名もなき歌

2019年/ペルー=スペイン=アメリカ/97分
◎監督・脚本・製作:メリーナ・レオン◎撮影監督:インティ・ブリオネス◎音楽:パウチ・ササキ◎出演:パメラ・メンドーサ、ルシオ・ロハス、トミー・パラッガ、マイコル・エルナンデス

公式HP→http://namonaki.arc-films.co.jp/

1988年、ペルー。私は子どもを奪われた――
不条理な社会で、母親は奪われた我が子を探し、孤独な新聞記者は真実を追い求める。
名もなき歌

1988年、政情不安に揺れる南米ペルー。貧しい生活を送る先住民の女性、20才のヘオルヒナは、妊婦に無償医療を提供する財団の存在を知り、首都リマの小さなクリニックを受診する。数日後、陣痛が始まり、再度クリニックを訪れたへオルヒナは、無事女児を出産。しかし、その手に一度も我が子を抱くこともなく院外へ閉め出され、赤ん坊は何者かに奪い去られてしまう。夫と共に警察や裁判所に訴え出るが、有権者番号を持たない夫婦は取り合ってもらえない。新聞社に押しかけ、泣きながら窮状を訴えるヘオルヒナから事情を聞いた記者ペドロは、事件を追って、権力の背後に見え隠れする国際的な乳児売買組織の闇へと足を踏み入れるが―。

実際に起きた事件を基に作られたこの作品は、ペルー出身の女性監督メリーナ・レオンの長編デビュー作。2019年カンヌ映画祭・監督週間で注目を集め、以来世界十数ヶ国の映画祭において作品賞他32部門で受賞。2020年アカデミー賞・国際長編映画部門ではペルー代表に選ばれ、ノミネートは逸したものの、その抑制を利かせた演出スタイル、モノクロ×スタンダードの画面に際立つヴィジュアル・センスは、新たな才能の誕生を実感させる。
赤ん坊を奪われた母親の悲哀と絶望、そして、孤独な新聞記者が内に秘めた苦悩と使命感を描いたこの作品は、貧困と格差、人身売買、民族差別とジェンダー差別、全体主義とテロリズムといった社会問題をも浮き彫りにし、それらが今の時代においても何ら変わっていないことを静かに提示してみせた野心作だ。

〈上映スケジュール〉

◆上映スケジュールはこちらをご覧ください

 

〈鑑賞料金〉

一般1700円、学生・シニア1100円、会員1000円
オンラインチケットはこちら