フィルム・ノワール映画祭2024






フィルム・ノワール映画祭2024

大人気フィルム・ノワール映画祭2024では選りすぐりの10作品を上映!フレンチ・ノワールをご堪能ください。

アメリカの犯罪映画にある種の傾向を見出して「フィルム・ノワール」と命名したのはフランス人だった 。アメリカの犯罪小説を「セリ・ノワール」として連続出版したのもフランス人だった。文化の逆輸入、海外で評価されることで自国の文化の独自性を知るのはよくあることだが、アメリカの犯罪小説、犯罪映画を見出したのはフランス人だったのである。フランスでもフィルム・ノワールは作られることになるが、それを担ったのはアメリカかぶれの二人の映画作家だった。ジャック・ベッケルとジャン=ピエール・メルヴィルである。アメリカ映画に学んだ簡潔な話法で語られる、固い友情で結ばれた侠気溢れる男たちの犯罪と、その苦い結末。ベッケルの遺作『穴』、メルヴィルの初期と後期を代表する『賭博師ボブ』、『仁義』にはその真髄が見られる。
一方フランス映画特有の、人間心理に対する深い洞察もフレンチ・ノワールに流れ込む。その流れを代表するのはジャン・ルノワールであり(ベッケルはルノワールの助監督だった)、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーだが、その流れは今回の上映作ではイヴ・アレグレ『乗馬練習場』に見ることができる。人間の暗黒面をこれでもかと見せつける、まさにフレンチ・ノワールというべき作品だ。
アメリカ映画との直接の関係を示すのが、シオドマク『罠』であり、アメリカのチャールズ・ブロンソンがフランスで撮った三作。フィルム・ノワールは、ナチスを逃れてアメリカに渡ったドイツ人監督たち、ナチスという政治的暗黒を目撃した彼らが一翼を担うことになるが、その一人シオドマクは、一時身を寄せたフランスでノワールを撮っていた。シュヴァリエがフランスで撮った三本は、フランス的なムードの中のブロンソンを堪能できる。
もう一人のフレンチ・ノワールの立役者がジョゼ・ジョヴァンニだ。犯罪者にして小説家、映画監督。ベッケルの『穴』は彼の脚本第一作、『生き残った者の掟』、『ベラクルスの男』は彼の監督第一作、第二作。男たちの友情、冒険、犯罪。フォヴァンニがフレンチ・ノワールに果たした役割は大きい。
ベッケルとメルヴィルはヌーヴェル・ヴァーグの兄貴分と言える存在であり、とりわけメルヴィルはゴダール『勝手にしやがれ』ににカメオ出演している。『勝手にしやがれ』、同じくゴダール『はなればなれに』、トリュフォー『ピアニストを撃て』はヌーヴェル・ヴァーグ流フレンチ・ノワールと言えるだろう。戦中から五十年代、六十年代へと続くフランス流ノワールを展望できる映画群である。

上映作品

雨の訪問者

雨の訪問者1970年/119分/カラー/BD
◎監督:ルネ・クレマン◎原案・脚本:セバスチャン・ジャプリゾ
◎出演:チャールズ・ブロンソン、マルレーヌ・ジョベール

◆雨が降り続く季節外れの避暑地、バスから降りた赤いバッグを持つ男、窓を通して男を眺める女。その女のもとに、夜その男がやってくる。乱暴された女は男を撃ち殺し、崖から捨てるが、翌朝、彼女のもとにある男がやってきて全てを知っているという。男は誰なのか、殺された男は誰だったのか。女の名はメランコリー、女の記憶の映像が突然差し挟まれたり、南仏の家庭からパリの娼館に場面が移り変わったり、物語は錯綜するが、クレマンの情感溢れる映像美、フランシス・レイの華麗な音楽によってメランコリックな雰囲気たっぷり。

 

このページのトップへ


さらば友よ

 さらば友よ1968年/115分/カラー/BD
◎監督・脚本:ジャン・エルマン◎原作・脚本:セバスチャン・ジャプリゾ
◎出演:チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン

 

◆アルジェリア帰りの二人の兵士、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソン。ドロンは自分が死なせた友のために、金庫破りをすることに。いっちょ噛みさせろとブロンソンが勝手に参加、凸凹コンビがクリスマスの深夜に、何万通りもある金庫の番号組み合わせをひたすら試しつくす。ようやく開いたと思ったら金庫はカラ、これはどういうことなのか。サスペンス、ノワールというよりはコメディ色の方が強い気がするが、警察に追われることになった二人が互いに相手を庇おうと知らぬふりをする男気が泣ける。知らぬ同士を装う二人の別れの挨拶に痺れる。

このページのトップへ

 

 

太陽の下の10万ドル

太陽の下の10万ドル1965年/125分/モノクロ/BD
◎監督・脚本:アンリ・ヴェルヌイユ◎脚本:マルセル・ジュリアン
◎出演:ジャン=ポール・ベルモンド、リノ・ヴァンチュラ

 

◆何か訳ありげな荷物を新品のトラックに積み、しかも新入りの運転手に運ばせる。いつもと違う業務に不審を持つ運転手たち。翌朝、そのトラックを勝手に運転して行った男を、社長が追わせる。明らかに荷物は金目のものだ。追う側もあわよくば自分が、と色めき立つ。舞台は北アフリカ、砂漠と山並みがシネスコ画面に広がり、壮大。いつ転落してもおかしくない崖でのトラック同士のチェイスがこの映画の見どころだ。軽薄そうなベルモンドと、いつも苦虫を噛み潰したようなヴァンチュラの対照性に、不穏なドイツ人やファム・ファタルが絡む。

このページのトップへ

 

 

夜の訪問者

夜の訪問者1970年/94分/カラー/BD
◎監督:テレンス・ヤング◎脚本:シモン・ウィンセルベルグ、アルベール・シモナン
原作:リチャード・マシスン
◎出演:チャールズ・ブロンソン、リヴ・ウルマン、ジェームズ・メイソン

 

◆『雨の訪問者』と並び、チャールズ・ブロンソンが1970年にヨーロッパで撮った四本の一本。イギリス人のテレンス・ヤングが監督、アメリカ人のブロンソン、スウェーデンのベルイマン監督作で知られるリヴ・ウルマンが主演、シャブロル作品で知られるジャン・ラビエがカメラという国際的映画。観光客用漁船の船長が脅されて悪事に加担させられるホークス『脱出』に似た話だが、ブロンソンなので当然反撃、そのアクションが見もの。

このページのトップへ

 

 

穴1960年/132分/モノクロ/BD
◎監督・脚本:ジャック・ベッケル◎原作・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ
◎出演:ミシェル・コンスタンタン、ジャン・ケロディ、フィリップ・ルロワ

◆ハワード・ホークスに私淑し、ジャン・ルノワールの助監督を務めたジャック・ベッケルは、彼ら二人と同様、ノワールに優れた技量を発揮した。『現金に手を出すな』はフレンチ・ノワールを代表する傑作。本作はベッケルの遺作で、ジョゼ・ジョヴァンニの小説の最初の映画化作品となる。サンテ刑務所からの脱走劇。タイトル通りコンクリートの床や壁に「穴」をあける作業の描写、その透徹したカメラ、物理音の処理、淡々とした編集には映画的アクションがみなぎっている。タイトルの「穴」はこっちのことだったかと、見方が180度変わるラストの衝撃。

 

このページのトップへ


ベラクルスの男

ベラクルスの男1968年/110分/カラー/BD
◎監督・脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ◎原作:ジョン・カリック
◎出演:リノ・ヴァンチュラ

 

◆イギリスのジョン・カリックのベストセラー「禿タカ」を映画化したジョヴァンニ・ノワール第二作。1938年、独裁政治打倒のため反政府リーダーに雇われて中南米ベラクルスに降り立ったフランスの殺し屋“禿タカ”。クーデター当日彼は独裁者大統領を一発の銃弾で倒し、暗殺に成功するが事情を知りすぎたため、禿タカは依頼主から狙われる羽目になる…。フイルム・ノワールの雄リノ・ヴァンチュラの圧倒的な存在感が全編に漂う傑作アクション・ノワール。

このページのトップへ

 

 

乗馬練習場

乗馬練習場1950年/91分/モノクロ/BD
◎監督:イヴ・アレグレ◎脚本:ジャック・シギュール
◎出演:ベルナール・ブリエ、シモーヌ・シニョレ、ジャーヌ・マルカン

 

◆愛する妻が事故で瀕死の重傷、枕辺で彼女との思い出に浸る夫に、妻の母が語る彼女の真の姿は驚くべきものだった。二つ目のフラッシュバックで全てがひっくり返る。『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に人物関係は似るが、それよりはるかに強烈。アレグレは『デデという娼婦』、『美しき小さな浜辺』、本作と同じ脚本家、シニョレ主演による「黒い三部作」で、人間の心の闇をえぐり出すフレンチ・ノワールの系列(代表がクルーゾー)の一翼を担った。

このページのトップへ

 

 

罠1939年/107分/モノクロ/BD
◎監督:ロバート・シオドマク◎脚本:ジャック・コンパネーズ、エルンスト・ノイバッハ
◎出演:モーリス・シュヴァリエ、ピエール・ルノワール、マリー・デア

 

◆映画監督として上り調子になった途端ナチスの台頭でドイツにいられなくなり、フランス、さらにアメリカに亡命、ハリウッドでノワールの代表的作家になるシオドマク。本作は彼がフランスで撮ったノワール、その後、これもドイツからの亡命作家ダグラス・サークによって米で『誘拐魔』としてリメイクされる。若い女性が行方不明になる事件が多発、警察はある女性を使っておとり捜査を開始、彼女はその中で知り合った陽気な男と恋仲になる。しかしその男の机に犯罪の証拠が…。狂気のデザイナーは無声映画時代の巨匠シュトロハイム。

このページのトップへ

 

ビッグ・ガン

ビッグ・ガン1973年/112分/カラー/BD
◎監督:ドウッチョ・テッサリ◎原案・脚本:フランコ・ヴェルッキ
◎出演:アラン・ドロン、リチャード・コンテ

 

◆マフィアの殺し屋が、息子の将来のために足を洗おうとするが、組織の安泰のため彼を殺そうとしたマフィアが誤って彼の妻子を爆殺、主人公は復讐にひた走る。物語の骨格はフリッツ・ラングの『復讐は俺に任せろ』だが、それを知っているほどラストに驚きは大きい。要所要所に見られる色彩感覚や、殺しのエゲつなさに製作地のイタリアらしさがにじみ出る。ノワールの名作『他人の家』や『ゴッドファーザー』の名優リチャード・コンテにも注目。

このページのトップへ

 

 

墓場なき野郎ども

墓場なき野郎ども1960年/103分/モノクロ/BD
◎監督・脚本:クロード・ソーテ◎脚本・原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
◎出演:リノ・ヴァンチュラ、ジャン=ポール・ベルモンド

 

◆逃亡中の死刑囚がイタリアからフランスへ。妻子連れという不利もあり、行動が荒く、行く先々に死体が積みあがる。この間のあれよあれよというスピードから一転、パリでの逼塞は、厄介者となってしまった彼が抑圧された時間が続くギャップ。突き放したようなナレーション(ラストの一言に痺れる)、ヴァンチュラのハードボイルド、かくまうベルモンドの男気。『穴』に続くジョゼ・ジョヴァンニの原作、脚本、カメラも同じギスラン・クロケ。

このページのトップへ


入場料金

当日券

一般1600円、シニア1300円、会員・学生1200円、ハンディキャップ・高校生以下1000円


回数券

一般3回券4200円、シニア3回券3600円、会員・学生3回券3300円
※3回券は複数人数での使用不可 ※会員3回券は本人のみ(同伴者1名まで1本1200円)



※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
オンラインチケットはこちら

スケジュール

スケジュール

Copyright2024,Cinenouveau,All right reserved