自主映画の祖にして、CMディレクター、そして日本映画に旋風を巻き起こした様々な35ミリ劇映画と、日本の映画・映像史の最先端を疾走し続けてきた映像作家・大林宣彦。あまりに斬新で華麗な作品の数々は、まさに<映像の魔術師>。77年の商業映画第1作『HOUSE/ハウス』は、めくるめく色彩の映像表現で映画業界に驚きをもって迎えられ、80年代の<尾道三部作>『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』で若者たちの圧倒的な指示を集めた。その後も秀作を連作し、90年代には実験精神溢れる<新・尾道三部作>を製作。そして近年は戦争を体験した人間として「戦争はイヤだ」の強烈な思いから生まれた『この空の花―長岡花火物語』(2011年)、 『野のなななのか』(2014年)を発表。<戦争三部作>の末尾を飾る『花筐/HANAGATAMI』がこのたび完成。大阪では1月27日からの公開が決まった。2018年の大林宣彦生誕80年、そして『花筐/HANAGATAMI』公開を記念し、日本最大規模の<大林宣彦映画祭>を開催。常に新しい大林映画、絢爛豪華な夢の映画ワンダーランド再発見!
喰べた人 ※『Complexe〜』+『ÉMOTION〜』との併映
1963年/16mm→デジタル/23分/自主製作
監督:大林宣彦、藤野一友/撮影:大林宣彦/音楽:バッハ
出演:松下砂雅子、岸田森、秦和之、草野大悟、石崎仁一、肝付隆也
◆二科会の画家・藤野一友と共作。それまで8ミリを回していた大林監督初の16ミリ短編自主映画。あるレストランで客の旺盛な食欲を見ているうちに、貧血で倒れたウェイトレスの幻想。コックは手術台でウェイトレスのお腹を解剖し…。あまりにシュールで実験的なファンタジー。
Complexe=微熱の玻璃あるいは悲しい饒舌ワルツに乗って葬列の散歩道
1964年/16mm→デジタル/14分/自主製作
監督・撮影:大林宣彦/音楽:バッハ
出演:岡美行、石崎仁一、立川多美子、羽生杏子
◆第一回フィルム・アンデパンダン(1964年に飯村隆彦、石崎浩一郎、高林陽一、ドナルド・リチー、足立正生らと結成した実験映画集団)のために製作。映画ファンによる映画へのラブレターというべきリリシズム溢れる一篇。個人映画のスタイルを形づくるとともに、大林映画の原点。
ÉMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ
1966年/16mm→デジタル/38分/自主製作
監督:大林宣彦/製作:大林恭子/脚本:羽生杏子/撮影・編集:大林宣彦/音楽:宮崎尚志、出原みやこ
出演:石崎仁一、宗司東美、田端エミ、赤坂サリ、喜多村寿信、高橋一郎、町田圭子、岡美行、平田穂生、石崎浩一郎、佐藤重臣
◆ロジェ・バディムの『血とバラ』に捧げたドラキュラ映画の一方、三味線を担いだカウボーイが現れたり、ごった煮のような千変万化の映像で映画の楽しさが全編に満ち溢れた元祖大林印。大林実験映画の代表作にして、以後の映画青年たちに大きな影響を与えた快作。『花筐』とつながっている!
CONFESSION=遥かなるあこがれギロチン恋の旅
1968年/16mm→デジタル/70分/自主製作
監督:大林宣彦/劇作:大林恭子/撮影:青柳正司、大林宣彦/音楽:宮崎尚志
出演:山崎章介、荻原賢一、岡本ちか子、姿みゆき
◆新宿蠍座での大林宣彦回顧展のために製作。故郷・尾道を舞台に、記憶の中にカメラを持ち込んで、叙情的な思いを個人映画風に仕上げる。本作で「Complexe」以来の三部作は完結し、個人映画の製作にひとつの区切りをつけることになり、以後、CFの場で活路を拓いていく。
HOUSE/ハウス
1977年/東宝/35mm/88分
監督:大林宣彦/脚本:桂千穂/原案:大林千茱萸/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫/音楽:小林亜星、ミッキー吉野
出演:池上季実子、大場久美子、松原愛、神保美喜、佐藤美恵子、宮古昌代、田中エリ子、南田洋子
◆60年代末から数々のCFを手がけてきたCF界の鬼才!大林宣彦の初めて劇場映画。7人の美少女たちが、夏休みに訪れた屋敷は、若い女性を食べて若さを保つ化物が巣食う家だった! アニメや映像処理を多用しためくるめく映画万華鏡。日本映画に風穴を開けた衝撃のメルヘン・ホラー。
瞳の中の訪問者
1977年/東宝/35mm/100分
監督:大林宣彦/脚本:ジェームス三木/原作:手塚治虫/撮影:阪本善尚/美術:佐谷晃能/音楽:宮崎尚志
出演:片平なぎさ、山本伸吾、志穂美悦子、峰岸徹、和田浩治、ハニー・レーヌ 、山本麟一、宍戸錠
◆手塚治虫原作の人気漫画「ブラック・ジャック」シリーズから「春一番」を映画化。突然失明した美少女が角膜移植手術で視力をとり戻すようになるが、他人には見えない男の姿を見るようになって…。当時人気絶頂の片平なぎさのヒロイン、宍戸錠のブラック・ジャックも話題になった。
ふりむけば愛
1978年/東宝/35mm/92分
監督:大林宣彦/脚本:ジェームス三木/撮影:萩原憲治/美術:佐谷晃能/音楽:宮崎尚志
出演:山口百恵、三浦友和、森次晃嗣、玉川伊佐男、奈良岡朋子、高橋昌也、南田洋子、岡田英次
◆一世を風靡した山口百恵と三浦友和ゴールデン・コンビを、大林が初のオリジナル脚本、海外ロケに挑戦。透んだカリフォルニアの青空をバックに、傷つきながらも見失った愛を探し求める若い二人の青春讃歌を、爽快なテンポで描く大ヒット作。メインテーマ作詞作曲は小椋佳。
金田一耕助の冒険
1979年/東映→角川映画/デジタル/113分
監督:大林宣彦/脚本:斎藤耕一、中野顕彰/原作:横溝正史/撮影:木村大作/美術:薩谷和夫/音楽:小林克己
出演:古谷一行、田中邦衛、仲谷昇、山本麟一、東千代之介、吉田日出子、熊谷美由紀、三船敏郎
◆大林宣彦が金田一耕助を撮ればこうなる! 爆笑コメディで送る大ヒット金田一シリーズの番外編。原作者の横溝正史、三船敏郎や作家の高木彬光もセルフパロディを含む本人役で出演。当時流行していたコマーシャルや歌謡曲などが盛り込まれるなど、まさにパロディ映画の極北!
ねらわれた学園
1981年/東宝→角川映画/35mm/90分
監督:大林宣彦/脚本:葉村彰子/原作:眉村卓/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫/音楽:松任谷正隆
出演:薬師丸ひろ子、高柳良一、長谷川真砂美、手塚真、峰岸徹、三浦浩一、ハナ肇、千石規子
◆平和な学園に次々起こる不思議な事件。超能力を持つ謎の少女とは、そして彼女の狙いは何か…。SF小説の旗手・眉村卓原作を薬師丸ひろ子主演に描く学園青春ファンタジー。セーラー服姿の薬師丸がブレイク。角川映画が一時代を築いた「アイドル映画」の開幕を告げる大ヒット作。
転校生
1982年/松竹→東宝/35mm/112分
監督:大林宣彦/脚本:剣持亘/原作:山中恒/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫
/出演:尾美としのり、小林聡美、佐藤允、樹木希林、宍戸錠、入江若葉、柿崎澄子、志穂美悦子
♦東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
◆少年少女の身体と心が入れ替わる『君の名は。』の元祖は『転校生』だった! 大林映画に欠かせない尾美としのり初主演作にして、瑞々しい映像に溢れたファンタジー映画の傑作。大林監督が故郷・尾道でオールロケした「尾道三部作」の記念すべき第一作にして代表作となった一本。
可愛い悪魔 <TV作品>
1982年/日本テレビ・円谷プロダクション/16mm/93分◎特別上映
監督:大林宣彦/脚本:那須真知子/撮影:長野重一/美術:山口修/音楽:木森敏之
出演:秋吉久美子、渡辺裕之、ティナ・ジャクソン、赤座美代子、佐藤允、岸田森、みなみらんぼう、峰岸徹
◆幸福の絶頂にある花婿が見たものは、血に染まったドレスを着た花嫁だった…。大林初のテレビムービーであり、長い歴史を誇る「火曜サスペンス劇場」の中でも屈指の傑作ホラー大作。テレビ作品とは思えないショッキングでケレン味溢れる演出などが見どころ。今回特別上映!
時をかける少女
1983年/東映→角川映画/DCP/104分
監督:大林宣彦/脚本:剣持亘/原作:筒井康隆/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫/音楽:松任谷正隆
出演:原田知世、高柳良一、尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣、入江若葉、上原謙、入江たか子
◆その後も何度も映画化されることになった筒井康隆原作最初の映画化。大林宣彦が過去や未来へタイムスリップする少女を描いた、甘く切ない青春映画の傑作。オープニングの鮮やかさ、数々の映像トリックも冴える「尾道三部作」第二作。初主演の原田知世が好演し、大ブレイク。
麗猫伝説 劇場版 <TV作品>
1983年/日本テレビ・円谷プロダクション/16mm/93分◎特別上映
監督・作曲:大林宣彦/脚本:桂千穂/撮影:阪本善尚/美術:山口修/音楽:三枝成晃
出演:入江たか子、入江若葉、柄本明、風吹ジュン、大泉滉、峰岸徹、平田昭彦、坊屋三郎
◆尾道を舞台に、映画とそれに関わる人々の姿を怪猫伝説を交えて描く。30年前、化け猫を演じて突然引退した大物女優は、なぜか今でも若々しかった…。“化け猫女優”入江たか子と娘の入江若葉を迎えて尾道で作った、化け猫映画へのオマージュ的作品。テレビ用映画の劇場版。
恋人よ われに帰れ LOVER COMEBACK TO ME<TV作品>
1983年/フジテレビ・テレパック/デジタル/95分◎特別上映
監督:大林宣彦/脚本:早坂暁/撮影:江本隆/音楽:前田憲男
出演:沢田研二、大竹しのぶ、泉谷しげる、風吹ジュン、財津一郎、小川真由美、トロイ・ドナヒュー
◆早坂曉脚本、沢田研二主演で描くTVドラマ。終戦直後の広島。日系米兵のケン(沢田)は原爆症のケイ子(大竹)と出会い愛し合うが…。戦争をリアルではなく描こうとするその後の戦争三部作の原点。美しく描くことで、逆に惨劇の恐ろしさを浮かび上がらせている。沢田の歌もご愛嬌。
*本作はTV作品のため、途中CM該当部分に黒味が入るのと、素材の入替えがありますことを予めご了承ください。
廃市
1983年/ATG→PSC/35mm→デジタル※変更となりました/106分
監督:大林宣彦/脚本:内藤誠、桂千穂/原作:福永武彦/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫
出演:小林聡美、山下規介、根岸季衣、峰岸徹、入江若葉、尾美としのり、林成年、入江たか子
◆古びた運河の町のある旧家を舞台に、そこを訪れた青年の一夏の出来事を描く。親戚の紹介で滞在することになった旧家には美しい姉妹が住んでいた…。福永武彦の原作を、大林宣彦監督が柳川ロケで映画化。取り返すことのできない、滅びゆくものへの痛切なる思いを描く傑作。
さびしんぼう
1985年/東宝/35mm/112分
監督:大林宣彦/脚本:剣持亘、内藤忠司、大林宣彦/原作:山中恒/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫/音楽:宮崎尚志
出演:尾美としのり、富田靖子、藤田弓子、小林稔侍、岸部一徳、秋川リサ、佐藤允、浦辺粂子
◆『転校生』『時をかける少女』に続く“尾道三部作"の第3作。故郷・尾道を舞台に、思春期のときめきをセンチメンタルに描く大林映画の真骨頂。富田靖子と尾美としのりの名演、ショパンの「別れの曲」の調べに乗せて描くロマンチシズム溢れる永遠の傑作。映画ファンから圧倒的な支持!
姉妹坂
1985年/東宝/35mm/100分
監督:大林宣彦/脚本:関本郁夫、桂木薫/原作:大山和栄/撮影:宝田武久/美術:薩谷和夫 /音楽:宮崎尚志
出演:紺野美沙子、浅野温子、沢口靖子、富田靖子、尾美としのり、宮川一朗太、佐藤允、宇野重吉
◆京都を舞台に、血のつながらない四人姉妹が織りなす愛と青春を描く現代版「細雪」。大林監督は美少女が大好き! 紺野美沙子、浅野温子、沢口靖子、富田靖子の4人のそれぞれのドラマをリズミカルに演出。哲学の道や京都の名所を背景に、ノスタルジックに切なく描いた秀作。
野ゆき山ゆき海べゆき
1986年/ATG→東宝/35mm/135分<カラー版で上映>
監督・音楽:大林宣彦/脚本:山田信夫/原作:佐藤春夫/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫
出演:鷲尾いさ子、林泰文、片桐順一郎、正力愛子、佐藤浩市、竹内力、尾美としのり、三浦友和
◆佐藤春夫原作の「わんぱく時代」を、尾道と鞆の浦に舞台を移して映画化した尾道外伝。戦争の影が押し寄せている頃の瀬戸内の城下町を舞台に、時代を越えた子供たちの戦争ごっこを描く。ATGで撮った実験的でノスタルジックな反戦映画。鷲尾いさ子が演じるお昌ちゃんに涙。
日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群
1988年/フィルムリンク・インターナショナル/35mm/108分
監督:大林宣彦/脚本:剣持亘、小倉洋二、薩谷和夫、大林宣彦/原作:やまさき十三、さだやす圭/撮影:長野重一/美術:薩谷和夫/音楽:KAN
出演:竹内力、三浦友和、南果歩、永島敏行、正力愛子、大泉滉、宮城千賀子、水島道太郎
◆やまざき十三とさだやす圭原作の漫画「おかしな2人」を再び尾道と鞆の浦を舞台に映画化。男たちの友情とヒロインへの恋心、そしてヒロインを巡る闘いを描いた作品。永遠の女性像を求めて彷徨う男たちと映画への愛というアイドル路線とは一線を画した大林映画の本道。
異人たちとの夏
1988年/松竹/35mm/110分
監督:大林宣彦/脚色:市川森一/原作:山田太一/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫/音楽:篠崎正嗣
出演:風間杜夫、秋吉久美子、片岡鶴太郎、名取裕子、永島敏行、入江若葉、林泰文、奥村公延
◆中年のシナリオ・ライターが、幼い頃死んだはずの両親と再会する不思議な体験を描く。第1回山本周五郎賞を受賞した山田太一原作小説の映画化。異人である父母とのひと時のふれあいと、奇妙な出会いをした恋人との不思議な愛の幻想を描いたゴーストファンタジー。傑作!
北京的西瓜 ぺきんのすいか
1989年/松竹→PSC/35mm/135分
監督:大林宣彦/脚本:石松愛弘/原作:林小利、久我山通/撮影:長野重一/美術:薩谷和夫/音楽:根田哲雄
出演:ベンガル、もたいまさこ、峰岸徹、斉藤晴彦、笹野高史、柄本明、天宮良、浅香光代
◆慣れない日本で苦しむ中国人留学生たちを支援した千葉県船橋の八百屋「八百春」の実話をもとに描いた人間ドラマ。庶民の日中間の交流をテーマにしながらも、中国ロケの直前、天安門事件が発生し、中国での撮影を断念。渡航シーンを空白で描く怒りの映像に、大林の心情を吐露。
ふたり
1991年/松竹→PSC/35mm/150分
監督:大林宣彦/脚本:桂千穂/原作:赤川次郎/撮影:長野重一/美術:薩谷和夫/音楽:久石譲
出演:石田ひかり、中嶋朋子、富司純子、岸部一徳、尾美としのり、中江有里、増田恵子
◆尾道を舞台に、亡き姉の幽霊に見守られながら成長していく多感な少女の姿を瑞々しく描いた青春ファンタジー。赤川次郎原作の同名小説の映画化で、その年の映画賞新人賞を総なめにした石田ひかりの映画デビュー作。大林監督の新たなる「新・尾道三部作」の第1弾となった。
青春デンデケデケデケ
1992年/東映→PSC/35mm/135分
監督:大林宣彦/脚本:石森史郎/原作:芦原すなお/撮影:萩原憲治、岩松茂/美術:薩谷和夫/音楽:久石譲
出演:林泰文、柴山智加、岸部一徳、ベンガル、大森嘉文、浅野忠信、永堀剛敏、佐藤真一郎、根岸季衣
◆1960年代半ばの四国の田舎町を舞台に、ベンチャーズに憧れ、ロックバンドに情熱を燃やす高校生たちを軽快に描く青春ドラマ。直木賞を受賞した芦原すなおの同名小説の映画化で、ベンチャーズの「パイプライン」をはじめ、60年代のロック・ミュージックが全編に散りばめられた快作。
はるか、ノスタルジィ
1992年/東映→PSC/35mm/165分
監督・脚本:大林宣彦/原作:山中恒/撮影:阪本善尚/美術:薩谷和夫/音楽:久石譲
出演:勝野洋、石田ひかり、松田洋治、尾美としのり、川谷拓三、ベンガル、根岸季衣、増田恵子
◆小樽を舞台に、小説家である中年男が不思議な少女と出会い、痛ましい青春の記憶を再生させていく幻惑のノスタルジック・ロマン。『転校生』『さびしんぼう』に続き、山中恒が映画のために原作を書き下ろした第三作で、現実と過去の記憶が交差する大林ファンタジーの集大成。
水の旅人 侍KIDS
1993年/東宝/35mm/106分
監督:大林宣彦/脚本:末谷真澄/原作:末谷真澄/撮影:阪本善尚/美術:竹中和雄/音楽:久石譲
出演:山崎努、吉田亮、原田知世、伊藤歩、風吹ジュン、岸部一徳、伊藤智乃、尾上丑之助
◆時空を越えてやって来た一寸法師と少年との交流を、自然保護などのテーマを織り込みながら描くSFX冒険ファンタジー。大林監督は新技術が大好き。おもちゃで遊ぶ少年のように、当時最新のハイビジョン技術を駆使して合成処理を駆使。身長17cmの侍“少名彦”を山崎努が怪演。
女ざかり
1994年/松竹/35mm/118分
監督:大林宣彦/脚本:野上龍雄、渡辺善則、大林宣彦/原作:丸谷才一/撮影:坂本典隆/美術:竹中和雄/音楽:久石譲
出演:吉永小百合、津川雅彦、風間杜夫、藤谷美紀、月丘夢路、三國連太郎、岸部一徳、尾美としのり、中村玉緒、宍戸錠、松坂慶子、山崎努
◆少年少女たちの青春を描き続けた大林宣彦が、吉永小百合を主演に迎え中年女性の生き方を描き新境地を開いた大ヒット作。初めて書いた社説がもとで忍び寄る権力に対する女性論説委員の抗戦と、彼女を巡る人間模様を描く。丸谷才一のベストセラー小説を豪華キャストで映画化。
あした
1995年/東宝→PSC/35mm/141分
監督:大林宣彦/脚本:桂千穂/原作:赤川次郎/撮影:坂本典隆/美術:竹中和雄/音楽:學草太郎、岩代太郎
出演:高橋かおり、林泰文、宝生舞、原田知世、津島恵子、植木等、柏原収史、ベンガル、岸部一徳、田口トモロ、多岐川裕美、尾美としのり
◆『ふたり』に続いて手掛けた「新・尾道3部作」第2弾。冬の尾道を舞台に、去り行くものに対する人々の永遠の思いを、ファンタジーの形を借りながら、切なくもロマンティックに描く。新三部作は、少年少女から家族がテーマへ。失われる街を描くことから人々の心を描こうと――。
SADA~戯作・阿部定の生涯
1998年/松竹/35mm/132分
監督:大林宣彦/脚本:西澤裕子/原作:西澤裕子/撮影:坂本典隆/美術:竹内公一/音楽:學草太郎
出演:黒木瞳、椎名桔平、嶋田久作、ベンガル、片岡鶴太郎、石橋蓮司、赤座美代子、根岸季衣、小林桂樹
◆大林が「阿部定」を撮ったらこうなる! 何度も映画化された“阿部定事件”に挑戦。神田の畳屋の娘・定の14歳の少女時代から運命の男・龍蔵との出会い、凶状までの半生を描く。大林らしい画面処理とともに、定の壊れていく内面を見つめ、ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞受賞。
風の歌が聴きたい
1998年/ザナドゥー→PSC/35mm/161分
監督:大林宣彦/脚本:中岡京平、内藤忠司、大林宣彦/原案:高島良宏、小田大河/撮影:坂本典隆/美術:竹内公一/音楽:學草太郎
出演:天宮良、中江有里、勝野洋、入江若葉、及森玲子、石橋蓮司、左時枝、河原さぶ
◆聴覚障害でありながら過酷な鉄人レース・トライアスロンに挑む実在の夫婦をモデルに描いた感動作。夫婦の会話は手話であることから、大林監督は全編に字幕を入れ、いち早いバリアフリー上映にも挑戦。前向きに人生を切り開くふたりに寄り添い、優しさの意味を問う渾身作。
あの、夏の日~とんでろ じいちゃん~
1999年/東映→PSC/35mm/123分
監督:大林宣彦/脚本:石森史郎、大林宣彦/原作:山中恒/撮影:坂本典隆/美術:竹内公一/音楽:學草太郎
出演:小林桂樹、菅井きん、厚木拓郎、勝野雅奈恵、嶋田久作、松田美由紀、宮崎あおい、石田ひかり
◆大林宣彦監督が、故郷・尾道の市制百周年を記念し、『ふたり』『あした』に続く「新・尾道三部作」の完結編として描いたファンタジー映画。「20世紀を生きたおじいちゃんと、21世紀を生きるこどもたちに、この映画を捧げる」。大林映画の常連俳優たちが大挙ゲスト出演。
淀川長治物語・神戸篇 サイナラ <TV作品>
2000年/PSC/35mm/106分
監督:大林宣彦/脚本:市川森一、大林宣彦/撮影:稲垣湧三/美術:竹内公一/音楽:學草太郎、山下康介
出演:厚木拓郎、勝野洋輔、秋吉久美子、高橋かおり、柄本明、白石加代子、ミッキー・カーチス
◆1998年11月に惜しまれながらこの世を去った映画評論家・淀川長治の自伝を、大林宣彦監督が映像化。生涯を映画に捧げた男の波乱に満ちた少年時代をドラマチックに描く。淀川さんの一周忌にテレビ朝日系にて放映された作品を、再構成して追加映像を施した劇場版。
なごり雪
2002年/大映→角川映画/35mm/111分
監督:大林宣彦/脚本:南柱根、大林宣彦/原案:伊勢正三/撮影:加藤雄大/美術:竹内公一/音楽:學草太郎
出演:三浦友和、ベンガル、須藤温子、宝生舞、細山田隆人、反田孝幸、長澤まさみ、津島恵子
◆尾道と決別した大林が、古い美しさが残る大分県臼杵市を舞台にオールロケし撮影。伊勢正三作詞作曲によるフォーク・ソング「なごり雪」をモチーフに、50歳を迎えた中年男たちの青春の悔恨と惜別を描いた感動作。画面処理を極力押さえ、映像と言葉の美しさを際立たせている。
理由
2004年/アスミック・エース/35mm/160分
監督:大林宣彦/脚色:大林宣彦、石森史郎/原作:宮部みゆき/撮影:加藤雄大/美術:竹内公一/音楽:山下康介
出演:柄本明、渡辺えり子、真鍋卓也、菅井きん、寺島咲、山田辰夫、風吹ジュン、厚木拓郎、赤座美代子、永六輔
◆大林がサスペンスに挑戦! 宮部みゆき直木賞受賞のベストセラー小説を完全映画化。超高層マンションで起きた殺人事件の真実を、107名にも及ぶ登場人物の証言を交えて解き明かす。実験的な手法を駆使しながら、現代の心の問題を説き起こす大林映画の真骨頂。隠れた名作である。
22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語
2006年/角川映画/35mm/119分
監督:大林宣彦/脚本:南柱根/原案:伊勢正三 /撮影:加藤雄大/美術:竹内公一/音楽:山下康介、學草太郎、伊勢正三
出演:筧利夫、清水美砂、鈴木聖奈、窪塚俊介、寺尾由布樹、細山田隆人、三浦友和、長門裕之
◆「なごり雪」に続き伊勢正三の名曲「22才の別れ」をモチーフに、母娘二代にわたる恋物語を描く、大林宣彦監督の“大分三部作”の第2弾。Lycorisとは彼岸花のことで、花が咲く頃には葉はなく、葉は花を見る事が出来ないことがタイトルに込められているとか。ラストの臼杵の美しさたるや!
転校生 さよならあなた
2007年/角川映画/35mm/120分
監督:大林宣彦/脚本:剣持亘、内藤忠司、石森史郎、南柱根、大林宣彦/原作:山中恒/撮影:加藤雄大/美術:竹内公一/音楽:山下康介
出演:蓮佛美沙子、森田直幸、清水美砂、厚木拓郎、寺島咲、石田ひかり、古手川祐子、長門裕之
◆心と身体が入れ替わってしまった男女が悪戦苦闘する姿を描いた『転校生』を、尾道から信州に舞台を移し、大林がセルフリメイクした青春ファンタジー。“蓮佛美沙子と出会わなければ、今回の《転校生》は誕生し得なかった”と大林が語るほどの蓮佛の心と身体替わりは名演!
その日のまえに
2008年/角川映画/35mm/139分
監督:大林宣彦/脚本:市川森一/原作:重松清/撮影:谷川創平/美術:竹内公一/音楽:山下康介、學草太郎
出演:南原清隆、永作博美、筧利夫、今井雅之、勝野雅奈恵、原田夏希、柴田理恵、風間杜夫
◆2005年に出版、「涙が止まらず、通勤電車では読めない」と大絶賛された重松清の連作短篇小説を映画化。ある日突然倒れ余命宣告された妻。死に直面した夫婦や家族、周囲の人々が“その日”に向けて過ごす姿を穏やかに見つめる…。死もテーマの大林ならではの人間を描く感動作。
この空の花―長岡花火物語
2011年/PSC、TMエンタテインメント/DCP/160分
監督:大林宣彦/脚本:長谷川孝治、大林宣彦/撮影:加藤雄大、三本木久城、星貴/美術:竹内公一/音楽:久石譲
出演:松雪泰子、高嶋政宏、猪股南、原田夏希、森田直幸、筧利夫、池内万作、富司純子
◆「戦禍を忘れぬ」追悼の花火大会、長岡花火をモチーフに、同じように火花が降り注いだ1945年の長岡大空襲と現代をつなぐ反戦ファンタジー。3.11の被災者をいち早く受け入れた新潟・長岡で、戦争を憎む大林が「世界中の爆弾を全て、花火に替えたい!」思いで描く初全編デジタル作品。
野のなななのか
2014年/PSC、TMエンタテインメント/DCP/171分
監督:大林宣彦/脚色:内藤忠司、大林宣彦/原作:長谷川孝治/撮影:三本木久城/美術:竹内公一/音楽:山下康介
出演:品川徹、常盤貴子、村田雄浩、松重豊、寺島咲、山崎紘菜、窪塚俊介、安達祐実
◆新潟・長岡で反戦を訴えた大林が、今度は北海道芦別を舞台に1945年敗戦間際の旧ソ連による樺太侵攻を題材に、より反戦の思い、人々の犠牲の上で現代日本が成立していることを痛切の思いで描いた渾身作。“なななのか”とは四十九日のこと。悲劇を繰り返してはならない!