グレース

2023年/ロシア/119分
◎監督・脚本:イリヤ・ポヴォロツキー◎撮影:ニコライ・ゼルドビッチ◎音楽:ザーカス・テプラ
◎出演:マリア・ルキャノヴァ、ゲラ・チタヴァ、エルダル・サフィカノフ、クセニャ・クテポワ

公式HP→https://grace.twentyfirstcity.com/

剥き出しの大地を舞台に描く、小さくも揺ぎない抵抗の奇跡
2023年カンヌ国際映画祭が唯一認めたロシア映画

ロシア南⻄部の辺境、乾いた風が吹きつけるコーカサスの険しい山道。無愛想な目をした16歳の娘と寡黙な父親。二人は移動映画館で野外上映をし、ポルノ映画の海賊版DVDを若者に密売しながら、錆びた赤いバンで北に向かって旅をしている。母親の不在が二人の緊張した関係に影を落とし、車内には重苦しい沈黙が漂っている。延々と続く荒涼とした風景と、そこで生きる人々との束の間の出会い。やがて辿り着くのは世界の果てのような荒廃した海辺の町。 娘は先の見えない放浪生活から抜け出すためにある行動に出るが…

2023年のカンヌ国際映画祭で上映された唯一のロシア映画として大きな反響を呼んだ本作。ソ連崩壊後から時間が止まったようなロシア辺境の停滞と不穏を背景に、思春期の不安を抱える少女の成⻑を追ったロードムービーである。 東欧の⺠話をもとにドキュメンタリー出身のロシアの俊英イリヤ・ポヴォロツキーが監督した。この映画が撮影されたのはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が本格化する少し前の2021年秋。直接的な描写はないが、映像の至る所に政治的な雲行きの悪さが感じられる。母親も友人もいない。自分を守る家も法もない。生ぬるい共感や哀れみに一切なびくことなく、彼女はただやり場のない感情を沸々と溜め込んでいく。剥き出しのロシアの大地を舞台にした小さくも揺るぎない抵抗の軌跡は、私たちにあっけないほど美しい余韻を残すだろう。

 

〈上映スケジュール〉

11/16(土)14:30

11/17(日)13:55

11/18(月)14:10

11/19(火)13:45

11/20(水)13:55

11/21(木)14:05

11/22(金)14:00

11/23(土)20:10

11/24(日)19:00

11/25(月)20:35

11/26(火)20:35

11/27(水)休映

11/28(木)20:35

11/29(金)20:40

11/30(土)〜12/6(金)10:30

12/7(土)以降もシネ・ヌーヴォXにて続映

 

〈鑑賞料金〉

一般1900円、シニア1300円、会員・学生1200円、高校生以下・ハンディキャップ1000円
オンラインチケットはこちら