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今回のシネ・ヌーヴォの台湾映画特集では、ホウ・シャオシェン(侯考賢)やエドワード・ヤン(楊徳昌)などニューシネマの兄貴分に当たるワン・トン(王童)監督の『村の爆弾』に始まる「台湾近代史3部作」を皮切りに、侯や楊の作品とともに、チェン・ユーシュン(陳玉勲)やツァイ・ミンリャンの作品が顔を並べている。この中で、製作年が一番古いのは、1983年に作られた『少年』だろうか。チュー・ティエンウェン(朱天文)の自伝的な小説が原作、ホウ・シャオシェンが製作・脚本、監督はホウ映画の撮影監督だったチェン・クンホウ(陳坤厚)で、少年たちの描き方が素晴らしい。
この映画に限らず、ホウ・シャオシェンは、親分的な気質というか、映画作りにプロデューサー的に関わって、仲間に作らせるところがある。エドワード・ヤンの『台北ストーリー』では、彼は自宅を抵当に入れて資金を作り、主役も演じている。もっとも、この映画、台湾では不人気で、公開わずか数日で打ち切られたというから、製作費の回収は覚束なかったろう。それはともかく、今回の特集で、わたしが一番見直したいと思うのは、ホウの『ナイルの娘』※だ。同じ1987年に作られた『恋恋風塵』の圧倒的な素晴らしさに較べ、精彩を欠いて見えたのだが、本当にそうなのか、確かめたいのだ。
日本では、1980年代の台湾映画を観て、傑作だのなんだのと言うだけだが、台湾で、国民党による戒厳令が解除されたのは、1987年なのだ。それ以前から民主化の動きはあり、今年公開されたゼロ・チョウ(周美麗)監督の『流麻溝十五号』で描かれた「白色テロ」の時代は終わりつつあったのだろう。また、だからこそ、新しい映画が生まれたのだが、そこに到る台湾現代史にも眼を向ける必要があるのではないか。その格好のテキストとして、日本統治下に生まれ、映画の舞台と同じ島に10年収容され、生き延びた実在の人物を主人公に描いた漫画『台湾の少年』(岩波書店)を勧めたい。
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