『バンコクナイツ』&空族特集

京マチ子略歴
◆1924年(大正13年)3月25日、(シネ・ヌーヴォ近くの)大阪市港区八幡屋町生まれ。大阪松竹少女歌劇団(現・OSK日本歌劇団)で娘役スターとして活躍後、1949年大映に入社、同年『痴人の愛』で一躍注目される。翌50年、黒澤明監督『羅生門』に起用、戦後だからこそ表現できる新たな女性像を、ダンスで鍛えた体で見事に体現した。また翌年主演した『偽れる盛装』で毎日映画コンクール女優賞を受賞、大女優としての地位を決定付けた。更に『羅生門』がヴェネチア国際映画祭グランプリ(サン・マルコ金獅子賞)を受賞し、国際的にもその名が知られるようになる。溝口健二監督『雨月物語』ではヴェネチア国際映画祭サン・マルコ銀獅子賞(金獅子賞が該当なしのため、事実上のグランプリ)を、衣笠貞之助監督『地獄門』ではカンヌ国際映画祭グランプリを立て続けに受賞、“グランプリ女優”と呼ばれるようになる。56年には溝口健二監督の遺作『赤線地帯』に主演、翌57年、伊藤大輔監督『いとはん物語』では、心は美しいが不器量な醜女という難役を醜女メイクで挑み、切ない女心を繊細に演じて高い評価を受けた。59年、市川崑監督『鍵』はカンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。同年、小津安二郎監督が大映で唯一メガホンをとった『浮草』に主演、当時35歳にしてデビュー10年目、これまでのキャリアの集大成ともいえる成熟した圧巻の名演技を披露した。その後も『細雪』(59/島耕二)、『ぼんち』(60/市川崑)、『女の勲章』『婚期』(61/吉村公三郎)、『女の一生』(62/増村保造)、『女系家族』(63/三隅研次)など数々の作品に主演し、名実共に大映トップ女優として君臨し続けた。◆71年大映倒産後は次第に活動の拠点を舞台やテレビの世界に移していった。87年に紫綬褒章、94年には勲四等宝冠章を受章。また、2017年には日本アカデミー賞会長功労賞を受賞した。2019年(令和元年)3月から5月にかけて、デビュー70周年記念企画「京マチ子映画祭」をシネ・ヌーヴォで上映、32作品を一挙上映。その直後の5月12日に死去、享年95歳。

上映作品

国際映画祭を次々と制し、グランプリ女優と呼ばれた伝説の女優・京マチ子さん。シネ・ヌーヴォでは、KADOKAWAと共催し、今年3月23日〜5月3日の6週間をかけて「京マチ子映画祭」を開催。日本を代表する屈指の女優の映画祭として大好評をいただきました。しかし、映画祭が終了してまもなくの5月12日に突然の訃報が届きました。ここ九条は、京さんの生家に近いご当地。大阪が生んだ偉大な女優の死去を悼んで、映画祭で上映していない必見作から好評を得た作品など15本を追悼上映させていただきます。


『浅草の肌』

浅草の肌1950年/大映東京/白黒/1時間31分
監督・脚本:木村恵吾 原作:浜本浩 脚本:岸松雄 撮影: 相坂操一 美術: 柴田篤二 音楽:飯田三郎
出演:京マチ子、二本柳寛、藤間紫、利根はる恵、植村謙二郎、若杉須美子、由利恵子、清水将夫、伊沢一郎、飯田蝶子、菅井一郎、藤原釜足

♦浅草六区のレヴュー劇場「美銀座」。階段を降りてくる新参の踊子・京マチ子の「脚」の強烈なアップから始まり、続いて先輩ダンサーとの激しいキャットファイト、さらに愛した演出家の男への強烈な自己主張――京マチ子の眩いばかりの肉体美とふてぶてしさが炸裂する初期代表作。まるで「女豹」のような京に男が演出したのは「女豹」の踊り! いやー、凄い!!

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『羅生門』

羅生門1950年/大映京都/白黒/88分 ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞/アカデミー賞名誉賞(最優秀外国語映画賞)
監督・脚本:黒澤明 原作:芥川龍之介 脚本:橋本忍 撮影:宮川一夫 美術:松山崇 音楽:早坂文雄
出演:三船敏郎、京マチ子、志村喬、森雅之、千秋実、加東大介、上田吉二郎、本間文子

◆朽ち果てた壮大な羅生門の下で雨宿りをする旅法師と柚売りが、通りすがりの男に不思議な話を語り始める――盗賊が森で女を犯し、その夫を殺した。捕えられた盗賊、侍の妻、巫女の食い違う証言。真実とは何か…。日本映画史に渾然と輝く不条理劇の傑作。眉毛を剃った京マチ子の鬼気迫る演技に圧倒。本作だけに迫る『黒澤明と羅生門』(新潮社)が出版。

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『馬喰一代』

馬喰一代1951年/大映東京/白黒/113分
監督・脚本:木村恵吾 原作:中山正男 脚本:成澤昌茂 撮影:峰重義 美術:柴田篤二 音楽:早坂文雄
出演:三船敏郎、京マチ子、志村喬、市川春代、菅井一郎、左卜全、杉狂兒、潮万太郎、星光、小杉義男、浦辺粂子

◆昭和初期、北海道・北見の大高原を舞台とした父と息子を描く“もうひとつの「無法松の一生」”。「北海の虎」の異名をとる乱暴者の馬喰(三船)が、ひとり息子を男手ひとつで育てあげる文芸巨編。京マチ子は、荒っぽい馬喰に一途に想いをよせる小料理の酌婦を熱演。男たちの荒々しい生きざまの中で凛とした美しさをたたえる京マチ子は必見。

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『偽れる盛装』

偽れる盛装1951年/大映京都/白黒/103分
監督:吉村公三郎 脚本:新藤兼人 撮影:中井朝一 美術:水谷浩 音楽:伊福部昭
出演:京マチ子、藤田泰子、小林桂樹、柳恵美子、北河内妙子、牧千草、菅井一郎、進藤英太郎、河津清三郎


◆京都の花街・宮川町を舞台に、肉体を武器に人情にとらわれずドライに奔放に生きていくやり手の芸者(京)。一方、妹(藤田)は京都市観光課の事務員という地味な娘。対照的なふたりを描く“もうひとつの「祇園の姉妹」”。京の体当たり的演技は終始スクリーンに躍動し、毎日映画コンクール女優賞など女優としての地位を固めた初期代表作。キネマ旬報ベストテン第3位。

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『あにいもうと』

あにいもうと1953年/大映東京/白黒/87分 ※16mm
監督:成瀬巳喜男 原作:室生犀星 脚本:水木洋子 撮影:峰重義 美術:仲美喜雄 音楽:斎藤一郎
出演:京マチ子、森雅之、久我美子、山本礼三郎、浦辺粂子、船越英二、堀雄二、本間文子、潮万太郎、宮嶋健一

◆肉親愛を描く室生犀星の短編小説を、成瀬巳喜男が映画化した文芸映画の傑作。荒っぽい性格だが妹への愛は人一倍の兄(森)と、東京に出たものの、年下の学生の子を孕んで実家に帰ってきた妹(京)との深い兄妹愛の世界を描く。森と京による兄妹の激しい罵倒、つかみ合いの喧嘩は映画史に残る名シーン。文芸映画に相応しい格調高い京のエロティシズムが光る。

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『雨月物語』4K復元版

『雨月物語』4K復元版1953年/大映京都/白黒/97分
監督:溝口健二 原作:上田秋成 脚本:川口松太郎 依田義賢 撮影:宮川一夫 美術:伊藤熹朔 音楽:早坂文雄
出演:京マチ子、田中絹代、森雅之、水戸光子、小澤榮(小沢栄太郎)、青山杉作、羅門光三郎、香川良介、上田吉二郎、南部彰三


◆圧巻の映像美で日本映画史に語り継がれる、巨匠・溝口健二の名作。『羅生門』『地獄門』に続き、ヨーロッパでヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞。いずれにも出演した京は、国際派グランプリ女優と呼ばれた。戦国の世に、町に出た陶工(森)が姫君(京)にいざなわれる朽木屋敷の怪奇幻想の世界は、類いまれなる幽玄さをみせ、世界の映像作家に影響を与えた。

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『楊貴妃』

楊貴妃1955年/大映東京/カラー/98分
監督:溝口健二 脚本:陶秦、川口松太郎、依田義賢、成沢昌茂 撮影:杉山公平 美術:水谷浩 音楽:早坂文雄 助監督:増村保造
出演/京マチ子、森雅之、山村聰、小澤榮(小沢栄太郎)、山形勲、南田洋子、霧立のぼる、阿井美千子、進藤英太郎、杉村春子、村瀬幸子

♦大映と香港のショウ・ブラザース社との合作による溝口健二監督初のカラー作品。唐王朝の玄宗皇帝の妃となった楊貴妃の半生を描くメロドラマ超大作。豪華絢爛の宮廷を舞台に、溝口は美術・衣装に慎重な歴史考証を重ねながら、一方では史実にとらわれない皇帝と楊貴妃の愛を描き、美しい情感溢れる大作を創り出した。絶世の美女・楊貴妃に扮した京の美しさ!

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『地獄花』

地獄花1957年/大映京都/カラー/99分
監督・脚本:伊藤大輔 原作:室生犀星 撮影:中川芳久 美術:西岡善信 音楽:伊福部昭 照明:中岡源権
出演:鶴田浩二、京マチ子、市川和子、山村聡、南左斗子、舟木洋一、小堀明男、石黒達也、柳永二郎、三好栄子、水原浩一

◆大映のビスタビジョン色彩映画第一作。戦乱の世を舞台に、野性的な美女(京)とその魅力に惹きよせられる男たちとの愛憎を描く時代劇大作。名匠・伊藤大輔がアメリカ西部劇を思わせるダイナミズムを表現し、大自然や壮大なセットを背景にした美しい場面やスペクタクルシーンの数々が映えわたる。京の体当たりの熱演がビスタ画面に躍動する!

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『夜の蝶』

夜の蝶1957年/大映東京/カラー/92分
監督:吉村公三郎 原作:川口松太郎 脚本:田中澄江 撮影:宮川一夫 美術:間野重雄 音楽:池野成
出演:京マチ子、山本富士子、穂高のり子、船越英二山村聰、小沢栄太郎、芥川比呂志

◆吉村公三郎の『夜の河』で一躍大スターとなった山本富士子が、先輩である京マチ子と、夜の銀座を舞台に女の火花を散らした傑作。実在した二人のマダムをモデルに、両方の店を贔屓にしていた川口が書いた原作を吉村が映画化した大ヒット作。“空飛ぶマダム”と呼ばれた京都の芸妓出身のマダムを山本、貫禄たっぷりの銀座の老舗マダムを京マチ子が名演。

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『穴』

穴1957年/大映東京/白黒/102分
監督:市川崑 脚本:久里子亭 撮影:小林節雄 美術:下河原友雄 音楽:芥川也寸志
出演:京マチ子、船越英二、山村聰、菅原謙二、石井竜一、石原慎太郎、北林谷栄、川上康子、潮万太郎、見明凡太朗、日高澄子、浜村純


◆警察の汚職事件を記事にし、クビとなった美人記者(京)。自ら失踪事件を起こしてルポを書くことになるが、思わぬところで横領事件に巻き込まれ…。コメディエンヌ・京マチ子が大活躍! 洒脱な演出が効いたロマンティック・スリラー。ミステリー小説の愛好家でもある市川崑が久里子亭名で脚本。とぼけた味の犯罪コメディで、京マチ子の七変化が楽しい。

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『大阪の女』

大阪の女1958年/大映東京/白黒/104分
監督:衣笠貞之助 原作:八住利雄 脚本:衣笠貞之助、相良準 撮影:渡辺公夫 美術:柴田篤二 音楽:斎藤一郎
出演:京マチ子、中村鴈治郎、船越英二、高松英郎、小夜福子、角梨枝子、小野道子、山茶花究、芦乃家雁玉、丹阿弥谷津子、賀原夏子、ミス・ハワイ


◆戦後、大阪の焼け残りにできた上方落語や漫才芸人たちの「芸人村」“てんのじ村”を舞台に描く、底抜けにお人よしの浪花女の一代記。大映カラーがとらえた大阪の歓楽街のにぎわいや、名優たちの芸が見もの。大挙出演の関西喜劇人にも要注目の名篇。京は、元芸人の父親(鴈治郎)の面倒を見る娘。大阪出身の京の見事なはまり役、そして無垢なる演技に拍手!

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『浮草』4K復元版

穴1959年/大映東京/カラー/119分
監督・脚本:小津安二郎 脚本:野田高梧 撮影:宮川一夫 美術:下河原友雄 音楽:斉藤高順
出演:中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、野添ひとみ、笠智衆、浦辺粂子、三井弘次、田中春男、杉村春子、高橋とよ


◆志摩半島の漁村を舞台に、旅回り一座の座長(鴈治郎)とその恋人(京)、劇団員(若尾)、一膳飯屋の母子(杉村・川口)など様々な人間が織りなす心の交流と人生の機微を、巨匠・小津安二郎が格調高く描いた感動作。大雨の中、路地を挟んで軒下で罵り合う鴈治郎と京が激情する名シーン、そして唯一の小津作品となった宮川一夫の躍動感溢れるカメラも素晴らしい。

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『細雪』

細雪1959年/大映東京/カラー/105分
監督:島耕二 原作:谷崎潤一郎 脚本:八住利雄 撮影:小原譲治 美術:柴田篤二 音楽:大森盛太郎
出演:京マチ子、山本富士子、叶順子、轟夕起子、根上淳、川崎敬三、菅原謙二、北原義郎、船越英二、、信欣三、山茶花究


◆谷崎潤一郎の名作「細雪」二度目の映画化。大阪の船場で古い暖簾を守る蒔岡家の四姉妹がたどるそれぞれの運命を、大映オールスターの華麗なる競演で描いた文芸大作。京マチ子が次女幸子、山本富士子が三女雪子を演じた。本映画化にあたり、時代設定を戦後に置き換えて脚色した、鉄砲水など原作の山場はキチンと踏襲。芦屋ロケも見どころ。

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『小太刀を使う女』

小太刀を使う女1961年/大映京都/カラー/81分
監督:池広一夫 原作:村上元三 脚本:依田義賢 撮影:本多省三 美術:西岡善信 音楽:斎藤一郎
出演:京マチ子、中村玉緒、小林勝彦、小桜純子、阿井美千子、中村豊、船越英二、石黒達也、南部彰三、水原浩一


◆西南の役を背景に、薩摩軍の進攻に立ち向かっていった旧臼杵藩の士族と女たちの運命を描く女性時代劇。戦前に、丸根賛太郎が映画化した村上元三原作を、同じ脚本で池広一夫がリメイク。元武家の娘・律、その弟に嫁いだ商家の娘・おたか。初代水谷八重子が演じた律を京が演じ、月丘夢路が演じたおたかには中村玉緒。対照的な二人の女の生き様が見物。

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『金環蝕』

金環蝕1975年/大映映画/カラー/155分
監督:山本薩夫 原作:石川達三 脚本:田坂啓 撮影:小林節雄 美術:間野重雄 音楽:佐藤勝
出演:仲代達矢、宇野重吉、三國連太郎、西村晃、山本学、京マチ子、中村玉緒、北村和夫、大滝秀治、北村和夫、中谷一郎、久米明、高橋悦史、峰岸徹、永井智雄、神山繁、内藤武敏、根上淳、鈴木瑞穂、前田武彦


◆汚職事件となった九頭竜川ダム落札事件をもとに描いた石川達三原作を、山本薩夫が映画化した骨太な政治エンターテイメント超大作。政財界の汚職の裏で自殺者が出るなど、今のモリカケ問題につながる闇を描く。京は首相夫人を演じ、彼女の名刺が首相の意向として政界を動かすなど、まるで今と二重写し! 『新聞記者』だけではない、日本にはこんな映画もあったのだ!

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入場料金

前売券

前売1回券1,200円/前売3回券3,000円
※前売券は、劇場窓口、チケットぴあ、セブンイレブン、ファミリーマート(以上Pコード:467-841)他にて好評発売中!

当日券

一般1,500円/学生・シニア1,100円/会員1,000円
当日3回券3,600円/シニア3回券3,000円/会員3回券2,700円 

※ご入場は各回10分前より整理番号順となりますので、本前売券も受付にて入場券とお引き換え下さい。
整理番号付き入場券は1週間前より窓口にて発行いたしております。


イベント

9/22(日)14:05『大阪の女』上映後トーク   ゲスト:上野昂志さん(映画評論家・批評家)

スケジュール

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