斧は忘れても、木は覚えている(The Tree Remembers/還有一些樹)

2019年/制作国:台湾(撮影地:マレーシア)/上映時間89分
◎監督:ラウ・ケクフアット(Lau Kek Huat 廖克発)
◎言語:華語、英語、マレー語、オラン・アスリ語
◎日本語字幕付き
◎受賞歴:台北金馬映画祭(2019)金馬奨ドキュメンタリー賞ノミネート、台北映画祭(2019)ドキュメンタリー賞・音楽賞・音響デザイン賞ノミネート

 

この歴史を抹消してはいけない、、、「多民族国家マレーシア」のタブーに切り込んだ意欲作

 

 

本作は、アーカイブに保存された写真、映像資料を基に、公表発表で死者196名、負傷者439人が犠牲になったマレー人・華人間の民族暴動「513事件」(1969年)と、マレーシア半島部に居住する全人口の1%にも満たない少数先住民族オラン・アスリの歴史を辿りながら「開発とイスラーム化(同化)政策」の現状を描いた作品である。
証言を基に、心の奥に深く封印された個人の記憶を理性的・客観的な筆致で掘り起こし、「真の国民統合とは?」を問う監督の制作意図は、「加害者は忘れても、被害者は苦しみの歴史として記憶する」を意味するアフリカの諺「The axe forgets, but the tree remembers」から採られたタイトルに示されている。
残念ながら、513事件は「敏感な問題」として50年を経た今でもタブー視されており、監督が求める「513事件真実和解委員会」創設、及び本作のマレーシアにおける劇場公開の目途はたっていない。

 

 

〈上映スケジュール〉

◆2020年12月19日(土)12:40〜
上映前に、信田教授よりオラン・アスリの概要解説を、

また上映後はラウ監督を交えてのトークショー予定。

◆トークゲスト

ラウ・ケクフアットさん
1979年マレーシア生まれのマレーシア華人、現在は台湾で活動中。台湾文化部が「ドキュメンタリーと劇映画を制作できる数少ない監督の一人」と評価している監督である。短編デビュー作『鼠(Rat)』(2008:台湾金穂奨短編最優秀監督賞)、フィリピン人メイドの1日を描いた『ニアのドア』(2015年:釜山国際映画祭短編最優秀作品賞)等、現在までに合計短編全6作を制作した。長編ドキュメンタリー映画は、『不即不離―マラヤ共産党員だった祖父の思い出-』(2016:シンガポール国際映画祭観客賞)に続き、本作が第2作になる。更に、長編劇映画デビュー作「ボルオミ(菠蘿蜜)」(2019)は、釜山国際映画祭ニュー・カレント賞にノミネートされた。

信田敏宏さん
国立民族学博物館グローバル現象研究部教授。本作のみんぱく映画会主催者。開発、イスラーム化、エスニシティなどをテーマに、マレーシア先住民オラン・アスリを対象とした研究を行っている。著書に『家族の人類学――マレーシア先住民の親族研究から助け合いの人類史へ』(2019年臨川書店)、『ドリアン王国探訪記――マレーシア先住民の生きる世界』(2013年臨川書店)などがある。

盛田茂さん
東洋大学アジア文化研究所客員研究員。専門はシンガポールの映画研究で、2006年より映画関係者にインタビューを重ねている。この間、タン・ピンピン監督の国内上映・配給禁止ドキュメンタリー映画『シンガポールより、愛をこめて』(2013年)を2018年より12大学及びシネ・ヌーヴォで上映・解説会を実施、またみんぱく上映会で『斧は忘れても』の上映・解説会を企画した。なお両作の日本語字幕は妻との共同作業。著書に『シンガポールの光と影――この国の映画監督たち』(2015年、インターブックス)がある

 

 

〈鑑賞料金〉

一般1500円、学生・シニア1100円、会員1000円