランクの中に巨大なハエを見つける。ふたりは金儲けのためにハエを調教しようとするが、そこにセシルという女性が通りかかり......。ブニュエルや70年代のフランス犯罪映画など、様々なジャンルを取り入れ、笑いの中にシュールで不気味な世界の相貌をのぞかせる鬼才デビューによるファンタジック・コメディ。ヴェネツィア国際映画祭正式出品作品。「夏の風のように軽やかで恩恵をもたらしてくれる『マンディブル』は、率直さを賛美する幸福に満ちたヴァカンスの物語である」

 

 

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恋するアナイス

雄呂血2021年/98分/カラー/フランス
監督:シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ/出演:アナイス・ドゥムースティエ、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ、ドゥニ・ポダリデス


◆アナイスは30歳。文学を研究してきたが、いまだ生活は安定せず、恋人への気持ちも揺らいでいる。ダニエルという年配の男性に出会い、つき合い始めるが、ダニエルの伴侶であるエミリーに魅了されていく。第74回カンヌ国際映画祭批評家週間で注目を集めた C・ブルジョワ=タケの長編デビュー作。いまやフランス映画になくてはならない存在である主演のアナイス・ ドゥムースティエがすばらしい。「愛が科学であるならば、才能溢れるシャルリーヌ・ブルジョワ=タケは、知的な愛についての学びの映画を、不純で喜びあふれる方法で揺り動かし、再生させる独自の方式を完成させている」

 

 

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フランス

フランス2021年/134分/カラー/フランス=ドイツ=イタリア=ベルギー
監督:ブリュノ・デュモン/出演:レア・セドゥ、バンジャマン・ビオレ、ユリアーネ・ケーラー

◆スター・ニュースキャスターのフランスはある事件をきっかけに、世界の「不幸」に目を向けようとするのだが...。ブリュノ・デュモン最新作、第74回カンヌ国際映画祭コンペ部門出 品。一人の女性の肖像であると同時に、フランスという国、メディアというシステムの肖像。「普段はプロの俳優を使うことを警戒しているデュモンが、不実なる女・フランスに、自分が 何者であるかを十分に自覚している女優レア・セドゥを選んだのは偶然ではないだろう。外見と内面の葛藤、壮大なスペクタクルを、登場人物と女優が共に観察している(...)フェイクニ ュースが溢れる現実にいつしか亀裂が入り始める」

 

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そんなの気にしない

そんなの気にしない2022年/115分/カラー/フランス=ベルギー
監督:エマニュエル・マール&ジュリー・ルクストル/出演:アデル・エグザルコプロス、アレクサンドル・ペリエ、マーラ・タキン

◆格安航空会社の客室乗務員のカサンドラは、マッチングアプリ「ティンダー」のニックネーム「カルペディエム(その日を掴め)」に忠実に、フライトからフライトへ、パーティからパーティへ、しがらみのない毎日を生きている。しかし、会社のプレッシャーは厳しさを増し、カサンドラはしだいに自分を見失っていく......。『マンデュブル』に続き、アデル・エグザルコプロス(『アデル、ブルーな熱い色』)が素晴らしい演技を見せている。第75回カンヌ国際映画祭批評家週間出品。「ジュリー・ルクストルとエマニュエル・マールは、即興と綿密な再現を織り交ぜた演出で、ジェネレーションYの感動的な物語を描き出すことに成功している」


 

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愛と激しさをもって

愛と激しさをもって2022年/116分/カラー/フランス
監督:クレール・ドゥニ/出演:ジュリエット・ビノッシュ、ヴァンサン・ランドン、グレゴワール・コラン、マティ・ディオップ、ビュル・オジエ

◆10 年近く共に暮らすサラとジャンは情熱的に愛し合っている。ある朝、サラはかつての恋人フランソワと再会する。フランソワが親友のジャンにサラを紹介し、サラはジャンのためにフランソワに別れを告げたのだ...。第72回ベルリン映画祭最優秀監督賞受賞。「演出面で本当に素晴らしい映画だ。驚くべきファーストショット、スチュアート・A・ステイプルズのギター、海の残響、シンプルな会話シーンに不協和音のように差し挟まれるカット、何度も唱えられる言葉...すべてが、脅威にさらされた愛の物語に驚くべき表現力を与えている。そしてなにより、役者たちの力が最大限に発揮されている」

 

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ドン・ジュアン

ドン・ジュアン2022年/100分/カラー/フランス
監督:セルジュ・ボゾン/出演:ヴィルジニー・エフィラ、タハール・ラヒム


◆2022 年、ドン・ジュアンはもはやすべての女性を誘惑する男ではなく、自分を捨てた一人の女性に執着する男になっていた..。『ダゲレオタイプの女』のタハール・ライムが、『めまい』 のスコッティのように愛する女性のイメージに取り憑かれた男を演じるミュージカル。第 75 回カンヌ国際映画祭プレミア部門出品。「セルジュ・ボゾンは、彼の映画のいつもの奇抜さを軽減させ、それを細かい振り付けの身ぶりの中へと封じ込める。哀調を帯びたダンスが全編に映し出され、愛を告白し合う歌声が美しさを醸し出している」

 

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【デルフィーヌ・セイリグ特集】

アラン・レネのミューズ、60年代の演劇界の女王であり、トリュフォーやドゥミからも賛美されたデルフィーヌ・セイリグ(1932―1990)はその名声の絶頂期であった70年代にフェミニズムの闘いに身を投じ、新しい形式やヴィジョン、テーマを歓迎する女性監督たちと主に仕事していきます。当時25歳のシャンタル・アケルマンと傑作『ジャンヌ・ディエルマン』を生み出し、マルグリット・デュラスからは「フランスで、いやおそらく世界で最も偉大な女優」と評されました。自分のイメージを壊すことを恐れず、変化し続けていった自由な女性デルフィーヌ・セイリグのフィルモグラフィーを辿ります。

去年マリエンバートで

去年マリエンバートで1961年/94分/モノクロ/フランス=イタリア
監督:アラン・レネ/出演:ジョルジョ・アルベルタッツィ、サッシャ・ピトエフ

◆バロック調の宮殿のようなホテル、男はひとりの女に、去年マリエンバートで出会い、愛し合ったと語りかける。1959年ニューヨークで舞台に立っていたセイリグに魅了されたレネは当初、ジャン・レイ原作の『怪盗クモ団』を映画化し、セイリグに犯罪組織〈クモ団〉の首領の役を検討。予算の問題などから企画が変更し、アラン・ロブ=グリエによる脚本、ココ・シャネルの衣装で映画史に残る本作、忘れがたいヒロインが誕生。第22回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞し大成功を収めた本作によってセイリグは国際的な名声を得た。

 

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ミュリエル

ミュリエル1963年/118分/カラー/フランス
監督:アラン・レネ/出演:ジャン=バティスト・チェーレ、ジャン=ピエール・ケリアン、ニタ・クライン

◆1962 年 9 月 アルジェリア戦争から帰還した義理の息子と暮らす古美術商のエレーヌのもとに、かつての恋人アルフォンスが姪と称する若い女と訪ねてくる。再びレネと組んだ本作で、セリングは一転、初老の女性に挑んだ。「『ミュリエル』には10、20 の主題がある。レネや(原作者の)ジャン・ケイヨールさえ考えもしなかったテーマさえ存在している。それが偉大な映画の力である」(アンリ・ラングロワ)

 

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インディア・ソング

インディア・ソング1974年/120分/カラー/フランス
監督:マルグリット・デュラス/出演:ミシェル・ロンダール、マチュー・カリエール、クロード・マン

◆1930年代のインド・カルカッタ。フランス大使夫人アンヌ=マリー・ストレッテルへの不可能な愛で狂気に陥る副領事の物語。全編においてオフの声を活用し、映像と音響の関係の新たな境地を開いたデュラスの映画における代表作。セイリグの女優としての才能を高く評価し、映画、舞台で共に仕事をし続けたデュラスは、「彼女の自由を妨げるものは、他者に加えられた不正だけだ」と述べ、その人間性にも敬意を払っていた。

 

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《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって

《ジャンヌ・ディエルマン》をめぐって1975年/78分/モノクロ/フランス
監督:サミー・フレー
出演:シャンタル・アケルマン

◆『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地ジャンヌ・ディエルマン』の撮影中に、セイリグの恋人であったサミー・フレイが撮影し、シャンタル・アケルマンが編集したドキュメンタリー。セイリグとアケルマンがどのように「ジャンヌ・ディエルマン」を 創っていったか、演出上の細かいやり取りや、撮影中のインタビューや若いスタッフたちとの会話からセイリグの女性としての生き方や仕事に臨む姿勢が伝わってくる貴重な作品。

 

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デルフィーヌとキャロル

デルフィーヌとキャロル2019 年/68分/モノクロ/フランス=スイス
監督:カリスト・マクナルティー/出演:キャロル・ロッソプロス、 マルグリット・デュラス、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、シャンタル・アケルマン

◆セイリグと、フランスで2台目(1台目を手に入れたのはジャン=リュック・ゴダール)のビデオカメラを手に入れ、やがてフランスにおけるビデオアートのパイオニア的存在となったキャロル・ロッソプロスの出会いを描く。二人は協同し、1970 年代のフェミニズム運動の只中にビデオカメラを手に飛び込んでいく。その活動は世界の支配的な常識を揺るがす、非妥協的、不遜で過激なユーモアに溢れるものだった。

 

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イベント

10/16(日)18:30「インディア・ソング」上映後
ゲスト:ジャン=マルク・ラランヌさん(「レザンロキュプティーブル」編集長)によるレクチャー有り(通訳付き)

入場料金

当日券

一般1,500円/シニア1,200円/学生、会員、クラブ・フランス会員1,100円/高校生以下1,000円 各種割引あり
※回数券・招待券使用不可

※ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券は受付窓口 で指定席をお選びの上ご購入ください。開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
前売券なども受付にて座席指定券とお引き換え下さい。1週間前よりオンライン&窓口でご購入いただけます(ただし、前売券は窓口のみ。)
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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