大阪〈生きた建築〉映画祭 非・定住者たちの大阪

上映作品

現存しない建物や都市空間、日常に埋没した隠れた風景の「生きた姿」を見せてくれる映画がある。大阪を舞台に撮られた映画作品の登場人物の背景にある「建築」に執着するユニークな映画祭。今年は「非・定住者たちの大阪」をテーマに4作品を厳選。土地や家、そして部屋にも縛られない「非・定住者たち」が描き出す「大阪」と「建築」を目撃せよ!

泥の河

泥の河1981年/日本/105分
◎監督:小栗康平◎脚本:重森孝子◎原作:宮本輝◎撮影:安藤庄平◎照明:島田忠昭◎録音:西崎英雄、平井宏侑◎美術:内藤昭◎音楽:毛利蔵人
◎出演:田村高廣、藤田弓子、朝原靖貴、加賀まりこ、柴田真生子、桜井稔、初音礼子、西山嘉孝、蟹江敬三、殿山泰司

♦堂島川が安治川と名を変える中之島の西端辺りが舞台の宮本輝の原作世界が(名古屋の中川運河を借りて)再構築されている。うどん屋を営む両親と信雄が暮らす川縁の「バラック」。その対岸に係留された吉ちゃんと銀子の姉弟が生活のために体を売る母親と暮らす「家船/廓船」。川、橋、階段、壁、窓を挟んで隣り合う水の世界と丘の世界、子どもたちの世界と大人たちの世界、同じ空間に存在しながらも別の位相に存在する多層的な世界観とその境界面が描かれている。

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大阪の宿

大阪の宿1954年/日本/122分
◎監督:五所平之助◎脚本:八住利雄、五所平之助◎原作:水上滝太郎◎撮影:小原譲治◎照明:矢口勇◎録音:道源勇二◎美術:松山崇◎音楽:団伊玖磨
◎出演:佐野周二、細川俊夫、乙羽信子、恵ミチ子、水戸光子、川崎弘子、左幸子、三好栄子、藤原釜足、安西郷子

♦大阪に左遷されてきた独身の会社員で、物書きとしての顔も持つ三田が仮住まいするのは土佐堀川沿いの「旅館・酔月」。三人の女中たちが洗濯をする水辺、夜な夜な酔っ払っては三田に絡みにやってくる芸者うわばみと三田が夜に流す水辺と対岸の建物、土佐堀川に直行する舟入や水路にかかる橋など、今はない土佐堀川沿いの水辺の風景も堪能できる。三田が一目惚れする女事務員貴美子を追う視線は中之島公会堂周辺の当時の様子を捉える貴重な映像でもある。

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めし

めし1951年/日本/97分
◎監督:成瀬巳喜男◎脚本:田中澄江、井手俊郎◎原作:林芙美子◎撮影:玉井正夫◎照明:◎録音:◎美術:中古智◎音楽:早坂文雄
◎出演:上原謙、原節子、島崎雪子、進藤英太郎、瀧花久子、二本柳寛、杉村春子、杉葉子、小林桂樹、花井蘭子

♦大阪に転勤してきた倦怠期の夫婦が暮らす天神ノ森の「長屋」。同じ出来事が反復される起伏の少ない家庭の諸室が様々な角度から丁寧に捉えられる。長屋の隣人との視線や会話を通して描かれる近代都市生活における旧知でない他者たちの間の距離感の描写も興味深い。途中、夫婦を訪ねて転がり込んできた夫の姪が躍動する大阪観光のシーンでは中之島公会堂や大阪証券取引所など、現存する近代建築の当時の姿が発見できる。

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貸間あり

貸間あり1959年/日本/112分
◎監督:川島雄三◎脚本:川島雄三、藤本義一◎原作:井伏鱒二◎撮影:岡崎宏三◎照明:下村一夫◎録音:鴛海晄次◎美術:小島基司◎音楽:真鍋理一郎
◎出演:フランキー堺、淡島千景、桂小金治、浪花千栄子、沢村いき雄、乙羽信子、渡辺篤、西岡慶子、頭師満、藤木悠


♦通天閣を望む夕陽ヶ丘の崖際に建つ「青柳アパート屋敷」は、一癖も二癖もある住人たちが暮らす、いまで言うシェアハウス。頼まれると断れない与田五郎を取り巻く住人たちの欲望と思惑が蠢くベクトル場さながらに、この「アパート屋敷」の建築全体が回転し続けているような錯覚に陥る。住人たちのドタバタ劇に微動だにせず同じ方角を向いて立ち続ける狸の置き物がかろうじてこの回転空間を大地に繋ぎとめているのだろうか?

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トークショー開催!!

10月28日(土)の18:30『貸間あり』上映後
ミルクマン斉藤(映画評論家)、堀口徹(建築映画探偵)、山崎紀子(シネ・ヌーヴォ)らによる建築映画クロストーク!

入場料金

当日券

一般1,400円/学生1,200円/シニア1,100円/会員・高校生以下1,000円
建築学科学生割引:1,000円(要学生証提示) イケフェス参加者割引:1,000円(要大阪市公式ガイドブック提示)

※連日朝より当日分の整理番号つき入場券の販売を開始します。
ご入場は各回10〜15分前より整理番号順となりますので、前売券なども受付にて入場券とお引き換えください。

スケジュール

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