イエジー・スコリモフスキ 「亡命」作家43年の軌跡

「亡命」から祖国への回帰へと至る43年間にスコリモフスキが発表した作品5本をセレクト! 1960年代半ば、ポーランド映画界の“新しい波”を代表する若手監督として躍り出たイエジー・スコリモフスキは、戦後世代の声を代弁する私小説的な題材選びと奇抜な視覚的アイディアに満ちた画面作りで、一躍国際的な注目を浴びる。
しかしソ連の衛星国の一つであった冷戦時代のポーランドにおいて、反体制的姿勢をほのめかす挑発的なスコリモフスキの作品は問題視され、それを不服とした作家は祖国を離れることを決意した。西側各国を渡り歩いて映画製作を続ける、苦難に満ちた人生のはじまり。今回の特集上映では、この「亡命」直前から祖国への回帰へと至る43年間にスコリモフスキが発表した作品五本をセレクト。
約半世紀にわたるスコリモフスキの流浪生活から生まれた作品たちは、舞台となる土地も出演者の国籍もそれぞれ違い、かつ内容的にも多様な主題を扱っている。けれども続けてこの五作品を観てみれば、時代と国籍の違いを超えて、そこにひとりの卓越した映画作家の特異な人生の軌跡と、多彩な作風に内在する一貫した個性的映画作法を見出すことができるだろう。

上映作品

出発

『出発』

1967年/ベルギー/91分
◎脚本:イエジー・スコリモフスキ、アンジェイ・コステンコ◎撮影:ウィリー・クラン◎編集:ボブ・ウェイド◎音楽:クシシュトフ・コメダ◎出演:ジャン=ピエール・レオー、カトリーヌ=イザベル・デュポール、 ジャクリーヌ・ビル、ヨーン・ドブリニーネ

ゴダール『男性・女性』(66)の主演俳優ジャン=ピ エール・レオーとカトリーヌ=イザベル・デュポール、 同作の撮影監督ウィリー・クラントを迎えて製作され た、ほろ苦く切ない青春映画。疾走するスポーツカー とクシシュトフ・コメダのメロディアスなジャズ、ブ リュッセルの街並みと瑞々しくとらえた画面と若い男 女の間に芽生える淡い恋心。ポーランド人監督の手 になるベルギー製“ヌーヴェル・ヴァーグ”映画とでも 呼ぶべき一編。

 
シャウト

『シャウト』

1978年/イギリス/86分
◎原作:ロバート・グレイヴズ◎脚本:マイケル・オースティン、イエジー・スコリモフスキ
◎撮影:マイク・モロイ◎編集:サイモン・ホランド◎音楽:アンソニー・バンクス、マイケル・ラザーフォード、ルパート・ハイン◎出演:アラン・ベイツ、スザンナ・ヨーク、ジョン・ハート、ティム・カリー

オーストラリア先住民から人を叫び殺す呪術の能力 を授けられた男が音楽家夫婦の日常に闖入し、彼ら の平穏な生活をかき乱し始める……ロバート・グレイ ヴズの短編小説に基づいて作り上げられた幻想映 画の怪作。逸早くドルビーシステムが本格的に採用 された映画の一本としても知られる。アラン・ベイツ、 スザンナ・ヨーク、ジョン・ハートら英国実力派俳優の 競演、編集のマジックを駆使して練り上げられた特異な叙述構造にも注目。

 
ムーンライティング

『ムーンライティング』

1982年/イギリス/97分
◎脚本:イエジー・スコリモフスキ◎撮影:トニー・ピアース・ロバーツ◎編集:バリー・ヴィンス◎音楽:スタンリー・マイヤーズ、ハンス・ジマー
◎出演:ジェレミー・アイアンズ、ユージーン・リビンスキ、 イジー・スタニスラフ、エウゲニウシュ・ハチュキェヴィチ

独立自由労組“連帯”の勢力拡大を弾圧するべく、 1981年12月にポーランド全土に戒厳令が敷かれた 事件にインスパイアされ、急遽作り上げられたサスペンスフルな傑作。ロンドンに不法滞在しながらとあ るフラットのリフォーム作業に明け暮れる四人のポー ランド人を描いた物語には、当時ロンドンに本格的 に移住したばかりだったスコリモフスキの実体験が 色濃く投影されている。ジェレミー・アイアンズにとっ て最初期の映画主演作。

 
アンナと過ごした4日間

『アンナと過ごした4日間』

2008年/フランス=ポーランド/87分
◎脚本:エヴァ・ビャスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ◎撮影:アダム・シコラ◎編集:ツェザリ・グゼシュク◎音楽:ミハウ・ロレンツ
◎出演:アルトゥル・ステランコ、キンガ・ブレイス、 イエジー・フェドロヴィチ、レドバト・クリンストラ、ヤクプ・スタノフスキ

1991年以来約17年のブランクを経て久々に作り上 げられた監督作。偶然レイプの現場を目撃したばかり に加害者の嫌疑をかけられ収監された内向的な中年 男レオンが、出所後に自宅の向かいに建つ看護婦寮 の部屋を覗き始める。そこにはレイプの犠牲者アンナが住んでいた。やがてレオンの行動は徐々にエスカレートしてゆき……時系列を錯綜させる入り組んだ語 り口を通じて浮かび上がる、なぜか観る者の胸を打つ 奇妙奇天烈な「愛」の物語。

 
エッセンシャル・キリング

『エッセンシャル・キリング』
2010年/ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー/83分
◎脚本:エヴァ・ピャスコフスカ、イエジー・スコリモフスキ◎撮影:アダム・シコラ◎編集:レーカ・レムヘニュイ◎音楽:パヴェウ・ミキェティン
◎出演:ヴィンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ、ザック・コーエン

三人の米兵を殺害したタリバン構成員が、米軍の追 跡をかわしつつ必死の逃走を続ける姿をひたすら見つめることに徹したシンプル極まりない異色作。主演は、スコリモフスキと同じく自作自演映画の製作で知られるマルチアーティストのヴィンセント・ギャロ。共 演は、監督の長年の友人ロマン・ポランスキーの夫人エマニュエル・セニエ。台詞をほぼ全面的に排除した大胆な作劇と、氷点下の雪原におけるギャロの捨て身のアクションは圧巻。


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鑑賞料金

前売1回券1500円、3回券3900円
※前売券は劇場窓口、チケットぴあ、セブンイレブン、サークスKサンクス(以上Pコード:465-732)他にて好評販売中!

■当日料金(作品によって当日料金が変わります。ご注意下さい。):
『出発』『ムーンライティング』『シャウト』 一般1800円、学生1500円、シニア1100円、会員1000円

『アンナと過ごした4日間』『エッセンシャル・キリング』 一般1300円、学生・シニア1100円、会員1000円
※連日朝より当日分の整理番号つき入場券の販売を開始します。ご入場は各回10〜15分前より整理番号順となりますので、前売券なども受付にて入場券とお引き換えください。

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