柳町光男監督略歴

1945年、茨城県行方郡牛堀町出身。早稲田大学法学部卒業後、フリーで東映教育映画部などで仕事に付き、大和屋竺に師事。74年に自ら「群狼プロダクション」を設立し、当時最大規模の暴走族であったブラックエンペラーを追ったドキュメンタリー映画に着手。2年を経て76年に初監督作『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』を完成。自主上映から始まったが、評判を呼び、東映系で拡大ロードショー公開される。中上健次が評価したことがきっかけとなり、中上原作の『十九歳の地図』を映画化し、79年に劇映画デビュー。80年、カンヌ映画祭批評家週間の上映作に選出。82年の『さらば愛しき大地』は故郷・茨城鹿島地方を舞台に描き、キネ旬2位に選ばれるなど絶賛される。85年には中上健次のオリジナル脚本を得て、伝説の地・熊野を舞台に現実と神話が綾なす物語を見事な映像にまとめ絶賛される。後続の自主映画作家にも大きな示唆を与えた。90年には当時の世界的スター、ジョン・ローンを主演に迎え合作映画『チャイナシャドー』を監督。93年には中国人留学生や日本育ちの中国人少女が登場する『愛について、東京』を監督。その後、『旅するパオジャンフー』(95年)、早稲田大学客員教授を得て『カミュなんて知らない』(2005年)など。

上映作品

80年代、日本映画を駆け抜けた孤高の映画監督・柳町光男。1976年『ゴッド・スピード・ユー!』で鮮烈にデビュー。それは“暴走族=不良”と社会から切り捨てられてきた若者たちをひとつの青春像として鮮やかに描く傑作だった。続く初の劇映画『十九歳の地図』では、新聞配達をしながら予備校に通う地方出身者のやり場のない鬱屈した青春を見事に切り取り、3作目の『さらば愛しき大地』では鹿島工業地帯にある農家を舞台に、覚せい剤に溺れて自滅していく若者を描き、数々の映画賞を独占。30代にして日本映画の若き旗手となる。85年の中上健次脚本『火まつり』は、紀州・熊野を舞台に、自然信仰と日常の中に光る狂気を描き、日本映画史に残る傑作となった。リアリズムの中に溢れる叙情と、若者のいらだち、逆る熱いパッション、そして人間の魂の救済を描く柳町作品は、いまこそ必要とされる作品群!柳町監督をお迎えし、傑作選4作品を一挙上映!

 

十九歳の地図

十九歳の地図1979/109分/カラー/DCP/製作=プロダクション群狼
監督・脚本:柳町光男/原作:中上健次/撮影:榊原勝己/美術:平賀俊一/音楽:板橋文夫
出演:本間優二、蟹江敬三、沖山秀子、山谷初男、原知佐子、西塚肇、白川和子、友部正人、津山登志子、中島葵、川島めぐ、竹田かほり、中丸忠雄、清川虹子、柳家小三治、楠侑子

◆新聞販売所で下宿をする予備校生の19歳の青年が、日々の配達先で知る各家々の家庭構成、性格など書き止め、×印を付け、自分だけの地図を書き始める。見下されながらも見下しているような捻じれた自尊心が、日常の不満、偽善に鬱屈しながら、配達先で×印をつけた人たちに嫌がらせ電話をかけていく。主演本間優二が、夢も希望もなく鬱積する青年を見事に体現。また、卑小で無様な中年男の哀しみを演じた蟹江敬三。板橋文夫の音楽が切なく響く。
[1979年キネマ旬報ベストテン7位/1979年映画芸術ベストテン1位]

 

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ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR

ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR1976/91分/モノクロ/35mm/製作=プロダクション群狼
監督:柳町光男
出演:BLACK EMPERORのメンバー


◆暴走するバイクの群れ。夜を照らすヘッドライトとフルスロットルの排気音が鳴り響き駆け抜ける。「ブラックエンペラー」新宿支部のメンバーたちを追ったドキュメンタリーの傑作。暴走行為、交通機動隊との舌戦、集会、たまり場、親や仲間との日常を捉える。"暴走族=不良”というイメージはあれども、ここには血生臭さも暴力もなく、監督柳町光男の優しい眼差しが存在している。本作にインスピレーションを受け、同名バンド名のカナダのロックバンドがいる。

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さらば愛しき大地

さらば愛しき大地1982/138分/カラーDCP/製作=プロダクション群狼
監督・脚本:柳町光男/撮影:田村正毅/音楽:横田年昭/照明:佐藤譲/美術:大谷和正
出演:根津甚八、秋吉久美子、矢吹二朗、山口美也子、松山政路、小林稔侍、蟹江敬三 ほか

◆高度経済成長の最中、田園地帯に工場群が押し寄せる茨城県鹿島地方。農業と工業が渾然一体となる郊外都市を舞台に、農家の崩壊を描く。農家を継がずにダンプ運転手として家族を支える男が、息子の死を境に、家族を捨て、愛人と覚せい剤に溺れ、堕ちていく男の人生が狂気に満ち溢れる。主演を根津甚八、秋吉久美子が演じ、絶賛された。田園風景の美しさと対比する底なしの絶望感に圧倒される。
[1982年キネマ旬報ベストテン2位/第37回毎日映画コンクール撮影賞]

 

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火まつり

火まつり1985年/125分/カラー/35mm/製作:西武セゾングループ=シネセゾン=プロダクション群狼
監督:柳町光男/脚本:中上健次/撮影:田村正毅/音楽:武満徹/美術:木村威夫/録音:久保田幸雄
出演:北大路欣也、太地喜和子、中本良太、宮下順子、安岡力也、伊武雅刀、小鹿番、藤岡重慶、小林稔侍、左右田一平、菅井きん、中島葵、高瀬春奈、柳家小三治、蟹江敬三、森下愛子、三木のり平

◆実際に起こった熊野殺害事件をモデルに作家・中上健次の脚本を得て、紀州熊野の深い森と海を背景に木こりの男が自滅してゆく姿を描く。海中公園開発の土地買収が進む小さな漁村、達男(北大路)は都会から戻ってきたかつての恋人(太地)と再会し、人目もはばからず愛欲の日々に堕ちてゆく。神をも恐れぬ傲慢な達男の振る舞いは、やがて狂気をはらんでゆく・・・。熊野の森に息づく自然信仰を題材に撮り上げた“人と神の寓話”。
[1985年キネマ旬報ベストテン3位・主演男優賞/毎日映画コンクール脚本賞]

 

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イベント

4/23(土)『十九歳の地図』14:05の回上映後トークショー
ゲスト:柳町光男監督

 

入場料金

前売り券

前売り券(一般)1,100円/前売り券(会員)1,000円

当日券

一般1,500円/シニア1,200円/会員・学生1,100円/高校生以下1,000円

※ご鑑賞当日はオンライン予約の方は専用窓口で発券、当日券は受付窓口で指定席をお選びの上ご購入ください。開始時間の10〜15分前からご入場いただけます。
回数券なども受付にて座席指定券とお引き換え下さい。1週間前の午前10時よりオンライン&窓口でご購入いただけます(ただし、回数券は窓口のみ。)
<全席指定席>となります。満席の際はご入場出来ませんので、ご了承下さい。
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