手塚眞の映像美学
ヴィジュアリストして独自の美意識により映画を創り続ける異端の映画作家、手塚眞。
『白痴』『ばるぼら』など国際的に評価された劇場映画の一方で、ライフワークのように創られ続けている美学的な短編映画がある。
表現主義、神秘主義、シュールレアリスム、ミニマリスム、構造主義‥‥。
あたかも美術品のような作品は、「視る」ことの原初的な恍惚を促す。
実験映画の代表作品から新たにデジタル化されたフィルム作品、未公開作、そして最新作を作家自らが「black」「blue」「white」「red」の4つのプログラムにセレクト。
観られる機会の少ない貴重なアートフィルムの特集上映会。。
program Black 「地霊のダンス」
日本各地で、ダンス、映像、音楽をコラボレートさせる映画プロジェクト。
ドキュメンタリーでもドラマでもないアプローチで「土地」を描く表現的な連作。
OKUAGA
2016/デジタル/20分
出演:松崎友紀 撮影:辻健司 音楽:田口雅之
◆新潟県阿賀町で撮影された第1作は、ダンスとカメラの完全な即興による奇跡のアート。イメージフォーラム・フェスティバル2017招待作品。
HINOHARA
2022/デジタル/40分
出演:Nourah、芹川有里、他 撮影:辻健司 音楽:赤城忠治、他
◆東京都唯一の村、檜原村。首都の辺境を3年に渡り取材。古代の原風景から貴重な祭りの情景までをイメージ豊かにモンタージュしてゆく。時空や意味を映画的に超えたフリーフォームの作品。
TUNOHAZU
2021/デジタル/32分
出演:Cay 撮影:辻健司 音楽:PHONOGENIX
◆「角筈」とは新宿の古名。作者が愛し続ける街、新宿をモチーフに、ダンサーの肉体を通して描かれるフィジカルなコスモポリス論。イメージフォーラム・フェスティバル2022東アジアエクスペリメンタル・コンペティションノミネート作品。
program Blue 「視覚のエクスタシー」
四大元素をモチーフに連作されたシュールでありながら極めて映画的なアート・フィルム。
藤井春日のカメラ、橋本一子の音楽が繊細に絡み合い、至上の映画美学を構築している。
長編映画『白痴』(1999年)の姉妹編とも言える『実験映画』は手塚映画美学の集大成とも言える。
NUMANITE
1995/35mm→デジタル/23分
出演:田中久美子、宮本はるえ、神林茂典、
甲田益也子(ナレーション) 撮影:藤井春日 音楽:橋本一子
◆「水」をモチーフにした美しい幻想譚。沼の底に棲む姉妹とその恋人の物語は、時間と共に歪み始める。1996年ミュンヘン映画祭招待上映。クレルモン=フェラン映画祭招待上映。
NARAKUE
1997/16mm→デジタル/44分
出演:倉田和穂、櫻田宗久、小野みゆき、草刈正雄、ほか
撮影:藤井春日 音楽:橋本一子
◆「土」をモチーフにした地底の映画。映像による地獄巡りとも言える。50シーンを1カットに繋ぐ驚愕の構造が世界でも高く評価された。
実験映画
1999/35mm→デジタル/40分 ©KADOKAWA
出演:永瀬正敏、橋本麗香 撮影:藤井春日 音楽:橋本一子
◆「廃墟の中で一人の少女を映画に撮ること。期限は一週間。」謎の依頼から始まる映画撮影は想像を超えた展開を見せる。永瀬正敏、橋本麗香というプロの俳優を使い、実際に一週間で撮影された脚本の存在しない映画。
ダニエルとミランダ
1996/16mm→デジタル/5分)
アニメーション:手塚眞 音楽:橋本一子
◆手塚眞の手書きによるシンプルなアニメーションは『NUMANITE』の変奏曲。「もし絵コンテが動いたら」という発想から生まれたキュートな小品。
program White 「フィルムの神秘」
映画のコンポジションやメカニズム、テクニックを熟知した作者による紛れもない映画の冒険。
代表的な実験映画から最新のアートフィルムまで。
「Visualism」に貫かれた手塚眞の映画宇宙。映画を志す者は先ずこれを視るべきだ。
MODEL
1987/16mm→デジタル/10分)
出演:Evelyn 撮影・アニメーション:手塚眞 音楽:土屋昌巳
◆手塚眞実験映画の初期の代表作で、写真コピーを使ったアニメーション。上下に流れるシンプルな動きは次第に複雑なモンタージュを生み出してゆく。ミニマルアートのスタイルから発展してゆくイメージの多様性。1987年ケルン・フィルムセンター。1989年ロンドン映画祭。1990年香港映画祭。
燐
1993/16mm→デジタル/3分)
出演:えとうなおこ 撮影・アニメーション:手塚眞 音楽:大津真
◆燐の光のような仄かなイメージをフィルムに定着。日本的な美の表現である「余白」や「移ろい」を映画の中で描いた動く絵画。写真のコピーのみを素材に使い、繊細なディゾルブも全てコピー機の中で行っていることが興味深い。
MIND THE GAP
2020/デジタル/24分
出演:サヘル・ローズ、田中玲、ほか 撮影:辻健司 音楽:松岡政長
◆反復するフィルム・ノワール。スリリングに崩壊する構造の美学とユーモア。映画のメカニズムに踏み込んで破壊し、そこから新たな美学を組み上げる力作。
変容
2022/デジタル/40分
出演:蜂谷眞未、岡田帆乃佳 撮影:辻健司 音楽:橋本一子、田口雅之
◆世界は変容していくのだろうか?手塚眞の最新作は世界的なパンデミックの中でインスピレーションを得たシリーズ作品。表と裏の同時存在、多層的宇宙、ジェンダーを超えた存在といった現代的なテーマを孕んでいる。
program Red 「肉体の悪魔」
肉体と映像の過激なコラボレーションは、手塚眞が追求するもうひとつのテーマだ。
目眩く映像のタペストリーとして織りなされる夢幻的な世界は、映画のレクイエムなのか、あるいは次の時代へ捧げる愛のメッセージなのか。
PRELUDE
1988/16mm→デジタル/15分 ★デジタル版初公開
出演:今井萠、黒沢美香 撮影:円城寺哲郎 音楽:橋本一子
◆四大元素とテーマとした連作の第1作。「火」をテーマに、吹き上がる巨大な炎の中で亡きコンテンポラリー・ダンサーの奇才黒沢美嘉が舞う。息を呑む圧巻の映像と限りなく美しい橋本一子のピアノ。
謎 AENIGMA
2021/デジタル/46分
出演:植田せりな、Nourah、蜂谷眞未、峰のりえ、他 撮影:辻健司
音楽:GHOST HARMONIC
◆漢字一文字から想起されたビジョンを俳句のようにサンプルなエピソードに描いた短編集。「幽」「玄」「杳」の三つのエピソードはそれぞれ全く趣を異にする。手塚眞が近年取り組むミニマルで静的な映画の旅。
RESURRECTION
2024/デジタル/34分 ★最新作
出演:稲葉怜、望月寛斗、鈴木夢生、龍崎飛鳥、inesik、RITA GOLDIE 撮影:辻健司
音楽:橋本一子、中西優、田口雅之
◆ギリシャ神話の女神の名前からなる「Eros」「Adonis」「Persephone」の三部作。その名の如くエロスと地獄巡り、そして復活の祭典をアーティストとのコラボレーションにより創造。デジタルの時代にあえて「肉体」のパフォーマンスを使う意図とは。
入場料金
当日券
一般1900円、シニア1300円、会員・学生1200円、高校生以下、ハンディキャップ1000円
※招待券・回数券使用不可
※ご鑑賞の7日前から窓口とオンラインでチケットのご購入が可能です。ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券の方は窓口で指定席をお選びの上、開始時間の10〜15分前からご入場いただきます。
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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