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寺山修司の名前を聞いて、真っ先に思い浮かぶのは、「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや」という短歌だ。どうです? 口に出して詠み上げてごらんなさい。格好いいでしょ。ただ、この上の句は、他人の句を拝借してきたものなんだ。それで非難されたりもしたが、下の句が、見事に全体を生かして大きな佇まいを見せていることは確かだ。寺山は、このようなコラージュの天才なのだ。当時の若者たちに多大な影響を与えた『書を捨てよ、町に出よう』だって、アンドレ・ジッドから拝借したものだし。彼は、短歌のみならず、芝居も作詞や映画にもマルチな才能を発揮したが、ベースには、模倣による反復とずらしというコラージュ的手法がある。
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上野 昻志(批評家・映画評論家) |
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◀vol.4 |
vol.6▶ |