この7月17日、石原裕次郎没後30年を迎える。同時に今年は、裕次郎の大ヒット作を手掛けた蔵原惟繕監督の生誕90年、没後15年に当たる。蔵原監督は、裕次郎をはじめとする日活のスター映画でヒット作を生み出す一方、個性溢れる作品にも才能を発揮した屈指の監督だった。かつて中平康、今村昌平らと共に“日活三羽がらす”と呼ばれ、日活プログラム・ピクチャーのエースとして、数々のヒット作を連作してきた。同時にシャープな映像感覚で、作家性と娯楽性の両面を兼ね備えた希有な作品群を発表。ダンディーな風貌、そして反骨精神溢れる日本映画屈指の技巧派監督としても知られ、今こそ再評価すべき監督のひとりである。日活を退社後は、『キタキツネ物語』(78年)、『南極物語』(83年)などの記録的な大ヒット作を監督。過酷な現地ロケ、商業的な締め付けの中、作家性を見失わない演出スタイルは高く評価されるべきであろう。蔵原監督の生誕90年、没後15年を記念し、生涯の37作品から上映可能な34本を集め、一挙上映する。今こそ蔵原惟繕!!
俺は待ってるぜ
1957年/日活/モノクロ/1:31/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:石原慎太郎/撮影:高村倉太郎/美術:松山崇/音楽:佐藤勝
出演:石原裕次郎、北原三枝、小杉勇、植村謙二郎、二谷英明、波多野憲、草薙幸二郎、青木富夫、杉浦直樹
◆石原慎太郎が弟・裕次郎のヒット・ソングにヒントを得て書き下したシナリオを、監督第1作となる蔵原惟繕が映画化。ブラジルに渡ろうとした兄を殺され、復讐のために立ち上がる元ボクサーの姿を描く快作。裕次郎の次作『嵐を呼ぶ男』(監督:井上梅次)と共にブームを決定づける作品となり、蔵原にとって華麗なるデビュー作となった。
霧の中の男
1958年/日活/モノクロ/1:33/16mm
監督:蔵原惟繕/原作・脚本:石原慎太郎/撮影:横山実/音楽:佐藤勝/美術:木村威夫
出演:葉山良二、左幸子、西村晃、二谷英明、小林旭、山田禅二、木室郁子、菅井一郎、白木マリ
◆前作に続き石原慎太郎の原作・脚本を蔵原が映画化した日活アクション。敗戦時、捕虜収容所での生活から人間性をなくした男。戦後、賭博場荒らし、ギャングの手先、殺し屋という道を歩んだ男の運命を、回想形式で綴る。葉山良二がギャング役に初挑戦。情婦に扮する左幸子が日陰の女の哀しさを好演。影を巧みに使った画面構成が光る
風速40米
1958年/日活/カラー/1:37/35mm
監督:蔵原惟繕/原作・脚本:松浦健郎/撮影:横山実/美術:松山崇/音楽:佐藤勝
出演:石原裕次郎、北原三枝、川地民夫、金子信雄、宇野重吉、渡辺美佐子、小高雄二、小園蓉子、山岡久乃
◆裕次郎ブームの最中、そのタフガイの真価を発揮した迫真のアクションドラマ。雑誌『平凡』に連載されていた松浦健郎の原作を自ら脚本化。“黄金の60年代”の建設ブームにあって、その神格化を担う作品となったが、クライマックスの工事中のビルに、風速40米の台風が襲ってくるシーンは圧巻。裕次郎と北原三枝のロマンスにほっこり。
嵐の中を突っ走れ
1958年/日活/カラー/1:30/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:脚本:松浦健郎/撮影:高村倉太郎/美術:木村威夫/音楽:真鍋理一郎
出演:石原裕次郎、北原三枝、岡田真澄、白木マリ、中原早苗、市村俊幸、西村晃、清水マリ子、清水将夫、松本染升、浜村純
◆前作に続き『平凡』連載を原作者自ら脚本化。前作共、アウトサイダーとしてデビューした裕次郎が、体制内ヒーローへと変節を感じさせる作品となったが、裕次郎の魅力は満載。女子高に赴任した熱血教師が、女にゃ弱いが悪には強いという裕ちゃん先生の魅力を充分に盛り込んだ青春アクション。裕次郎を堪能する1本。
第三の死角
1959年/日活/モノクロ/1:36/35mm/英語字幕付き
監督:蔵原惟繕/原作:小島直記/脚本:蔵原弓弧、直居欽哉/撮影:藤岡粂信/美術:松山崇/音楽:佐藤勝
出演:葉山良二、長門裕之、森雅之、深江章喜、東野英治郎、渡辺美佐子、芦田伸介
◆ボスの用心棒として操られていた青年が、初めて知った真実の愛ゆえに足を洗おうとするが逆に破滅するというアクション映画。組織の内外で暗躍する男たちをスリラー的手法で描いたカメラワークが秀逸。蔵原は「文体と内容が一致した作品」と語るなど手応えを感じる一本となった。脚本の蔵原弓弧は監督の妻・宮城野由美子のペンネーム。
爆薬(ダイナマイト)に火をつけろ
1959年/日活/モノクロ/1:33/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:樽井武/脚本:池田一朗、阿部桂一/撮影:岩佐一泉/美術:木村威夫/音楽:小杉太一郎出演:小林旭、白木マリ、岡田真澄、安井昌二、植村謙二郎、芦田伸介、西村晃、伊達信、高品格
◆小林旭が土建会社の若き社長に扮する日活アクション。談合入札の裏をかき、京浜沿いの理立地帯・第三工区の工事を請け負った中西組だが、工事権を狙う加納一派が妨害を重ね…。不正を憎む土建屋・アキラと、人夫の頭役の高品格のタイマン勝負がクライマックス。ここでも山場に台風が出現。少々苦いラストも心憎い。
海底から来た女
1959年/日活/モノクロ/1:16/35mm/英語字幕付き
監督:蔵原惟繕/原作:石原慎太郎/脚本:石原慎太郎、蔵原弓弧/撮影:山崎善弘/美術:千葉一彦/音楽:佐藤勝
出演:筑波久子、川地民夫、内田良平、武藤章生、草薙幸二郎、本間文子、浜村純
◆孤独な青年が、ある日ヨットで生魚をかじる少女と出会う。彼は少女に魅せられるが、その頃村の若者がフカに食い殺される怪事件が起きて…。フカの化身と青年との神秘的な恋を描いた石原慎太郎の『鱶女』を、蔵原惟繕がホラー・タッチで映画化。フカの化身を妖艶な演技で魅せる筑波久子が素晴らしい。水中シーンの夢幻的な美しさ!
地獄の曲り角
1959年/日活/モノクロ/1:33/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:藤原審爾/脚本:山田信夫、馬場当、今村昌平/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:真鍋理一郎
出演:葉山良二、南田洋子、稲垣美穂子、二本柳寛、近藤宏、高品格、大泉滉、土方弘
◆その後、数々の傑作を共に手掛けることになる脚本・山田信夫と、撮影・間宮義雄との初作品。ホテルのボーイ・牧は、殺人事件のあった部屋で「三分の一の鍵」と書かれた紙片と鍵の一部を拾い…。クレーンによる撮影を駆使して、欲望が渦巻くストーリーをシャープにスリリングに描くサスペンス映画。人生の明暗が鮮やかに浮かび上がる。
われらの時代
1959年/日活/モノクロ/1:38/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:大江健三郎/脚本:白坂依志夫/撮影:山崎善弘/美術:松山崇/音楽:佐藤勝
出演:長門裕之、吉行和子、渡辺美佐子、小高雄二、金子信雄、梅野泰靖、小泉静夫、神山繁
◆日米安保闘争激動の時代を背景に、大江健三郎の長編小説を映画化。増村保造とのコンビで知られる白坂依志夫が脚本。セックス、暴力、ギャンブルに青春を賭ける三人のバンドマンと、娼婦と同棲している学生を主人公に描く。三人は総理大臣襲撃の計画に参加して…。学生運動の挫折など、時代を反映した映画となった野心作。。
ある脅迫
1960年/日活/モノクロ/1:06/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:多岐川恭/脚本:川瀬治/撮影:山崎善弘
/美術:千葉一彦/音楽:佐藤勝 出演:金子信雄、西村晃、白木マ
リ、小園蓉子、草薙幸二郎、河上信夫、山田禅二、浜村純、新井麗子
◆直木賞を受賞した多岐川恭の短編ミステリーを映画化したフィルム・ノワールの傑作。同じ銀行に務める幼なじみの二人だが、上役と部下。しかし、強盗事件から二人の立場は入れ替わり…。映像もさることながら、金子信雄と西村晃の迫真の演技が素晴らしい!S P 映画でありながら、心理サスペンスの濃密さ、ラストの素晴らしさに拍手!
狂熱の季節
1960年/日活/モノクロ/1:16/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:河野典生/脚本:山田信夫/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:黛敏郎
出演:川地民夫、郷鍈治、長門裕之、草薙幸二郎、松本典子、千代侑子、新井麗子、小園蓉子
◆ジャズのリズムにのせ、ダイナミックなカメラの動きで旧来の日本映画のスタイルを革新した伝説の一本。少年鑑別所を出た明と勝は途中でユキを拾い海へと向かった。3人は海岸で明を鑑別所に送りこんだ新聞記者の柏木と恋人の文子を襲う…。虚無感から無軌道に生きる若者たちの姿をビート・ジャズの演奏に乗せて鮮烈に描く。
破れかぶれ
1961年/日活/モノクロ/1:08/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:山崎巌/脚本:山田信夫、阿部桂一/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:佐藤勝、伊部晴美
出演:川地民夫、郷鍈治、渡辺美佐子、内藤武敏、和田悦子、深江章喜
◆蔵原の主人公たちは、どこか脱出することを夢見ている。アルゼンチンに行くことを夢見ながらも、女と金に、ゆきあたりばったりに生きる光夫(川地)。ある日、兄貴分の金を使いこんでしまい…。テンポ良い展開、そして鮮烈な映像で、若者の夢と復讐を描く。『狂熱の季節』に続き、永遠の少年を演じる川地民夫が素晴らしい
この若さある限り
1961年/日活/モノクロ/1:16/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:石坂洋次郎/脚本:岡田達門/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:真鍋理一郎
出演:浜田光夫、吉永小百合、吉行和子、小夜福子、内藤武敏、清水将夫、東恵美子
◆年上の女教師と高校生の禁断の恋を題材にした石坂洋次郎原作の映画化。高校三年の亮子(吉永)は幼なじみの行雄(浜田)のことが好きだったが、彼は国語教師ののぶ子(吉行)に夢中だった…。思春期の男女の、異性への興味やあこがれを、2組の年代のカップルの視点から描く。しかし、ここでも蔵原演出はスピーディで心地良い!
海の勝負師
1961年/日活/カラー/1:32/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:佐藤勝/助監督:藤田繁夫
出演:宍戸錠、笹森礼子、中原早苗、藤村有弘、加藤武、中村是好、佐野浅夫、田中明夫、高品格、土方弘、二本柳寛
◆潜水夫ジョーは、二年前に起った事件から“卑怯者”の洛印を押され、港々を流れ歩いていた。彼にその時と同じケースの仕事が舞い込んでくる。ジョーはかつて潜水の神様と呼ばれながら酒に溺れる北川と仕事にあたることになるが…。『リオ・ブラボー』とどこか重なる内容で、宍戸錠の活躍と、男同士の友情が魅力のアクション作品。
嵐を突っ切るジェット機
1961年/日活/カラー/1:36/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:松浦健郎/脚本:星川清司/撮影:間宮義雄/美術:木村威夫/音楽:伊部晴美
出演:小林旭、笹森礼子、葉山良二、山内明、吉行和子、郷鍈治、二本柳寛、芦田伸介、高原駿雄、草薙幸二郎、高品格
◆小林旭主演“パイロット“もの4本のひとつ。榊(小林旭)は航空自衛隊アクロバット・チームの一員。彼の兄・英雄(葉山良二)は私設航空集団“太平洋“を経営していたが、麻薬商人の仕事を請け負い…。日本映画始まって以来の高度1万メートルの決死的撮影や、台風の中の飛行シーンも見どころ。映画も命懸けの日活アクション活劇。
メキシコ無宿
1962年/日活/カラー/1:34/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:星川清司/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:伊部晴美
出演:宍戸錠、葉山良二、笹森礼子、パトリシヤ・コンデ、藤村有弘、中原早苗、永井智雄、田中明夫、江角英明
◆メキシコ・ロケによる宍戸錠主演の、これぞ和製ウエスタンの怪作。悪玉に土地を奪われ殺人者の汚名を着せられたメキシコ人の友人のために、錠がメキシコにやってきた。炎熱の陽光と鮮烈な原色を持ったメキシコを舞台に、スペイン語から字幕、吹き替えが入り交じり、即興演出も冴える無国籍アクション大作。殺し屋に扮した藤村有弘が怪演。
銀座の恋の物語
1962年/日活/カラー/1:33/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫、熊井啓/撮影:間宮義雄/美術:松山崇/音楽:鏑木創
出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、江利チエミ、ジェリー藤尾、和泉雅子、清川虹子、清水将夫、下條正巳
◆銀座を舞台に、画家の卵と洋裁店で働く女性の恋愛を描いたメロドラマ。いまも歌われる裕次郎の大ヒット曲の映画化。青春の夢と希望を賭けた若者たちを描き、日本娯楽映画史の頂点に輝く傑作となった。縦横無尽なキャメラワークで、“戦後”から“高度成長期”へ転換していく時代の新しい銀座の街をいきいきと描き、代表作となる。
憎いあンちくしょう
1962年/日活/カラー/1:44/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫/撮影:間宮義雄、岩佐一泉/美術:千葉一彦/音楽:黛敏郎/助監督:藤田繁夫
出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、芦川いづみ、小池朝雄、長門裕之、川地民夫、高品格、佐野浅夫、山田禅二
◆愛を確かめるべく中古ジープに乗った裕次郎とルリ子が日本列島を南下、九州に辿り着くまでを描く蔵原惟繕のロード・ムービーの傑作。裕次郎は人気タレント、浅丘はそのマネージャー兼恋人。裕次郎の番組に出演した芦川の純愛の思いから無謀な旅に出ることに。旅の途中で立ち寄る大阪駅前での撮影は当時ファンが取り囲み、大反響を巻き起こした。ロケーションの緊迫感は圧巻。
硝子のジョニー 野獣のように見えて
1962年/日活/モノクロ/1:46/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫/撮影:間宮義雄/美術:木村威夫/音楽:黛敏郎/助監督:藤田繁夫
出演:宍戸錠、芦川いづみ、アイ・ジョージ、平田大三郎、南田洋子、桂木洋子、武智豊子
◆貧しさから売られた娘と二人の男。裏切られ、捨てられても愛を信じ、求める女と二人の男の道行きを通して、つきつめられた愛の姿を描く。芦川が無垢な心を持つヒロインを圧倒的な存在感で演じ、最高傑作となる。それにしても1962年、傑作を連発する蔵原の凄さ! 芦川の神々しいまでの美しさもあって、まさに神々しい映画となった。
何か面白いことないか
1963年/日活/カラー/1:56/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫/撮影:間宮義雄/美術:千葉一彦/助監督:神代辰巳/音楽:黛敏郎
出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、川地民夫、滝沢修、加藤武、森川信、武内亨、信欣三、鈴木瑞穂、伊藤孝雄
◆蔵原が浅丘ルリ子をヒロインにした「典子三部作」(他は『憎いあンちくしょう』『夜明けのうた』)の1本で、『憎いあンちくしょう』の姉妹編ともいえる人間の真摯な生き方を問う青春映画の傑作。平凡な恋人との退屈な幸福に疑問を持ちはじめたヒロイン典子が、ある日、元パイロットの型破りな青年に出会う。商業映画でこんな映画を作るなんて!
黒い太陽
1964年/日活/モノクロ/1:35/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:河野典生/脚本:山田信夫/撮影:金宇満司/美術:千葉一彦/音楽:黛敏郎
出演:川地民夫、チコ・ローラント、藤竜也、千代侑子、大滝秀治、新田昌玄、山田禅二、井東柳晴、澄川透、黒田剛
◆ジャズに熱狂する一人の若者が、白人二人を射殺して脱走した黒人兵と出会い、脅されて一緒に逃走することになって…。青春の孤独と、ジャズで結ばれた奇妙な友情。『狂熱の季節』に続き、ジャズと映像が一体化。川地民夫はジャズがよく似合う。主人公の無軌道でエネルギッシュな行動と、強烈なビートが心を揺さぶる異色作。
執炎
1964年/日活/モノクロ/2:00/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:加茂菖子/撮影:間宮義雄/美術・松山崇/音楽:黛敏郎
出演:浅丘ルリ子、伊丹十三、芦川いづみ、松尾嘉代、平田大三郎、山田禅二、河上信夫、入江杏子、加原武門
◆山陰の漁村の網元の息子と山の娘・きよの。二人は情熱的に愛し合い結婚するが、彼は兵隊にとられて戦場に行く…。愛に生き、愛に死んだ一人の女を通して、人間の精神の美しさを追求した異色文芸大作。愛する2人に託した凄絶な反戦映画となった。山陰・香住町などでロケされ、日本海の美しさ、架け替え前の余部鉄橋は必見。
夜明けのうた
1965年/日活/モノクロ/1:33/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫/撮影:間宮義雄/美術:松山崇/音楽:いずみたく/助監督:藤田繁夫
出演:浅丘ルリ子、浜田光夫、松原智恵子、岸洋子、小高雄二、藤村有弘、岡田真澄、藤木孝、小松方正
◆脚本の山田と共に創り上げた浅丘「典子三部作」最終章。女優・典子が出演依頼を受けた新作「夜明けのうた」は、彼女と作曲家との情事に酷似していた。彼女が憤るなか、失明を予告されている少女とその恋人の純愛に触れ…。浅丘ルリ子が愛の焦燥に悶えるヒロインを魅力たっぷりに好演。蔵原&浅丘でよくぞこういう映画を撮った!?タイトルの「夜明けのうた」は岸洋子のヒット曲。
愛と死の記録
1966年/日活/モノクロ/1:32/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:大橋喜一、小林吉男/撮影:姫田真佐久/美術:大鶴泰弘/音楽:黛敏郎
出演:吉永小百合、渡哲也、芦川いづみ、浜川智子、中尾彬、垂水悟郎、三崎千恵子、鏑木はるな、佐野浅夫、滝沢修
◆4歳のときに被爆した青年(渡)とレコード店で働く娘(吉永)の純愛。初めて知った愛の歓びと幸せに酔う若い二人を襲った運命――。吉永の『愛と死をみつめて』の逆パターンだが、実際に広島近郊でキノコ雲を目撃した蔵原の思いが溢れる感動作。原爆慰霊碑他、広島市内各所でロケ。若い二人の迫真の演技で号泣必至の名編。
愛の渇き
1967年/日活/モノクロ/1:39/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:三島由起夫/脚本:藤田繁夫、蔵原惟繕/撮影/間宮義雄/美術:千葉一彦/音楽:黛敏郎
出演:浅丘ルリ子、山内明、中村伸郎、楠侑子、小園蓉子、紅千登世、石立鉄男、小高雄二
◆大阪の豊中付近の豪邸を舞台に、三島由紀夫原作を蔵原&浅丘コンビで映画化した文芸メロドラマ。『執炎』と並ぶ二人の代表作で、“愛の渇き”に悶えるヒロインの果てることのない愛のさすらいが白黒画面の中に鮮烈に焼きつけられた。浅丘の女心のもろさと毅然とした外面の演技の素晴らしさ!阪急百貨店や阪急宝塚線も登場。本作の後、蔵原は日活を退社しフリーになった。
陽は沈み陽は昇る
1973年/日活/カラー/2:23/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫、蔵原惟繕/撮影:山崎善弘/美術:徳田博/音楽:ニーノ・ロータ
出演:ローズマリー・デクスター、大林丈史、グレン・H・ネーバー、小川ローザ
◆パリからイスタンブールを経てインドまで、およそ1万5千キロの道のりに、旅の途中で知り合った三人の若者が、それぞれの過去を背負いながら旅するロードムービー。音楽に巨匠ニーノ・ロータを迎えた日活創立60周年記念作品。日本人とアメリカ人の二人の青年とフランス人の女性の旅を壮大なスケールで描く超大作。
雨のアムステルダム
1975年/東宝映像・渡辺企画/カラー/2:03/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:山田信夫/撮影:岡崎宏三/美術:樋口幸男/音楽:井上尭之
出演:萩原健一、岸恵子、三國連太郎、アラン・キュニー、マリオ・ペキュール、松橋登、テン・ボーマン
◆アムステルダムを舞台に、現地の日本人社会からはじき出された男と女が、日本の大商社の黒い霧の渦にまきこまれていくサスペンスドラマ。アムステルダムで三流商社の駐在員を務める明(萩原)は、高校時代より憧れていた涼(岸)を偶然空港で見かけ、恋の炎を再燃させるが…。『約束』以来の共演となる萩原と岸が好演。
キタキツネ物語
1978年/サンリオ・フィルム/カラー/長編ドキュメンタリー映画
/1:54/35mm 監督:蔵原惟繕/演出:片桐康夫/原案:高橋健/脚本:蔵原惟繕/撮影:栃沢正夫、椎塚彰、仙元誠三、松前次三、大村日出男、立石桂介/音楽:佐藤勝
◆厳しい自然の中で生きるキタキツネたちの生態をとらえた動物ドキュメンタリー映画。北海道のオホーツク海沿岸を中心に北見・釧路・網走・紋別などで4年かけて撮影され、キタキツネ一家の成長を根気よく追った感動作。1978年の夏映画として公開され、驚異の大ヒット。荒涼たる原野で生き抜くキタキツネたちに日本中が夢中になった。
青春の門
1981年/東映京都/カラー/2:20/35mm 監督:蔵原惟繕、深作欣二/原作:五木寛之/脚本:野上龍雄/撮影:仲沢半次郎、中島徹/美術:井川徳道、他/音楽:山崎ハコ
出演:菅原文太、松坂慶子、鶴田浩二、若山富三郎、佐藤浩市、杉田かおる、渡瀬恒彦
◆筑豊を舞台に主人公・伊吹信介の成長を、激しく生きる大人たちの世界の中で描く。五木寛之原作の浦山桐郎監督版に続く映画化。急遽正月映画として公開が決まったことから蔵原、深作の二班体制で撮影。深作は信介の幼少時代、メインの蔵原が成長した信介を担当。文太が父親の重蔵、若山の塙、鶴田の矢部虎は、まさに東映任侠映画の真骨頂!
青春の門 自立篇
1982年/東映京都/カラー/2:27/35mm 監督:蔵原惟繕/原作:五木寛之/脚本:高田宏治/撮影:仲沢半次郎/音楽:菊池俊輔/美術:井川徳道
出演:佐藤浩市、桃井かおり、杉田かおる、風間杜夫、平田満、火野正平、矢吹二朗、緑魔子、加賀まりこ、渡瀬恒彦
◆五木寛之の大河小説・第2部の再映画化。大学に進学した主人公・伊吹信介の、青春の彷徨を力強いタッチで描く。今度は蔵原が全編監督し、豪華キャストによる次々と繰り出されるエピソードの数々が素晴らしく、まるでテンポ良い群像劇の様相。とりわけ娼婦カオルを演じる桃井かおりが素晴らしい。蔵原の健在ぶりを示す傑作となった。
春の鐘
1985年/東宝/カラー/2:08/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:立原正秋/脚本:高田宏治/撮影:椎塚彰/美術:樋口幸男/音楽:久石譲
出演:北大路欣也、古手川祐子、三田佳子、岡田英次、
岸田今日子、芦田伸介、中尾彬、藤田敏八、加賀まりこ、立石涼子
◆長らく日本映画配給収入第1位だった『南極物語』(1983年)に続いて蔵原が手掛けた大人のラブロマンス。古陶磁器の美の世界に魅せられ、奈良で美術館館長をしている男と陶工家の娘、その男に顧みられず肉欲に溺れる妻と医師の二つの愛を軸に、男女の情念の葛藤を描く。ラスト、タイトルが鮮やかに浮かび上がる桜吹雪のシーンは秀逸。
道
1986年/東映・仕事/カラー/2:13/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:セルジュ・グルッサール/脚本:松田寛夫/撮影:間宮義雄/美術:井川徳道、山下謙爾/音楽:ミシェル・ベルナルク
出演:仲代達矢、藤谷美和子、三田佳子、池内淳子、藤奈津子、長門裕之、中島葵、春川ますみ、地井武男、若山富三郎
◆トラックの運転手ジャン・ギャバンとドライブインのウェイトレスの哀しい恋を描いたフランス映画の名作『ヘッドライト』(56)のリメイク。長距離トラックの運転手に仲代、ドライブインのウェイトレスを藤谷が演じ、山陰、萩、東京と長距離トラックが快走するロードムービー。フランソワーズ・アルディの主題歌と相まって情感溢れる名編。
海へ See You
1988年/ニュー・センチュリー・プロデューサーズ/カラー/2:54/35mm
監督:蔵原惟繕/脚本:倉本聰/撮影:佐藤利明/美術:小川富美夫/音楽:宇崎竜童、千野秀一
出演:高倉健、桜田淳子、小林稔侍、大橋吾郎、宇崎竜童、池部良、いしだあゆみ
◆世界で最も過酷といわれるパリ・ダカール・ラリーに挑む男たちの愛と戦いを描いた作品。高倉健主演で、パリ・ダカール・ラリー全行程ロケーションを敢行した超大作。もはや世界的なスケールの演出は蔵原の独壇場。過酷なサハラ砂漠を疾走するラリーは圧巻。原案はジョゼ・ジョバンニの「砂の冒険者」。
ストロベリーロード
1991年/東京宝映TV・フジテレビ/カラー/1:57/35mm
監督:蔵原惟繕/原作:石川好/脚本:山田信夫/撮影:加藤雄大/美術:藤原和彦、他/音楽:フレッド・カーリン
出演:松平健、石橋保、マリシカ・ハーガティー、マコ、桜田淳子、夏木マリ、三船敏郎
◆ベトナム戦争に揺れる1960年代、アメリカ・カリフォルニア州を舞台に、アメリカン・ドリームを信じて広大ないちご畑に夢を託す日本人兄弟の姿を描く青春ドラマ。石川好の大宅荘一ノンフィクション賞受賞作の映画化。華麗なる映画を撮り続け、ここでもないどこかを目指し、夢を追い続けた蔵原の映画渡世最後の作品となった。