上映作品
東ベルリンから来た女 (原題:BARBARA)
ドイツ/2012年/105分/ドイツ語上映(日本語字幕つき)/DCP
監督・脚本: クリスチャン・ペッツォルト(Christian Petzold)
出演: ニーナ・ホス/ロナルド・ツェーアフェルト/ライナー・ボック/クリスティーナ・ヘッケほか
♦1980 年夏、東ドイツ。バルト海沿岸の小さな町の病院に、ひとりの女医が赴任してきた。彼女の名はバルバラ。かつては東ベルリンの大きな慈善病院に勤務していたが、西ドイツへの移住申請を政府に却下されて、この地に“左遷”されてきたのだ。一度、祖国を裏切った“前科”のあるバルバラの私生活には、つねに秘密警察の監視の目が光っていた。些細なことでスパイの嫌疑がかけられかねない時代、バルバラは病院の上司アンドレから寄せられるさりげない優しささえも、シュタージへの“密告”の手段ではないかと猜疑心が拭い切れない。さらに西ベルリンに暮らす恋人ヨルクでさえも、果たしていつまで彼女の味方であり続けるのか?心の拠り所を失くしたバルバラにとって唯一の生き甲斐が、医師としての信念だ。不安に陥る患者を励まし、刻一刻と病状の変化を見守る。患者に注ぐ無償の献身こそが、過度な緊張を強いられて、今にも崩れ落ちそうな彼女の心の支えとなっていた。恋人ヨルクとのデンマークへの逃亡は、そんな彼女にとって暗黒の日々との訣別となるはずだった。しかし、東ドイツを離れて、自分はいったい何をするというのか。医師としての誇りは?そんなバルバラの揺れる心に、医師としても男性としても誠実なアンドレは、次第に大きな存在となってゆく。果たして、バルバラの選んだ究極の決断とは……?
バナナ・パラダイス (原題:香蕉天堂)
台湾/1989年/148分/中国語上映(日本語・英語・中国語字幕つき)/DCP
監督:王童
脚本:王小棣/宋綋
出演:鈕承澤/張世/曾慶瑜ほか
◆1949年国民党の兵士として中国大陸から台湾にやってきた門栓と得勝。
台湾はバナナがたくさん食べられて天国のようなところだと言われてやってきた2人だったが、得勝は共産党員と疑われて拷問の末に発狂。軍を脱走した門栓は、偶然知り合った月香と偽装結婚し、彼女の死んだ夫の身分を使って役所に就職する。読み書きが不自由な門栓は、証明書を偽造したり、困難を切り抜けながら懸命に局長まで出世する。しかし1987年に台湾人の大陸訪問が解禁されると、門栓の平穏な生活がまた揺らぎだすーー。
玄海灘は知っている (原題:현해탄은 알고 있다)
韓国/1961年/108分/韓国語上映(日本語字幕つき)/DCP
監督: キム・ギヨン
脚本: キム・ギヨン/ハン・ウンサ
出演: キム・ウンハ/コン・ミドリ/イ・イェチュン/キム・ジンギュ/イ・サンサ/チュ・ジュンニョほか
◆1944年1月。特別志願兵制度によって半ば強制的に徴兵された朝鮮人青年たちが名古屋の部隊に入隊する。その中には、反骨精神が旺盛で、要注意人物としてマークされているア・ロウンと井上がいた。朝鮮人を嫌う上等兵の森からの暴力や差別にさらされ、人間以下の扱いを受ける二人。非人間的な軍生活に苦しむ中、ロウンは日本人女性、秀子と出会い、二人は恋に落ちる。家族の反対にもかかわらず、二人は結婚を約束する。米軍の空襲直前に部隊を離れ、妊婦の秀子と逃亡することを決意したロウンだが、激しい爆撃によって焦土化した町の中で秀子とはぐれてしまう―。
著者であるハン・ウンサ原作の同名ドラマを映画化した作品で、日本で撮影された初の韓国映画。
主人公ア・ロウン役のキム・ウンハと秀子役のコン・ミドリのデビュー作品でもあるこの映画は、キム・ギヨン監督のフィルモグラフィーの中ではやや異色の存在。一部、映像と音声が消失している箇所があり、現在も不完全版で保存されている。今回の上映では、観客の理解を補うために音声が消失した箇所のセリフに字幕をつけたデジタル版で上映される。
月はどっちに出ている
日本/1993年/109分/日本語上映/35mm
プロデューサー:李鳳宇/青木勝彦
監督: 崔洋一
脚本: 鄭義信/崔洋一
出演: /岸谷五朗/ルビー・モレノ/絵沢萌子/小木茂光/遠藤憲一ほか
◆多国籍都市、東京。在日コリアンのタクシードライバー忠男のまわりでは悲劇とも喜劇ともつかない事件が毎日のように起きている。忠男にとっては、遠く離れた祖国よりも、会社の窮状よりも、さしあたっては昨日出会った大阪弁で生意気な口をきくフィリピーナ、コニーを口説くことの方が大事だった。笑えて切ないふたりの恋は、果たしてどこに向かうのか―。
放送禁止用語と差別用語が飛び交う、危険物満載の走るエンターテインメント、『月はどっちに出ている』。そのハードボイルドな映像世界で常に日本映画界を揺さぶり続ける崔洋一監督が、初めて自身の血の問題を素直に、過激に、そして繊細に語る快作。
日常生活の隙間から、日本人が意識のどこかに隠し持っている奇妙な不発弾:在日外国人問題が垣間見える同作品。「在日外国人を描く社会派良心作」とは違う掟破りのラジカル・リリカル・コメディ。
HARUKO
日本/81分/2004年/日本語上映(英語字幕つき)/35mm
プロデューサー:岡田宏記
製作:亀山千広/太田英昭
企画:西渕憲司
監督:野澤和之
製作:フジテレビジョン
◆ヤミ商売で37回の逮捕歴。怒涛の人生を生き抜いてきた在日一世の母と、そんな母の姿を記録してきた朝鮮総連・カメラマンの息子。母が一生懸命生きてきた人生を傍らでずっと見てきた息子は、彼女の人生の瞬間瞬間をフィルムに記録した。現在では国籍を北朝鮮籍から韓国籍に変え、日本で母から焼肉屋を継いだ息子が、老いて行く母に見るものは。7人の子供を抱えながら、激動の時代と放蕩する夫に振り回され、極貧生活、一家離散を経験した金本春子。亡くなった後も夫を絶対許せない彼女は、「父」として慕う子供達と事あるたびにぶつかる。「国籍」や「思想」でも親子間で価値観が食い違い、口論も絶えない日々。彼女の幸せの瞬間とは、幸せを目指して生きてきた母と家族の絆の記録。2003年にフジテレビにて放送された『ザ・ノンフィクション「母よ!引き裂かれた在日家族」』は、ある普通の在日朝鮮人家族の半生を描いたドキュメンタリー作品だが、好視聴率を記録しただけでなく、ギャラクシー賞も受賞。在日社会でも大きな話題となった。この「HARUKO」劇場公開版は、テレビ放送後に寄せられた様々な反響と再放送を望む声に応える形で、フジテレビが製作したドキュメンタリー映画である。作品の中には、長男ソンハ氏撮影のフィルムが所々使用されており、母のピョンチュン(春子)さんのヤミ商売、逮捕されて出所する姿、北朝鮮へ渡る妹とその時の母の姿等が、息子の優しく切ない視線を通して焼き付けられている。これらのフィルムは、家族や、街で遊ぶ子供たちの様子等を通して、40年以上前の日本で生きていた人々の生活ぶりを克明に記録した大変貴重なものである。
空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜 (原題:동주)
110分/韓国/2015年/韓国語&日本語上映(日本語字幕つき)/Blu-ray
監督:イ・ジュニク
脚本:シン・ヨンシク
出演:カン・ハヌル/パク・チョンミン/キム・インウ チェ・ヒソほか
◆1917年、北間島(中国吉林省東南部)の同じ家で生まれ育った、いとこ同士のユン・ドンジュ(尹東柱)とソン・モンギュ(宋夢奎)は中学を卒業すると共にソウルの延禧専門学校へ進学する。ドンジュは医者になってほしい父を説得して選んだ文学部への入学だった。二人は同級生らと共に、自らの散文や詩を載せた同人誌を編集発行するなどして、詩人になる夢を膨らませてゆく。1941年、延禧専門学校を卒業したドンジュは、日本への留学の必要からやむなく創氏改名に応じ、一家は「平沼」姓となり、モンギュも「宋村」と創氏する。二人は揃って日本へ渡り、モンギュは京都帝京大学へ、ドンジュは東京の立教大学に入学するが、戦時体制の気風が激しくなり後に京都の同志社大学に転学する。翌年、独立運動を主導した嫌疑によりモンギュは逮捕され、帰郷しようとしていたドンジュも捕らわれてしまう。しかしドンジュは獄中で何百もの詩を書き続け、その二年後に27歳という若さでこの世を去る。ユン・ドンジュは、韓国の国民詩人で日本でも多くのファンを魅了する詩人である。生涯詩人になることを夢見ながら、それが叶えられない時代を駆けぬけた彼の生きざまを描いた作品。
イベント
11/3(金・祝)18:40 対談「在日韓国人みずからによる映像」
四方田犬彦さん&李鳳宇さん
11/4(土)18:00 日独韓台シンポジウム「映画で知る歴史」
四方田犬彦さん/ゲオルク・ゼースレンさん/イム・ジヒョンさん/ジェーン・ユウさん
入場料金
当日券
一般1,500円/シニア1,100円/学生・会員1000円
※連日朝より当日分の整理番号つき入場券の販売を開始します。
ご入場は各回10〜15分前より整理番号順となりますので、前売券なども受付にて入場券とお引き換えください。