『バンコクナイツ』&空族特集

甲府からアジアへ
◆甲府を舞台に地方都市のリアル、楽園を見失った人々の群像を描いた『国道20号線』、『サウダーヂ』。東南アジアにおける“麻薬・戦争・売春”の歴史を軸にした相澤虎之助監督『花物語バビロン』、『バビロン2 THE OZAWA 』など、空族がこれまでに作りあげてきた11作品を上映。空族は如何に『バンコクナイツ』へと辿り着いたのか?! 20年の歳月をかけ重なり絡み合う、壮大なる伏線とでもいうべき作品群を、まとめてご覧いただける稀少な機会です。

上映作品

空族とは

映像制作集団。2004年、“作りたい映画を勝手に作り、勝手に上映する”をモットーに『空族』を名のりはじめる。常識にとらわれない、毎回長期間に及ぶ独特の映画制作スタイルで、作品ごとに合わせた配給、宣伝も自ら行ない、作品はすべて未ソフト化という独自路線をひた走る。テーマは日本に留まらず、広くアジアを見据えている。

『雲の上』

雲の上2003年/日本
8mm→ デジタル/140分
監督・編集・脚本:富田克也 
脚本:高野貴子、井川拓 撮影:高野貴子
助監督:西川朝子 録音:吉森展土 美術・小道具:川口明子
出演:西村正秀、鷹野毅、荒木海香、相澤虎之助、古屋暁美

♦刑務所から出所したチケンが久しぶりに故郷に帰ってきた。自分のいないうちに、少しずつ何か変わり始めている気配をチケンは感じ取る。老婆たちのうわさ話や、団地、仲間たち……。「紅雲院」は屋根の改修工事をしている。「紅雲院」には蛇たちが滝壺に集まって天に向かって遡り、屋根で体を赤く染めて龍になるという言い伝えがあった。その赤かった屋根の色が変わっていたのだった。チケンは「紅雲院」という寺の跡取り息子だ。刑務所に入ってからチケンは、以前は嫌っていた坊主になるために修行に出ようと決意していた。一方、幼馴染みのシラスはやくざになったと仲間から知らされる。シラスはやくざになってもなりきれず、足をあらいたいとチケンに言う。チケンは幼い頃に果たせなかった約束を果たそうと、シラスを助けようとして巻き込まれて行く。

このページのトップへ

『かたびら街』※『FURUSATO2009』と併映

かたびら街2003年/日本/8mm→デジタル/50分
監督・脚本・撮影:相澤虎之助/脚本:行友太郎/編集:石原寛郎/撮影:行友太郎、
畠山宗明/助監督:田中一郎/音声:藤岡典一、坂井良宏、西川朝子
出演:安田豊久、井川拓、富田克也、市村夏樹、二通じゅん、鳥肌実、実佳 、笠原敬太

◆かつて暴走族であった4人の仲間は、現在それぞれの生活を送っている。元特攻隊長であったヤスダとその後輩たちは、かつての友、新宿のイカワ、トミタ達とどうやら小競り合いが続いているらしい。そして一人、岡山へ単身赴任しているイチムラ。彼だけは会社にサラリーマンとして就職することができた。「俺は飯を食う為にまともになって働く」とイチムラ。長引く不況や、失業の不安、繰り返しの日々。チンピラの祭りの後、労働が待っていた。そして誰もそれを避けられなかった。

このページのトップへ

『花物語バビロン』※『バビロン2』と併映

花物語バビロン1997年/日本/
8mm→デジタル/46分
監督・脚本・撮影・編集:相澤虎之助/撮影:行友太郎/編集:池原由起子/音楽:前瀬宗佑、佐々木力也/出演:柳田祐記、安田豊久、行友太郎

◆90年代セカンドサマーオブラブのうねりの中で、日本中からバックパッカーが世界に向けて旅立った。あるものはインドへ、あるものはチベットへ、若手お笑い芸人が世界を旅するテレビ番組が好評を博していた。その中で1人の若者がタイ北部チェンマイへと旅立っていった。この時期旅立った多くの若者たちは「自分探し」と称した自分たちの旅行が、いったい何の上に成り立っているのかを考えはしなかった。しかし、歴史はそれを許さない。1人の若者は、バンコクの安宿である夢を見る。一面のケシの花畑の中で声が聞こえてくる。「わたしたちを救ってください」その声にひかれ、若者は20世紀の歴史の闇に葬り去られようとしている東南アジアの少数民族、モン族の村へと向かうのであった。

このページのトップへ

『バビロン2 -THE OZAWA-』※『花物語バビロン』と併映

バビロン2 -THE OZAWA-2012年/日本/
8mm→デジタル/45分
監督・脚本・撮影・編集:相澤虎之助/撮影:富田克也、河上健太郎/音声・音楽監修:山崎巌
タイトルイメージ提供:長谷川学
出演:富田克也、伊藤仁、鷹野毅


◆新宿でキャッチをしていたオザワは風営法や都の規制、はたまた自分の不手際で海外へ身をかわすハメになってしまった。先輩の小沢さんに厄介ばらいのついでにベトナム、カンボジアの女の子でも新規開拓してこいと言われたのだ。単身乗り込んだベトナムで、オザワはひとりの日本人に出会う。革命家だと名乗る謎の男、古神(コガミ)に誘われオザワはインドシナをさまようことになる。ほとぼりが冷めるまでテキトーにネタでも吸って女の子と遊んでいようと考えていたオザワであったが、やはり歴史はそれを許さなかった。硝煙の彼方から声が聴こえる。「食う米がある限り、わたしたちは戦う」いつしか、ベトナムの戦場にまよいこんだオザワは、バビロンの銃を手にすることとなる。

このページのトップへ

『FURUSATO2009』※『かたびら街』と併映

FURUSATO20092010年/日本/デジタル/48分
企画:富田克也/構成・編集:高野貴子/撮影・録音:富田克也、相澤虎之助
/整音:山崎巌
出演:鷹野毅、伊藤仁、山梨県在住の方々

◆新作『サウダーヂ』のリサーチとして、一年間にわたって撮りためられた映像を空族の高野貴子が編集し、新たな息吹を与えるドキュメンタリー作品。『サウダーヂ』出演者たちの実生活を観る事ができる。地方都市の農業、土木業、工業、商業はこれからどうなっていくのかという経済的な問題群の渦中で、ブラジルからの移民労働者や若いHIP-HOP グループといった集団が結びついていく。環境音、出演者の歩くリズム、ショベルカーの金属音、そしてブラジルのサンバ。ミュージカル映画のようだ(boid 樋口泰人)と評されたこの作品は『サウダーヂ』と共に観る事でより重層的に共鳴しあうはずである。

このページのトップへ

『RAP IN TONDO』※『ラップ・イン・プノンペン』と併映

RAP IN TONDO2011年/日本/デジタル/60分
企画・撮影:富田克也/撮影:河上健太郎/構成・編集:高野貴子


◆フィリピンのトンド地区に招かれた、HIPHOPグループstillichimiyaのトラックメイカー、Big BenとYoung-G(おみゆきChannel)のふたりと、地元のHIPHOPコミュニティとの交流を描いたドキュメンタリー。ギャング社会と密接に結びついたフィリピンのHIPHOPシーン、低所得者層の住む地域で治安の悪さの中ラップやダンスを学ぶ少年少女たち。危険と隣合わせの日常を生きる彼らの顔は、それでも屈託のない笑顔に覆われている。音楽を通じた文化交流の単なる記録だけではなく、まさにこの映画の存在こそが国境を越えた人間関係をつくり出していく軌跡となる。フィリピン最大のギャングTBS13のメンバーにより結成されたHIPHOPグループ、TondoTribeが出演、全面協力している。

このページのトップへ

『ラップ・イン・プノンペン』※『RAP IN TONDO』と併映

ラップ・イン・プノンペン2018年/日本/デジタル/39分
監督:富田克也/出演:YOUNG-G、ヴィサル・ソック

♦2011年にHIPHOPグループstillichimiyaのトラックメイカーBigBenとYOUNG-Gのふたりと、フィリピン、マニラのスラム街トンド地区のHIPHOPコミュニティとの交流を描いたドキュメンタリー映画『RAP IN TONDO』(2011年)の続編。Young-Gがカンボジア、ヒップホップ・クルー「KlapYaHandz」に会うためにカンボジアの首都プノンペンに潜入する。そこにはクメール・ルージュの傷跡が残されていた。(宇都木景一)

このページのトップへ

『映画 潜行一千里』

映画 潜行一千里2017年/日本/DCP/120分
監督:向山正洋/撮影:スタジオ石(向山 正洋、古屋卓麿)/音楽:DJ KENSEI/整音:山﨑巌
出演:スベンジャ・ポンコン、富田克也、相澤虎之助、川瀬陽太
ほか

◆構想10年、タイ・ラオスオールロケ!東南アジアを縦横無尽に駆け抜けた、映画『バンコクナイツ』のドキュメンタリー!バンコクからラオスの秘境まで空族撮影隊が辿った果てなき旅路。回り続けるキャメラは必然的に東南アジアの戦争の歴史を浮き彫りにし、そこで生きる 人々の抵抗の輝きを映し出す。現地の人々が役者として出演し、さらにはスタッフとして一緒に仲間になって一本の映画を生み出していく、空族の制作スタイルを垣間見ることができる。監督はヒップホップクルー「stillichimiya」の映像ユニット“スタジオ石”の向山正洋。総時間にして100時間を越える膨大なデータを基に構成された本作品は、映像集団“空族”についての本邦初のドキュメンタリーでもある。

このページのトップへ

『サウダーヂ』

サウダーヂ2011年/日本/35㎜/167min
監督・脚本:富田克也/脚本:相澤虎之助/撮影:高野貴子/録音・音響効果:山﨑巌/助監督:河上健太郎/編集:富田克也、高野貴子/スチール:廣瀬育子
出演:鷹野毅、伊藤仁、田我流、ディーチャイ・パウイーナ、尾崎愛、工藤千枝、野口雄介、中島朋人、亜矢乃、川瀬陽太、宮台真司

◆『土方、移民、HIPHOP 『この街で一体何が起きている?!』
不況と空洞化が叫ばれて久しい地方都市。“中心”街。シャッター通り、ゴーストタウン。それがアジアNO1の経済大国と呼ばれた日本の地方都市の現状である。しかし街から人がいなくなったわけではない。崩壊寸前の土木建築業、日系ブラジル人、タイ人をはじめとするアジア人、移民労働者たち。そこには過酷な状況のもとで懸命に生きている剥き出しの“生”の姿があった。街そのものをテーマに、実際にそこで生活している人々をキャスティングしてつくられたこの作品には、これまで日本映画ではあまり描かれる事の無かった移民たちの姿が描かれている。山梨県•甲府。不況の土木建築業、その中に日系ブラジル人•タイ人をはじめとする様々な外国人労働者たちがいる。HIPHOPグループ「アーミービレッジ」のクルー•猛は“派遣”で土方として働き始める。

このページのトップへ

『国道20号線』

国道20号線2007年/日本/
16mm→デジタル/77分
監督・共同脚本:富田克也/撮影・共同脚本:相沢虎之助/撮影:高野貴子/録音:石原寛郎/美術・小道具・スクリプト:川口明子/サウンドミキシング:山崎巌/スチール:堀田真由子
出演:伊藤仁、りみ、鷹野毅、村田進二、西村正秀、田中哲也、平沢絵里子、渡邊利己、藤沢一雅、久保田正仁、久保田公男、松本茂、中込明彦、寿徳、近藤寛、古屋暁美、中盾純、池田記代子、山下雄也


◆かつて暴走族だった主人公ヒサシは、同棲するジュンコとパチンコ通いの毎日。シンナーもやめられないていたらくで借金だけが嵩んでゆく。そんなヒサシに族時代からの友人で闇金屋の小澤が話を持ちかける。「なぁヒサシ、シンナーなんかやめて俺と一緒に飛ばねえか?」地方都市を走る国道。両脇を埋めるカラオケBOX、パチンコ店、消費者金融のATM、ドンキ・・・。現代の日本、とりわけ地方のありきたりの風景。ヒサシは夜の国道の灯が届かないその先に闇を見つけてしまった。宇宙のようにからっぽで、涯てのない闇のなかで繰り返されるありふれた事件、そしてかつて見たシンナーの幻覚の残像がヒサシを手招きする。「ほんで俺も行ってもいいの?ホント?ホントに?」

このページのトップへ


バンコクナイツ

バンコクナイツ2016年/日本・フランス・タイ・ラオス/DCP/182min
監督:富田克也/脚本:相澤虎之助、富田克也/撮影・照明:スタジオ石 (向山正洋、古 屋卓麿)/録音:山﨑巌、YOUNG-G DJs:SOI48、YOUNG-G

出演:スベンジャ・ポンコン、スナン・プーウィセット、チュティパー・ポンピアン、タンヤラ ット・コンプー、サリンヤー・ヨンサワット、伊藤仁、川瀬陽太

◆タイとラオス国境の街ノンカーイに住む大家族を支えるため、首都バンコクで働くラックは、昔の恋人オザワと5年ぶりに偶然再会する。元自衛隊員のオザワは、日本を捨てバンコクで根無し草のように暮らしていた。ラックはいまや店のナンバー1。一方のオザワはネットゲームで小銭を稼ぐ沈没組。ラックに会うには金がいった。そんな折、オザワはかつての上官にラオスでの不動産調査を依頼される。種違いの弟、妹、そして実母との問題を抱えていたラックもまたオザワに告げる。「私の故郷ノンカーイまで一緒に帰ろう」。かくして、いくつもの想いを胸に秘めたラックとオザワは、バンコクを逃れるように、ノンカーイへと向かうことになったが…。古来、国境紛争に翻弄され続けたイサーン。物語はその雄大な“イサーンの森”の闇の奥へ、そしてラオスへと、かつてインドシナを深く抉ったベトナム戦争の癒えぬ傷を映しはじめる。このページのトップへ

入場料金

前売券

前売1回券1,200円/前売3回券3,000円
※前売券は、劇場窓口のみの販売。

当日券

一般1,500円/学生・シニア1,100円/会員1,000円
当日3回券3,600円/会員3回券2,700円 

※ご入場は各回10分前より整理番号順となりますので、本前売券も受付にて入場券とお引き換え下さい。
整理番号付き入場券は1週間前より窓口にて発行いたしております。

スケジュール

スケジュール

Copyright2019,Cinenouveau,All right reserved