空に聞く

TOKYO TELEPATH 2020
2019年/日本/73分
◎監督・撮影・編集:小森はるか ◎撮影・編集・録音・整音:福原悠介

かつての町の上に、新しい町が作られていく。
震災後の陸前高田でいくつもの声を届けた、あるラジオ・パーソナリティの物語。

東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。失われていく何かと、これから出会う何か。時間が流れ、阿部さんは言う——忘れたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった。監督は、震災後のボランティアをきっかけに東北に移り住み、刻一刻と変化する町の風景と出会った人びとの営みを記録してきた映像作家の小森はるか。傑作『息の跡』と並行して撮影が行われた本作は、映像表現の新たな可能性を切り拓くことを目的としたプロジェクト「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」として完成。あいちトリエンナーレ、山形国際ドキュメンタリー映画祭、恵比寿映像祭と立て続けに上映され、先鋭的なプログラムの中でもひときわ大きな反響を呼んだ。

 

 

 

息の跡

KUICHISAN
2016年/日本/93分
◎監督・撮影・編集:小森はるか◎編集:秦岳志◎整音:川上拓也◎特別協力:瀬尾夏美
 

陸前高田から届いた忘れられない風景の記録
小森はるか監督デビュー作

いまは、もういない誰かへ、まだいない誰かのために
 岩手県陸前高田市。荒涼とした大地に、ぽつんとたたずむ一軒の種苗店「佐藤たね屋」。津波で自宅兼店舗を流された佐藤貞一さんは、その跡地に自力でプレハブを建て、営業を再開した。なにやらあやしげな手描きの看板に、瓦礫でつくった苗木のカート、山の落ち葉や鶏糞をまぜた苗床の土。水は、手掘りした井戸からポンプで汲みあげる。
 いっぽうで佐藤さんは、みずからの体験を独習した英語で綴り、自費出版していた。タイトルは「The Seed of Hope in the Heart」。その一節を朗々と読みあげる佐藤さんの声は、まるで壮大なファンタジー映画の語り部のように響く。さらに中国語やスペイン語での執筆にも挑戦する姿は、ロビンソン・クルーソーのようにも、ドン・キホーテのようにもみえる。彼は、なぜ不自由な外国語で書き続けるのか? そこには何が書かれているのだろうか?

ふわりとした、けれど、確かなまなざし
まるで、生まれたばかりの映画のように
 監督は、映像作家の小森はるか(『the place named』、『波のした、土のうえ』※瀬尾夏美との共同制作)。震災のあと、画家で作家の瀬尾夏美とともに東京をはなれ、陸前高田でくらしはじめた彼女は、刻一刻とかわる町の風景と、そこで出会った人びとの営みを記録してきた。失ったものと残されたもの。かつてあったものと、これから消えてゆくもの。記憶と記録のあわい。そのかすかな痕跡とぬくもりを彼女はうつしだしていく。あの大きな出来事のあとで、映画に何ができたのか。そのひとつの答えがここにある。

 


 


特別上映『草とり草紙』

TECHNOLOGY
1985年/日本/78分
◎監督:福田克彦◎制作:波多野ゆき枝

「国際空港をつくるから出ていけ」といわれた三里塚の百姓たち。戦前、戦後を生き抜いた一人の女性が、畑の草を取り、種をまきながら語る。話はあちこちに飛び、いっこうにまとまらないが、そこに確実に人生がある。『空に聞く』『息の跡』とつながる”聞く”ことを見つめ直す特別上映!

 

 


トークショー開催!!



12/13(日)17:50『空に聞く』上映後 ゲスト:小森はるか監督

 

 

『空に聞く』公式HP→http://soranikiku.com/

『息の跡』公式HP→http://ikinoato.com/

〈上映スケジュール〉

12/12土 18:20空に聞く/20:00息の跡
12/13日 16:10草とり草紙/17:50空に聞く+トーク/20:00息の跡
12/14月 18:30空に聞く/20:00息の跡
12/15火 18:30空に聞く/20:00息の跡
12/16水 18:30息の跡/20:20空に聞く
12/17木 18:30息の跡/20:20空に聞く
12/18金 16:30息の跡/18:30草とり草紙/20:10空に聞く

『空に聞く』スケジュール
シネ・ヌーヴォ
12/19土〜12/25金 11:00

シネ・ヌーヴォX
12/26土〜12/30水 11:00
1/2土〜1/8金 13:30

 

 

〈鑑賞料金〉

『空に聞く』一般1800円、学生・シニア1100円、会員1000円
『息の跡』『草とり草紙』一般1500円、学生・シニア1100円、会員1000円