寺山修司映画祭2023 映画監督◉寺山修司
映像の魔術師・寺山修司のシュールでアヴァンギャルドな映像作品一挙上映!
この度、寺山修司没後40年記念として、「映画監督◉寺山修司」を開催いたします。
寺山の魅力のひとつに、一瞬のうちに虜にされてしまう幻想的でカルトな映像作品が多数あります。
1960年に作られた「猫学Catllogy」以来、寺山修司の実験映画は、そのどれもが「映画は世界を網膜の中に灼きつけるのではなく、網膜から『世界をひきずり出す』のである」と宣言する、独特の危険な仕掛けに満ちています。また、長編映画『書を捨てよ町へ出よう』のラストで、何も映っていない白味のフィルムを映写し、「われわれの作る部分は終わったのだから、このあとは観客である諸君に作ってもらいたい」と投げかけた問いに対して、現在の観客に答えは出せるのだろうか? 『ローラ』では客席から立ち上がった男が実際にスクリーンに飛び込み、『審判』では、観客の打ち込む釘で埋め尽くされるスクリーン。寺山はたえずスクリーンの意味を問い、映像は観客を挑発しつづけます。
寺山修司の映像作品はカンヌ映画祭、ベルリン映画祭、エジンバラ映画祭をはじめ海外の主な映画祭に招待され数々の賞を受賞しています。幻想とエロチシズムに満ちた映像作品、イメージの錬金術、虚構と現実の地平線に築き上げられた寺山修司の絢爛たる王国……。ぜひこの機会にご鑑賞ください。今回の特集上映では、2017年に映画賞を総なめにした寺山原作『あゝ荒野』も特別上映いたします。
寺山修司(1935〜1983)
1935年12月10日、青森県生まれ。18歳で短歌研究新人賞特選を受賞し、歌壇に鮮烈にデビュー。20代前半で売れっ子シナリオライターとなる。67年には劇団、演劇実験室「天井棧敷」を結成、海外で高い評価を得る。詩、俳句、短歌、戯曲、映画、競馬・スポーツエッセイ、作詞、小説、評論など、その多彩な仕事から「職業寺山修司」と称される。1983年5月4日47歳で急逝。2023年、青森県三沢市にある寺山修司記念館を中心に没後40年事業を展開。
上映作品
A『書を捨てよ町へ出よう』
1971年/日本A・T・G/カラー/138分
●サンレモ映画祭グランプリ
製作・脚本・監督:寺山修司/撮影:鋤田正義/音楽:下田逸郎、クニ河内、J・A・シーザー他/編集:浦岡敬一/出演:佐々木英明、斉藤正治、新高恵子
◆つねに時代を挑発する“家出”の思想家、寺山初の長編映画。
寺山主宰の演劇実験室「天井棧敷」が全国各地で上演した同名ドキュメンタリー・ミュージカルの映画化。くずれかけたアパートをセットに使い、一家4人の役者が実際に合宿するなど、フィクションとドキュメントが織りなすハプニング前衛劇の手法を駆使。ハイティーンからの投稿詩をロックに作曲した歌が流れ、カメラは空を飛び地を転がる。「映画文法を守らないロックミュージカル映画を作ってみたかった」寺山の長編劇映画第1作。サンレモ映画祭グランプリ。音楽は下田逸郎ほか。
B『田園に死す』
1974年/日本A・T・G/カラー/102分
●カンヌ映画祭正式招待●ベナルマデナ映画祭審査員特別賞●パース映画祭招待●芸術祭奨励新人賞●文部省芸術選賞 脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/音楽:J・A・シーザー/美術:粟津潔/録音:木村勝英/編集:山地早智子/意匠:花輪和一/出演:八千草薫、春川ますみ、新高恵子、高野浩幸、菅寛太郎、原田芳雄、三上寛、木村功
◆恐山を舞台に、自歌集「田園に死す」にもとづいた自伝的作品。
歌集「田園に死す」をもとに書き下ろしたオリジナル脚本。青森県下北半島を舞台に、母殺し、家出、恐山、サーカス、山羊など、寺山的世界のモチーフをちりばめ、寺山にとって終生のテーマでもあった記憶について問いかける、「これは一人の青年の自叙伝の形式を借りた虚構である。われわれは歴史の呪縛から解放されるためには、なによりも先ず、個の記憶から自由にならなければならない」(寺山の「演出ノート」)と。カンヌ映画祭正式出品作品。芸術選奨新人賞。
C『さらば箱舟』
1984年/日本A・T・G/カラー/127分
●芸術祭大賞●カンヌ映画祭正式招待
脚本:寺山修司、岸田理生/監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/音楽:J・A・シーザー/美術:池谷仙克/装画:合田佐和子 /衣裳:山田勇男/出演:小川真由美、原田芳雄、新高けい子、高橋洋子、高橋ひとみ、石橋蓮司、若松武、天本英世、三上博史、山崎努、斎藤正治、松田政男、山﨑努
◆マルケスの「百年の孤独」をテキストに、虚構の歴史を描いた一大叙事詩、寺山修司の遺作
マルケスの「百年の孤独」をテキストに虚構の歴史を描いた寺山修司の遺作。架空の小さな村を舞台に、約1世紀にわたる一家の興亡を描く一大叙事詩。支配者と被支配者、共同体と外部社会、未開と文明といった様々な対立が、幻想とエロチシズムあふれる世界で進行する。消滅へと疾走する本作さながら、肝硬変に冒されていた寺山は、入院の要請を断ってロケ地沖縄での撮影を強行。2度の中断を経て、ときに現場に簡易ベッドを持ち込み、横になって演出した。生と死、時間と空間が錯綜する、寺山修司の集大成。カンヌ映画祭正式出品作品。芸術祭大賞。
D『上海異人娼館』
1981年/東宝東和(仏映画)/カラー/90分
●カンヌ映画祭特別上映
脚本・監督:寺山修司/原作:ポーリーヌ・レアージュ/撮影:鈴木達夫/音楽:J・A・シーザー/衣裳:カイジック・ウォン/装画:合田佐和子/編集:アンリ・コルビ/製作:アナトール・ドールマン/出演:イザベル・イリエ、クラウス・キンスキー、アリエル・ドンバール、ピーター、新高けい子、中村研一、山口小夜子、高橋ひとみ
◆ヨーロッパ的官能の世界を東洋の洗練された感性で描き、国際的評価を得た作品。P・レアージュの「O嬢の物語」を、20年代中国に置き換え映画化した耽美的作品。
E「『草迷宮』ほか」(合計96分)
『草迷宮』
1979年/カラー/仏映画/40分
原作:泉鏡花「草迷宮」より/監督:寺山修司/台本:寺山修司、岸田理生/撮影:鈴木達夫/音楽:J・A・シーザー/美術:山田勇男/挿画:花輪和一/助監督:相米慎二/製作:ピエール・ブロンベルジュ/コーディネーター:ヒロコ・ゴヴァース/製作担当:九條今日子/出演:三上博史、若松武、新高けい子、伊丹十三
◆泉鏡花の短篇小説を原作に、死んだ母親の口ずさんでいた手毬唄をさがして旅をする少年の物語。寺山映像美の最高峰。三上博史、衝撃のデビュー作。
『迷宮譚』
1975年/モノクロ調色/15分
●オーバーハウゼン実験映画祭銀賞●カンヌ映画祭監督週間招待
脚本・監督:寺山修司/撮影:福元文一/音楽:田中未知/編集:大島ともよ/助監督:森崎偏陸、浅井隆
出演:新高恵子、蘭妖子、佐々田孝司、大野進、田井中浪子、小竹信節
◆「カメラ万年筆」論もびっくり、「スクリーン=ドア」論を主張する映画。
『消しゴム』
1977年/カラー/22分
脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/撮影助手:栗田豊通、伊藤昭裕/音楽:J・A・シーザー/編集:池田幸子/ビデオ・オペレーター:堀池冬樹/出演:藤野節子、若松武、蘭妖子、渡辺直美、田中恵
◆消しゴムで消すことのできる映像の試み。
『一寸法師を記述する試み』
1977年/カラー/19分
脚本・監督:寺山修司/脚本:岸田理生/撮影:鈴木達夫/音楽:J・A・シーザー/美粧:蘭妖子/ビデオ・オペレーター:堀池冬樹/出演:日野利彦、矢口桃、篠崎拘
◆イメージした女優の肉体を一寸法師が縛りあげ、削り、穴をあける。
F「実験映画集1」(合計104分)
『青少年のための映画入門』
1974年/モノクロ/3分
脚本・監督:寺山修司/撮影:萩原朔美/選曲:寺山修司/製作:九條映子/出演:森崎偏陸、斉藤正治、佐々田孝司、A.V.サキノフ
◆「100Feet Film Festival」に出品された3台の映写機による3分間映画。
『疱瘡譚』
1975年/カラー/31分
●ベルリン映画祭特別上映●ベナルマデナ映画祭特別賞
脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/音楽:田中未知/助監督:森崎偏陸、浅井隆/出演:新高恵子、若松武、小野正子、中沢清、蘭妖子、徳野雅仁、小竹信節
◆イメージが疫病のように伝染していく、初めてビデオ合成を試みる。
『マルドロールの歌』
1977年/カラー/30分
●リール国際映画祭国際批評家賞
脚本・監督:寺山修司(ロートレアモン「マルドロールの歌」による)/撮影:鈴木達夫/音楽:鈴木昭男/製作:小西昭典/照明:磯貝重夫/出演:新高恵子、蘭妖子、矢口桃、大野進
◆ロートレアモン「マルドロールの歌」を映像の翻訳。読む映像の試み。
『ローラ』
1974年/カラー/12分
●ベルリン映画祭特別上映●ベナルマデナ映画祭特別賞
脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/音楽:田中未知/衣裳:蘭妖子/助監督:森崎偏陸/製作:鵜飼正英
出演:小野正子、蘭妖子、有栖川志栖子、(森崎偏陸)
◆映画館の客席からスクリーンのなかへ“出入りできる映画”。
『審判』
1975年/カラー/20分
●ベルリン映画祭特別上映●ベナルマデナ映画祭特別賞
脚本・監督:寺山修司/撮影:福元文一/音楽:J・A・シーザー/編集:大島ともよ/製作:九條映子、田中未知/出演:新高恵子、大野進、蘭妖子、パンチョ・目黒、矢口桃
◆釘で被われたイメージの釘学大全。観客によってスクリーンは釘の壁と化す。
G「実験映画集2」(合計104分)
『檻囚』
1962年/モノクロ調色/12分
脚本・監督:寺山修司/撮影:立木義浩/音楽:J・A・シーザー/編集:萩原朔美/共同演出:竹内健/出演:ミスター日本、立木義浩、大山デブコ、竹内健、石原祐子
◆撮影から2年後に編集された処女作。フィルムによるイメージのコラージュ。
『トマトケチャップ皇帝』
1971年/モノクロ調色/25分
●ツーロン映画祭審査員特別賞●カンヌ映画祭監督週間招待
脚本・監督:寺山修司/撮影:沢渡朔/選曲:寺山修司/編集:臼井高瀬/製作:田中未知/出演:新高恵子、アポロ太郎、樺マヤ、小野正子、出前持四郎、網走五郎、100人の子供たち
◆“子どもによる子どものための子どもの空想のユートピア”をつくる試み。
『ジャンケン戦争』
1971年/モノクロ調色/15分
脚本・監督:寺山修司/撮影:沢渡朔/選曲:寺山修司/編集:臼井高瀬/助監督:川喜多清正/製作:田中未知/出演:サルバドール・タリ、橋本光史
◆『トマトケチャップ皇帝』のなかの“ジャンケン”部分を独立させた作品。
『蝶服記』
1974年/カラー/15分
●カンヌ映画祭監督週間招待
脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/音楽:田中未知/編集:大島ともよ/制作:鵜飼正英/出演:新高恵子、斉藤正治、蘭妖子、佐々田季司、サルバドール・タリ、大野進
◆映写機とスクリーンの間を“さえぎる”目隠しされた映画。
『書見機』
1977年/モノクロ調色/22分
脚本・監督:寺山修司/撮影:福元文一/音楽:J・A・シーザー/編集:池田幸子/出演:新高恵子、サルバドール・タリ、大野進、矢口桃、日野利彦、若松武、末次章子、カトリーヌ
◆「レーモン・ルーセルを読む機械」に触発され、目と書物の距離を検証する。
『二頭女-影の映画』
1977年/モノクロ調色/15分
●ベルリン映画祭特別上映●ベナルマデナ映画祭特別賞
脚本・監督:寺山修司/撮影:鈴木達夫/音楽:J・A・シーザー/美粧:蘭妖子/助監督:森崎偏陸/編集:池田幸子/製作:九條映子/出演:新高恵子、パンチョ・目黒、中山孝子
◆影によって影を異化し批評する。不在の痕跡である影が実体と入れ替わる。
H・I『あゝ、荒野〈前篇・後篇〉』
2017年//日本/前篇:157分 後篇:147分/DCP
監督:岸善幸/脚本:港岳彦、岸善幸/原作:寺山修司/撮影:夏海光造/照明:高坂俊秀/録音:森英司/美術:磯見俊裕、徐賢先/音楽:岩代太郎
出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、木下あかり、モロ師岡、高橋和也、今野杏南、山田裕貴、河井青葉
◆寺山修司が遺した唯一の長編小説を映画化。人々の“心の荒野”を見つめた寺山の傑作が、時代設定を2021年の新宿に変更し新たな物語として生まれ変わった。ふとしたきっかけで出会った新次とバリカン。見た目も性格も対照的、だがともに孤独な二人は、ジムのトレーナー・片目とプロボクサーを目指す…。2017年、日本映画各賞に輝いた傑作。
イベント
6/11(日)13:20の回トークショー
ゲスト:森崎偏陸さん(元・天井桟敷/『ローラ』出演/寺山修司・義弟)
笹目浩之さん(テラヤマ・ワールド ポスターハリス・カンパニー代表)
スペシャルイベント
6/10(土)【実験映画集1】パフォーマンス上映
11:00/14:00(2回上映、各回入替)
会場:ビジュアルアーツ専門学校・大阪
料金:1800円均一(全席指定席)
チケットは5/12(金)よりシネ・ヌーヴォ窓口で販売(当日は10:30よりビジュアルアーツ専門学校で販売あり)
シネ・ヌーヴォ近所の新刊書店「MoMoBooks-モモブックス-」さんにて寺山修司関連書籍フェア開催中!
twitter→https://twitter.com/MoMoBooks321
〒550-0022 大阪府大阪市西区本田4-9-13
入場料金
当日券
一般1,800円/シニア1,200円/会員・学生1,100円/ 高校生以下1,000円
一般3回券3,900円/シニア3回券3,300円/会員3回券3,000円 ※ただし「実験映画集1」のみご使用できません。
〈レイト割引〉20:00〜以降の作品は、一般1,400円 ※「実験映画集1」のみ別料金
※ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券、前売券をお持ちの方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。新型コロナウイルス感染症予防対策のため座席を減らしていますので、出来るだけ事前のご購入をおすすめします。
満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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