2/3(土)より開催の高峰秀子特集で2/4(日)〜2/10(土)に上映を予定していました『女の水鏡』は35mmプリントが著しく劣化していたため、上映不可と判断し、上映中止とさせていただきます。申し訳ありません。
代替作品は『我が家は楽し』(1951年/監督:中村登)になります。ご理解くださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
日本映画を代表する女優・高峰秀子。戦前・戦後から数々の名作に出演し、人々に感動と生きる希望を与え鼓舞し続けた屈指の名優。デコちゃんの愛称で親しまれ、山本嘉次郎、五所平之助、小津安二郎、清水宏など名監督の作品に次々出演し、子役から少女スター、青春スター、メロドラマ女優を経て、堂々たる演技派の大女優となった。とりわけ日本映画の黄金期に、成瀬巳喜男、木下惠介作品のヒロインとして日本映画史に残る『浮雲』『二十四の瞳』など幾多の名作を残した。シリアスから喜劇まで幅広い役どころを演じ、人気・実力ともに日本が誇る映画スターとして活躍。晩年はエッセイストとして数々の著書を残しつつ、2010年12月28日、86歳で永眠。2024年の生誕百年を記念して、代表作19本を一挙上映!!
●高峰秀子略歴
1924年3月27日函館市に生まれる。5歳の頃に実母が死去、叔母志げの養女となり上京。養父と松竹蒲田撮影所に見学に行くが、偶然この日は『母』(29)のオーディションの日で、監督の野村芳亭より大抜擢される。映画デビュー作の『母』は大ヒットし、天才子役として人気を集める(芸名の高峰秀子は志げが活弁士として活躍していた時の姓で、秀子と命名したのも志げ)。その後も、小津安二郎『東京の合唱』(31)、清水宏『情熱』(32)、五所平之助『不如帰』(同)など数多くの名匠の作品に出演。37年に東宝に移籍。山本嘉次郎『綴方教室』(38)と『馬』(41)は少女期の代表作となる。「デコちゃん」の愛称と明るいキャラクターで戦時下でも娯楽作品が多かった。戦後の東宝争議では、大河内傳次郎、長谷川一夫、原節子、山田五十鈴らと「十人の旗の会」を結成し、その後新東宝に移籍。阿部豊『細雪』(50)、小津安二郎『宗方姉妹』(同)に主演。『細雪』の原作者・谷崎潤一郎や画家の梅原龍三郎らと親交を育む。50年フリーとなる。51年、日本初のカラー作品『カルメン故郷に帰る』(木下惠介)に出演、以降木下惠介作品にとって重要な俳優となる。同年プライベートで半年間フランスに留学する。翌年帰国後、五所平之助『朝の波紋』、成瀬巳喜男『稲妻』と傑作に出演。53年に五社協定が結ばれるが、フリーであることからどこにも拘束されず数々の映画会社の作品に出演し、日本映画の黄金時代に各社の名監督の作品に出演し、大車輪の活躍を見せる。54年には国民映画とも呼ばれ、日本中を涙で包み込んだ『二十四の瞳』、続いて『女の園』に出演。いずれも木下惠介の傑作でキネマ旬報ベストテン1位2位となり、高峰も女優賞を独占した。人気と実力を兼ね備えた押しも押されもせぬ映画スターとなる。翌55年には日本のメロドラマ史上に燦然と輝く傑作『浮雲』(成瀬巳喜男)に出演。その絶頂期に木下組の助監督だった松山善三と結婚。その後もトップ女優として企画を選びながら数々の傑作・話題作に出演。とりわけ木下惠介と成瀬巳喜男作品には競うように出演(木下作品は13本、成瀬作品では17本に出演)。61年には夫・松山善三の監督デビュー作『名もなく貧しく美しく』に出演。79年木下惠介『衝動殺人 息子よ』の撮影中に女優廃業を宣言し引退。生涯の映画出演本数は300本を超える。映画賞受賞数は日本映画界最多。文筆にも優れた才能を発揮し、後年エッセイストとして活躍した。自伝『私の渡世日記』は日本エッセイストクラブ賞を受賞。2021年には中国語版が刊行された。2010年12月28日、86歳で永眠。
上映作品
昨日消えた男
1941年/89分/モノクロ/スタンダード/東京映画/35mm
◎監督:マキノ正博◎脚本:小國英雄◎撮影:伊藤武夫◎照明:藤林甲◎録音:安惠重遠◎美術:樋野正雄◎音楽:鈴木静一
◎出演:長谷川一夫、山田五十鈴、高峰秀子、徳川夢声、江川宇禮雄、川田義雄、鳥羽陽之助、清川虹子、 清川莊司、進藤英太郎 、鬼頭善一郎
◆貧乏長屋のケチで嫌われ者の大家が殺された。長屋の住人全員が疑われ、高峰も借金苦の浪人の娘として容疑者リストに。遊び人文吉(長谷川)はさっそく事件解決へと乗りだすが、実は文吉こそ…。マキノ正博が小國英雄の脚本で撮ったサスペンス時代劇の大傑作。長谷川と住民の芸者・山田のコミカルな掛け合いも最高!
虹を抱く処女
1948年/87分/モノクロ/スタンダード/新東宝/デジタル
◎監督:佐伯清◎脚本:八田尚之◎撮影:小原譲治◎照明:藤林甲◎録音:神谷正和◎美術:松山崇◎音楽:早坂文雄
◎出演:高峰秀子、上原謙、若原雅夫、田中春男、宇野重吉、三村秀子、寺島新、水原久美子、落合富子、 香山みち子、一の宮あつ子
◆看護師のあき子(高峰)と結核を患う作曲家の日高(上原)は互いに想いを寄せているが、病いや生活に追われて将来の希望が持てないでいた。そんな二人の前に一人の青年が現れる…。41歳で急逝した黒澤明の盟友で映画音楽の巨星・早坂文雄をモデルにした恋愛映画。高峰は二人の男の間で揺れる繊細な感情を透明感たっぷりに名演。
争う美人姉妹(改題前:処女宝)
1950年/67分/モノクロ/スタンダード/新東宝/デジタル
◎監督:島耕二◎原作:菊池寛◎脚本:野村浩将◎撮影:三村明◎照明:大沼正喜◎録音:神谷正和◎美術:河野鷹思◎音楽:斎藤一郎
◎出演:高峰秀子、上原謙、高杉早苗、宮川玲子、吉川満子、田中春男、山村聰、汐見洋、宮川玲子、青山五郎、若月輝夫、鳥羽陽之助、水原通子、江戸川蘭子 、清川玉枝
◆活発な姉・真弓(高杉)と柔和な妹・真金(高峰)。真弓は売れない劇作家の船田(上原)と交際しながらも、病床の父が進める富豪で放蕩者の塙(山村)の豪奢な生活の魅力に負け結婚する。真金は姉に捨てられた船田を慰めるうちに愛情が芽生え結婚するが…。菊池寛原作をもとに、一人の男に寄せる姉妹の愛情を描くメロドラマ。
宗方姉妹 むねかたきょうだい
1950年/114分/モノクロ/スタンダード/新東宝/35mm
◎監督・脚本:小津安二郎◎原作:大佛次郎◎脚本:野田高梧◎撮影:小原讓治◎照明:藤林甲◎録音:神谷正和◎美術:下河原友雄◎音楽:齋藤一郎
◎出演:田中絹代、高峰秀子、上原謙、高杉早苗、笠智衆、山村聰、堀雄二、河村黎吉、齋藤達雄、藤原釜足、 坪内美子、一の宮あつ子、堀越節子、千石規子
◆生誕120年を迎えた小津安二郎。小津が松竹を離れ、はじめて他社で製作。高峰はサイレントの子役時代以来の小津作品。死期を悟った父(笠)、古風な姉(田中)と勝ち気な妹(高峰)、姉を疑う病弱な夫(山村)と昔の恋(山村)など多彩な人間関係を描き、ドラマチックに展開する小津の異色作。姉妹の対比と変わりゆく家庭の姿。
細雪
1950年/145分/モノクロ/スタンダード/新東宝/デジタル
◎監督:阿部豊 ◎原作:谷崎潤一郎 ◎脚本:八住利雄 ◎撮影:山中晋 ◎照明:佐藤快哉◎録音: 村山絢二◎美術:進藤誠吾◎音楽:早坂文雄
◎出演:花井蘭子、轟夕起子、山根寿子、高峰秀子、田崎潤、伊志井寛、河津清三郎、田中春男、香川京子、浦辺粂子、 鳥羽陽之助
◆三度映画化された谷崎潤一郎の同名作の初の映画化。昭和初期、大阪の旧家の四姉妹の数年間を美しい四季の移り変わりを織り交ぜて描く文芸作品。四大人気スターの競演も見もので、高峰は末娘・妙子を演じた。洪水のシーンには特撮が使われ、豪華な衣装や小道具など、当時としては破格の製作費も話題となった。
『我が家は楽し』 ※『女の水鏡』から変更となりました。
1951年/91分/モノクロ/スタンダード松竹/16mm
◎監督:中村登◎原案・脚本:田中澄江◎脚本:柳井隆雄◎撮影:厚田雄春◎音楽:黛敏郎
◎出演:山田五十鈴、高峰秀子、岸惠子、笠智衆、佐田啓二
◆植村家は貧しいながらも明るい家庭。ある日、父の孝作(笠)が勤続25年を迎え、会社から表彰され金一封をもらえることに。妻のなみ子(山田)と子どもたちに欲しいものを買ってやれると大喜びするが、表彰式の帰りにすられてしまう。高峰は両親の苦労に心を痛める画家志望の長女・朋子を好演。岸惠子のデビュー作で中村登監督の出世作となった1本。
朝の波紋
1952年/104分/モノクロ/スタンダード/新東宝/デジタル
◎監督:五所平之助 ◎原作:高見順 ◎脚本:館岡謙之助 ◎撮影:三浦光雄◎照明:佐藤快哉◎録音:鈴木勇 ◎美術:進藤誠吾 ◎音楽:斎藤一郎
◎出演:高峰秀子、汐見洋、瀧花久子、岡本克政、三宅邦子、池部良浦辺粂子 、岡田英次、香川京子、斎藤達雄、田中春男、上原謙
◆英語が堪能な貿易会社の社長秘書(高峰)が、ライバル会社の営業マン(池部)と契約を争うラブコメディ。高峰にとっては半年間パリで暮らした後の復帰作であり、流暢な英語、きびきびした演技など、新しい時代の女性を好演。緑が輝く五月の朝、音もなく訪れた恋のよろこびと哀しみが波紋のように静かに広がって…。
稲妻
1952年/88分/モノクロ/スタンダード/大映/35mm
◎監督:成瀬巳喜男◎原作:林芙美子◎脚本:田中澄江◎撮影:峰重義◎照明:安藤真之助◎録音:西井憲一◎美術:仲美喜雄◎音楽:斎藤一郎
◎出演:高峰秀子、三浦光子、村田知英子、丸山修、浦辺粂子、植村謙二郎、小沢栄、中北千枝子、根上淳、香川京子、杉丘毬子、滝花久子、竹久夢子、高品格
◆長男三姉妹全て父親の違う母子家庭。兄妹たちのそれぞれの生きざまを、家族からの自立を試みるバスガイドの末娘(高峰)の視点で描く。高峰が出演を熱望した林芙美子原作の映画化で、生きることの寂寥感が胸に迫る成瀬巳喜男の演出が絶品。成瀬自身「代表作は『浮雲』でなく『稲妻』」と語る傑作のひとつ。稲妻のシーンの見事さ!
二十四の瞳
1954年/156分/スタンダード/松竹/35mm
◎監督・脚本:木下惠介◎原作:壺井栄◎撮影:楠田浩之◎照明:豊島良三◎録音:大野久男◎美術:中村公彦◎音楽:木下忠司
◎出演:高峰秀子、月丘夢路、田村高広、小林トシ子、笠智衆、井川邦子、夏川静江、 浦辺粂子、清川虹子、浪花千栄子、天本英世、明石潮、高橋トヨ子
◆瀬戸内海に浮かぶ小豆島を舞台に、女性教師と12人の子供たちの交流を抒情的に綴った国民的傑作。高峰演じる大石先生は理想の教師像として国民的な憧れの的となった。戦前戦後の時代を背景に、戦争に対する怒りを庶民の視点で清く描いた映画史に残る不朽の名作。助監督だった松山善三が高峰に交際を申込み、翌年結婚に至った記念作。
「春情鳩の街」より 渡り鳥いつ帰る
1955年/128分/モノクロ/スタンダード/東京映画/35mm
◎監督:久松静児◎脚本:八住利雄◎撮影:高橋通夫、玉井正夫◎照明:今泉千仭◎録音:西尾昇◎美術:小島基司◎音楽:團伊玖磨
◎出演:高峰秀子、田中絹代、森繁久彌、岡田茉莉子、久慈あさみ、淡路惠子、水戸光子、 太刀川洋一、桂木洋子、織田政雄、 富田伴二郎、浦辺粂子、左ト全、藤原釜足
◆戦時中に妻子とはぐれた吉田伝吉(森繁)はおしげ(田中)が切り盛りする「藤村」の主人になる。赤線地帯を舞台にそこで働く女たちの悲喜こもごもの群像劇を森繁久彌と豪華女優陣がユーモラスかつ哀愁を帯びた演技で魅せる。高峰は恋愛と称して客の選り好みをするアプレ娘・街子を好演している。結婚後初の作品となった。
くちづけ
1955年/115分/モノクロ/スタンダード/東宝/35mm
〈第一話〉くちづけ〈第二話〉霧の中の少女〈第三話〉女同士
◎監督:〈第一話〉筧正典〈第二話〉鈴木英夫〈第三話〉成瀬巳喜男
◎原作:石坂洋次郎◎脚本:松山善三◎音楽:斎藤一郎◎撮影:山崎一雄◎照明:大沼正喜◎録音:下永尚◎美術:中古智◎音楽:斎藤一郎
◎出演:〈第一話〉青山京子、太刀川洋一〈第二話〉司葉子、中原ひとみ〈第三話〉高峰秀子、中村メイコ
◆〈第一話〉「くちづけ」、〈第二話〉「霧の中の少女」、〈第三話〉「女同士」の3話で構成された石坂洋次郎原作を豪華キャスト出演のオムニバス映画。高峰は〈第三話〉で医者の夫(上原)と看護師(中村)の仲を疑う妻・明子を演じた。倦怠期の夫婦の悶々とした日常とささやかな嫉妬の表現は成瀬・高峰コンビならでは。
流れる
1956年/117分/モノクロ/スタンダード/東宝/35mm
◎監督:成瀬巳喜男◎原作:幸田文◎脚本:田中澄江、井手俊郎◎撮影:玉井正夫◎照明:石井長四郎◎録音:三上長七郎◎◎美術:中古智◎音楽:齋藤一郎
◎出演:田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子、栗島すみ子、 中北千枝子、賀原夏子、宮口精二、加東大介、中村伸郎、仲谷昇
◆落ちぶれかかった柳橋の芸者置屋を舞台に、そこに集う女たちを女中(田中)の目を通して描く。消えゆく世界への挽歌を日本映画史に燦然と名を残す名女優たちが儚く美しく、しみじみとスクリーンに刻んだ成瀬巳喜男の傑作。名優の競演は、まさに日本映画女優史! 高峰は家業を嫌い、洋裁で身を立てようとする娘を堂々と現代的に演じた。
女が階段を上る時
1960年/111分/モノクロ/シネマスコープ/東宝/35mm
◎監督:成瀬巳喜男◎脚本:菊島隆三◎撮影:玉井正夫◎照明:石井長四郎、猪原一郎◎録音:藤好昌生、下永尚◎美術:中古智◎音楽:黛敏郎
◎出演:高峰秀子、森雅之、団令子、仲代達矢、中村鴈治郎、加東大介、小沢栄太郎、淡路恵子、山茶花究、多々良純、藤木悠、沢村貞子、 中北千枝子
◆戦後の復興から60年代を迎え、豊かに変貌する時代、高峰が銀座のバーのやとわれマダムを演じた作品で、人間のエゴや駆け引き、信頼と裏切り、打算渦巻く夜の世界に生きる女の矜持を描く。別格の美しさと演技力を披露した高峰は、衣装も担当。高峰が着こなすモダンな和服が流行した。女の哀しみが描く成瀬の円熟期の傑作。
永遠の人
1961年/107分/モノクロ/シネマスコープ/松竹/35mm
◎監督・脚本:木下惠介◎撮影:楠田浩之◎照明:豊島良三◎録音:大野久男◎美術:梅田千代夫◎音楽:木下忠司
◎出演:高峰秀子、佐田啓二、仲代達矢、石浜朗、乙羽信子、藤由紀子、野々村潔、加藤嘉、 永田靖、 浜田寅彦、田村正和、戸塚雅哉、東野英治郎
◆阿蘇の大自然を背景に、激動の「昭和」の四半世紀にわたる女の愛憎を圧巻のフラメンコに乗せて描く。高峰は運命に翻弄されながらも、横暴な夫への憎しみと引き裂かれた初恋の男への慕情を丹念に表現。木下惠介が高峰をあてがって書き下ろし、人を愛し許すことの大切さを描く傑作。米アカデミー賞外国語作品賞にノミネートされた。
二人で歩いた幾春秋
1962年/102分/モノクロ/シネマスコープ/松竹/35mm
◎監督・脚本:木下惠介◎撮影:楠田浩之◎照明:豊島良三◎録音:大野久男◎美術:浦山芳郎◎音楽:木下忠司
◎出演:高峰秀子、佐田啓二、倍賞千恵子、山本豊三、久我美子、野々村潔、 菅井きん、 小川虎之助、岸輝子、浜田寅彦、 三崎千恵子、 左右田一平
◆歌集「道路工夫の歌」を木下恵介が構成・脚色し、5年前の『喜びも悲しみも幾歳月』のスタッフ&キャストが再結集し、再び夫婦の絆の美しさと強さを年代記形式で描く。山梨の美しい大自然を舞台に、道路工夫として働く夫とそれを支える妻が、一人息子を大学生に育て上げるまでを戦後の日本の歩みとともに描く感動作。
放浪記
1962年/124分/モノクロ/シネマスコープ/宝塚映画/35mm
◎監督:成瀬巳喜男◎原作:林芙美子◎脚本:井手俊郎、田中澄江◎撮影:安本淳◎照明:石井長四郎◎録音:中川浩一◎美術:中古智◎音楽:古関裕而
◎出演:高峰秀子、宝田明、加東大介、小林桂樹、田中絹代、草笛光子、 仲谷昇、 伊藤雅之助、多々良純、 織田政雄、加藤武、丈野朋子
◆林芙美子の原作で高峰とともに『浮雲』など数々の名作を創り出した成瀬が、彼女の自伝を元に描き出した人間哀歌。才能豊かな女の波乱万丈な一代記を高峰は独自の観点でそれまでになかった芙美子像を創造した。貧しさと決別し成功を求める女の力強さには高峰の本領が発揮された。成瀬、高峰の二人にとって最も好きな作品だという。
女の座
1962年/111分/モノクロ/シネマスコープ/東宝/35mm
◎監督:成瀬巳喜男◎脚本:井手俊郎、松山善三◎撮影:安本淳◎照明:石井長四郎◎録音:藤縄正一◎美術:中古智◎音楽:斎藤一郎
◎出演:高峰秀子、司葉子、小林桂樹、星由里子、団令子、三橋達也、淡路恵子、草笛光子、 杉村春子、丹阿弥谷津子、三益愛子、宝田明、夏木陽介、加東大介、笠智衆
◆荒物屋「石川屋」の主人・金次郎(笠)の危篤をきっかけに大家族が集合。高峰演じる唯一の他人、長男の未亡人を軸にして兄弟姉妹の思惑が交錯していく。芸達者で個性豊かな豪華俳優陣の演技合戦もみどころの群像劇。夫の松山善三が脚本に参加している。小津の『東京物語』へのオマージュも感じられる成瀬の名編。
女の歴史
1963年/126分/モノクロ/シネマスコープ/東宝/35mm
◎監督:成瀬巳喜男◎脚本:笠原良三◎撮影:安本淳◎照明:石井長四郎◎録音:藤好昌生◎美術:中古智◎音楽:斉藤一郎
◎出演:高峰秀子、星由里子、草笛光子、仲代達矢、淡路恵子、山崎努、宝田明、賀原夏子、加東大介、藤原釜足、堺左千夫、中北千枝子、多々良純、児玉清
◆モーパッサンの『女の一生』から着想を得た笠原良三の脚本を成瀬が映画化。夫を戦争で亡くし、一人息子を苦労して女手ひとつで育てあげた女の一代記。戦争を経て高度経済成長にいたる昭和の激動の時代を生きた女・信子(高峰)の半生を回想形式で描く。高峰は信子の娘役から初老役を見事に演じきった。
衝動殺人 息子よ
1979年/130分/カラー/ヴィスタ/松竹/35mm
◎監督・脚本:木下惠介◎原作:佐藤秀郎◎脚本:砂田量爾◎撮影:岡崎宏三◎照明:佐久間丈彦◎録音:島田満◎美術:重田重盛◎音楽:木下忠司
◎出演:若山富三郎、高峰秀子、田中健、尾藤イサオ、大竹しのぶ、高岡健二、田村高廣、中村玉緒、近藤正臣、 藤田まこと、吉永小百合、加藤剛
◆町工場を経営する一家のひとり息子が不良少年に刺されて死んだ……。衝動殺人事件への怒りを胸に遺された家族の哀しみを訴える社会派エンタテインメントの傑作。理由なく息子を殺された父親(若山)と妻(高峰)の無念の想いは、やがて社会を動かしていく。撮影中に女優引退を表明し、本作が最後の映画出演作となった。
イベント
2/3(土)11:50の『細雪』上映後トークショー
ゲスト:斎藤明美さん(文筆家、松山善三・高峰秀子夫妻の養女)
入場料金
回数券
●当日3回券3,900円/シニア3回券3,300円/会員3回券3,000円
当日券
●一般1,500円/シニア1,200円/会員・学生1,100円/高校生以下1,000円
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。(※回数券のご購入、ご予約は窓口のみ)
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
オンラインチケットはこちら