N・P

2020年/日本・ベルギー/60分
◎監督:リサ・スピリアールト◎原作:吉本ばなな『N・P』(角川書店刊)◎楽曲提供::Asuna/Wolf Eyes/Stacks
◎出演:クララ・スピリアールト、川村美紀子、サールチェ・ヴァン=デ=ステーネ、宮村周志

公式HP→https://np-film.com/

あるのは熱い陽射し それから強力な不在感
私は夏そのものだったような気がするー

自殺した小説家と子どもたちをめぐる愛の物語が字幕とともに語られる現代の”サイレント映画”

第31回マルセイユ国際映画祭 国際コンペティション出品作品

 

物語は「N・P」という一冊の本から始まる。著者の高瀬皿男は48歳で自殺を遂げていた。97の短編からなるその小説に、未収録の98話目の存在が明かされる。その98話に描かれていたのは、実の娘に恋する男の話――。それを翻訳していた庄司もまた、自ら命を絶ってしまう。翻訳と原作とはどう関係するのか? 人生は、どこまでが決められた物語として演出されたフィクションなのか? そして、登場人物の間で起こる近親相姦的な相互作用の本質とは?吉本ばななの長編『N・P』を、ベルギーを拠点とする映像作家リサ・スピリアールトが映画化。

若さ  吉本ばなな

 私が「N・P」を書いたのは、「健康的ではない『キッチン』」を書きたかったからだったと記憶している。自分も若かった。毎晩いろんな人たちと飲み、遊び、そしてあてどなかった。恋人もいたし同棲もしていたのに、この道が穏やかな将来に続くなんて全然思えなかった。
 その中で「しがみつき合わない」人間関係があるということを、肌で知った気がする。
 リサさんはまるでこの小説の登場人物のような人だ。クララさんもそうだ。あてどない感じがする。川村さんもそうだ。この世に川村さん以上にリアルに翠を演じられる人はこれまでもこれからもいないと思う。翠という人物のすごいところは身体能力なのだ、と書いているときも思っていた。だからふつうの人の生活ができないのだ。
 少ない登場人物たちはみな、自分で言うのもなんだけど小説から出てきたような人たちで、乙彦なんて私の書いた人としか思えない。それもみなリサさんのあてどなさ、粘り強さ、イメージする力のすごさなのだろう。
 よくぞここまで忠実に撮ってくれたという感謝しかない。人の心に残る名作だと思う。

 

〈上映スケジュール〉

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〈鑑賞料金〉

一般1300円、シニア1200円、学生・会員1100円
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